海外事業本部と人事・労務部で連携した人財要件定義と実践的な海外派遣研修によるグローバル人財育成
株式会社ニップン 導入事例

左から新井様、熊澤、菅沼様、山口様

株式会社ニップン

従業員数 : 1,173 人

事業内容 : 製粉事業 / 食品事業 / その他事業(ヘルスケア事業 / ペットケア事業 / バイオ関連事業 / エンジニアリング事業など)

株式会社ニップンでは、全部署を対象に役職者から推薦された11名にグローバル人財育成研修を実施しました。その方針に至った背景から、実施内容、これまででみえてきた成果、今後の人財育成の展望までをご紹介します。

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課題・背景

  • 今後の社会変化に対応し、生き残りを図るためにグローバル化とグローバル人財育成が必要になった

実行施策

  • グローバル人財の要件定義の作成
  • 要件にかなう人財育成研修体系の1つである海外派遣研修「グローバルチャレンジプログラム」の実施
  • 「グローバルチャレンジプログラム」の事前研修と事後研修として集合研修を実施。海外赴任予定者向けのeラーニングと集合研修を実施

成果

  • 積極的なコミュニケーションを取るなどの行動変容が見られた
  • グローバル人財育成体系の構築や、グローバル人財プールづくりに向けた足がかりとなった
  • 事後に行ったサーベイ結果から、受講者全員が成長を実感している様子が伺われ、海外事業への関心が高まった/会社へのエンゲージメントが高まった
海外事業本部
国際部長
新井 嗣人 
人事・労務部
人財戦略室長
山口 真道 
海外事業本部
国際部 主幹
菅沼 あづさ 
文内、敬称略

――― 御社の事業内容を教えてください

 

菅沼  弊社は製粉事業からスタートし、その後、食品加工事業に事業を拡大しました。食品事業においては、小麦粉をベースにした製品、例えば、砂糖や油脂を加えたプレミックスやパスタなどを取り扱っています。また、冷凍食品事業にも進出しており、スーパーマーケットで販売されている調理済みのパスタや、ご飯とおかずが一体になったプレート商品などを展開しています。さらに、ヘルスケア事業では、アマニ油やセラミドといった健康関連商品も取り扱っています。

 

――― 皆様の所属している部署と、部署の役割を教えてください

 

新井  私は海外事業本部にて国際部長を務めております。

ニップンでは、中国、タイ、インドネシア、ベトナム、アメリカに事業を展開しており、海外事業本部では、現地での事業の管理や支援を行っています。

国際部では、本年7月に発表したベトナムでの新規事業の立ち上げや、2023年投資した米国ユタ製粉社に関する業務、またクロスボーダーM&Aなども担当しています。さらに、海外事業本部全体として、グローバル人財プロジェクトやグローバル経営管理を推進しています。

 

菅沼  私は海外事業本部国際部で主幹を務めています。

新井が述べた業務に関連し、私は国際部で海外に関連する情報収集や、社内からの英語や海外関連の問い合わせ、調査依頼への対応を行っています。プロジェクトごとに担当者を割り当てたり、成果物の確認を行ったりするなど、プロジェクトの統括を担当しています。

 

山口  私は人事・労務部に所属しています。今年4月に人財戦略室を立ち上げ、人事・労務部全体の副部長兼人財戦略室の室長を務めています。主に人的資本経営に向けた各種取り組みを推進する部署の責任者です。

人財戦略に関して言えば、経営戦略と人財戦略をしっかりと結びつけることが重要です。そのため今回の研修は、海外事業本部と人事・労務部の共同プロジェクトとして実施しています。

課題・背景
グローバル展開を見据えた人財育成のため初の要件定義プロジェクトに挑む

――― 今回グローバル人財育成プロジェクトを実施した背景を教えてください

 

新井  背景にはニップンの経営戦略を考える中で、海外事業を拡大しなければ競争に生き残れないと感じていたことがあります。そのため、まずはどのように事業を拡大していくかを考え、昨年、米国で弊社初の製粉事業としてユタ製粉社に投資しました。

また、アジアでも事業を拡大するため、すでに進出している中国、タイ、インドネシアに加え2024年にはベトナムへ進出しました。このような状況で、海外で業務を遂行できる人財の育成が必要だと感じ、どのようなグローバル人財が必要なのかを明確にしたいと考えました。

 

そしてグローバル人財育成プロジェクトの進め方について、外部の知見も活用してより良いものにしようと考えました。

< グローバル人財育成体系構築 >

実行施策
グローバル人財の要件定義から海外派遣研修、海外赴任予定者向け研修まで

――― 今回弊社にご依頼いただいた内容についてお聞かせください

 

新井  グローバル人財要件定義プロジェクトとグローバルチャレンジプログラム、そして海外赴任予定者向け研修です。

まず人財要件の定義を行ったうえで、各部署の上長から推薦された社員を対象にしたグローバルチャレンジプログラムを実施しました。また、海外赴任が予定されている社員を対象にした赴任前研修も一部ご協力いただき、eラーニングとともに、1日間の研修も行いました。

< アルーが提供した研修内容 >

グローバル人財像要件定義プロジェクト

――― グローバル人財像要件定義プロジェクトはどのように進められたのでしょうか? 

 

新井  グローバル人財像要件定義プロジェクトでは、プロジェクトをどう進め、誰にどうインタビューし、どういったアンケートを作って分析するのかについて、アルーから協力を得てプロジェクトを進めました。

 

社長から経営幹部、そして海外勤務経験のある社員にインタビューやアンケートを行い、当社が求める海外事業を拡大するために必要な人財要件を定義しました。

< 定義したグローバル人財要件 >

海外派遣研修 グローバルチャレンジプログラム

――― 海外派遣研修グローバルチャレンジプログラム研修をご依頼いただいた経緯を教えてください

 

新井  要件を定義する中で、若い内に早期に海外での経験を積むことが必要であるとの声が多く、実際にマレーシア現地に赴いて研修を実施するグローバルチャレンジプログラムを提供されているアルーの海外派遣研修プログラムを採用しました。

 

――― 海外派遣研修グローバルチャレンジプログラム研修の全体像について教えてください

 

新井  グローバルチャレンジプログラムは、自らが、海外にビジネス機会を創出する主体として、考え・行動することの重要性を理解することをゴールに、事前研修と事前課題を海外派遣前に実施し、そのあとにマレーシアに派遣。現地でのカリキュラムをこなし、帰国後に事後研修を受講するというものでした。

グローバルチャレンジプログラムの目的は、今後、海外に向けて視野を広げることや、英語でのコミュニケーションの難しさや面白さを現地で学んでもらうことを主としています。また、グローバル人財要件定義にあるチャレンジ精神や文化的コミュニケーション力を強化することも含まれています。

 

山口  さらにこのプログラムで期待していることは、海外で英語を使用したということにとどまらず、日常業務を超えた全社的な視点で物事を考える機会を得ることでした。これにより、何か新たな視点を得られるかどうかを確認したいと思っていました。また、人財要件という客観的な指標に照らして、研修前後で指標が上がるかどうかも効果測定しています。

< グローバルチャレンジプログラムの全体像 >

――― 海外派遣研修グローバルチャレンジプログラムの内容を教えてください

 

菅沼  参加者が1週間マレーシアに滞在して行いました。現地の商業施設の視察から始まり、仮説を立てて検証のためのフィールドワーク、マレーシア人の学生とディスカッションやフィードバックを数回繰り返し、最後にプレゼンテーションで発表するといった内容です。

< グローバルチャレンジプログラム・海外派遣研修のカリキュラム >

――― 海外派遣研修グローバルチャレンジプログラムの具体的な工夫やポイントについて教えてください

 

新井  どの国で研修を行うか、対象者をどのように選定するか、プログラム運営や課題設定に多くの工夫をしました。アルーがマレーシアでの研修に精通しているため、マレーシアの大学の受け入れ体制についても相談させていただきました。

 

――― 研修の参加者はどのように選定されましたか?

 

山口  今回は部門推薦という形をとりました。特に比較的若い世代で、海外経験の有無に関わらず、現在の仕事において成果を上げている方、一定レベルの英語力を持つ方を各部門の役職者から推薦していただきました。

 

――― 参加資格にはどのような要件設定をされたのでしょうか?

 

山口  厳密な制限は設けていませんが、管理職でない方を中心に、部門間のばらつきがないように選抜しました。男女の比率や部門ごとのバランスも考慮し、公平性を担保するよう心がけました。

 

新井  グローバルチャレンジは全社的なプロジェクトとして、全社横断的に幅広い部署から参加者を募り、11名に絞りました。各部署に戻った際にその経験を部内の方々にフィードバックすべく、プレゼンテーションを実施してもらいました。

 

海外赴任予定者向け研修

――― 海外赴任予定者向け研修について教えてください

 

菅沼  海外赴任予定者向け研修では異文化コミュニケーション研修をeラーニングと集合研修を組み合わせて実施しました。

まずeラーニングを研修前の事前課題として実施し、そのあとに集合研修を行うという構成です。

 

――― 事前課題のeラーニングについて教えてください

 

菅沼  今回の研修のテーマである「異文化コミュニケーション」の教材を受講してもらいました。 

マネジメント層向けには「外国人部下マネジメント」の教材も用意し、合計80分の内容を研修2か月前の間に受講してもらう形を取りました。

 

――― 集合研修ではどのような内容を実施されましたか?

 

菅沼  集合研修では、講師を招いて実施し、海外赴任予定者や国内の海外事業本部の若手を対象に1日8時間のセミナー形式で行いました。セミナーでは、講義とグループワークを取り入れました。

 

海外と日本の違いを理解する「グローバルマインドセット」、相手の背景を理解した言動を身につける「異文化コミュニケーション」の他、海外の禁忌に抵触することを避けるための知識やコミュニケーションのポイントなどのインプットが研修内容です。講義の他にもグループワークを取り入れコミュニケーション力に磨きをかけてもらいました。

< 海外赴任前研修の全体像 >

成果
グローバル人財の能力要件と打ち手の明確化

――― グローバル人財像要件定義で感じられる成果はどのようなものでしょうか?

 

新井  要件を定義することで、グローバルな人財になるためにどのスキルを伸ばすべきかが明確になりました。要件定義のインタビューの結果、若いうちに海外に出て現場を体験することが重要だという結論に至り、海外で研修を実施すべきであると定まりました。 

 

――― 今回のグローバルチャレンジプログラムで得られた成果について、何か感じるものはありますか?

 

新井  当初の目標は相応に達成できたと感じています。自己評価の結果、参加者全員の評価指標が向上し、それなりの成果があったのではないかと思います。

 

山口  効果についてですが、個々人が研修後に発したコメントや会話の中で、その成果を感じています。例えば、物の見方や考え方がいろいろあることを体感したのではないでしょうか。自分の仕事における物の見方が全てではないことを理解したのは、大きな成果だと思います。また、理屈ではなく、体感することで得られる効果が非常に高かったと感じています。さらに、擬似的な修羅場経験を通じて、人の成長に大きな効果があることを実感しました。

日常の中で修羅場経験を得ることは難しい時代ですが、このプログラムはそうした経験を生み出すのに有効だと感じました。

 

菅沼  マレーシア海外派遣研修は非常に大変な作業だと思いましたが、同時に楽しい経験でもあったのではないでしょうか。実際、11名の参加者が帰国後に感じた充実感が、彼らの明るい表情から伝わってきたので、それは非常に良かったと思います。

 

山口  心理的安全性や自己理解の深化があったのではないかと感じました。そういった環境の中で、日常生活にもその要素を取り入れる必要があるのだと思いました。

 

――― 海外事業本部の視点からは、成果をどのように受け止めていらっしゃいますか?

 

新井  ある受講者が、後輩から「先輩が積極的に話しかけてくれるようになった」と言われるなど、行動変容が見られるようになりました。また、海外ビジネスに対する意欲が高まり、自分を開示することで相手も心を開いてくれると学んだ点も大きな成果だと感じています。

今後の取り組み
越境経験とイノベーション人財育成の未来ビジョン

――― 今後について、海外事業本部でどのような目標を持っていますか?

 

新井  若手に対して、今回のグローバルチャレンジプログラムを通じて海外志向を高めることを目指しています。さらに、海外トレーニングプログラムを推進し、中国での語学研修や現地法人での業務体験を行うコースを他の国々にも拡大していきたいと考えています。また、海外でのリスク管理の研修なども強化していきたいと思っています。

 

菅沼  国内でもグローバルな視点を育む研修を提供できればと思っています。また、日本国内のスタッフと現地法人スタッフが共に参加する研修も企画したいと考えています。現在は関係部署や工場との交流を図る設定にしていますが、グローバルチャレンジと同様に、さらに深めていければと考えています。

 

――― 人事・労務部ではいかがでしょうか?

 

山口  今回はグローバルをテーマにしましたが、イノベーションを起こす人財を育成するために、今回のプログラムがヒントになりました。異なる環境での体験、いわゆる越境経験が有効であり、今後はもっと多くの社員に越境体験をさせて、イノベーティブな人財を育成していきたいと考えています。これが会社の戦略にもつながると考えています。

 

当社の中期経営計画として、2024年5月の決算説明から長期ビジョンをリリースしています。これまでは定量的な目標のみを示していましたが、今回は経営理念にリーチするような言葉を散りばめ、従業員や対外的にも理解していただけるようなビジョンを掲げています。その中で、従業員のウェルビーイングやイノベーションを起こす人財の育成が明確に位置付けられています。


新井  事業の視点からは、ニップンの成長分野として、海外事業、中食、冷凍食品、ヘルスケアを挙げており、海外事業本部では、特に海外事業の拡大とグローバル人財の育成を重要視しています。これに基づき、海外短期派遣の研修なども含めて、研修を強化していく計画です。

アルーを選んだ理由
一緒に考え一緒に伴走してくれるパートナー

――― 今回アルーに研修を任せた理由についてお聞かせください

 

菅沼  今回のテーマであるグローバル人財要件定義や、グローバルチャレンジプログラムをアルーにお願いするにあたり、御社のプログラムや海外関連の全体像を紹介していただきました。活用できるプログラムや他社の事例を提案していただいたことが、非常に良かったと感じています。

 

――― 今回の研修を導入する際に重視したポイントはなんですか?

 

菅沼  最初の段階では、いくつかの会社を比較しました。要件定義の段階で、数社を比較しながらコンペのような形で検討を進めました。

研修会社を選ぶためにいくつかの会社とお話ししましたが、特に重視したポイントとしては、アルーが提供してくれた幅広い情報です。提案いただいたパッケージの中に多様なオプションが含まれており、こちらからの要望に応じて具体的な資料を作成していただいた点が非常に良かったと思います。具体的にアイデアに合わせて資料を提供してもらったことで、私たちのイメージを具体化していくことができました。

 

新井  全体を俯瞰して、包括的に考えていただけた点も評価しています。会社によっては、一部の要素にのみ焦点を当てた提案がありましたが、アルーは全体的な視点で考えていただけたと思います。

 

――― 今後アルーに期待することはどういったことですか?

 

山口  今回のプログラムは海外に実際に足を運んで行いましたが、今後は国内でもグローバル体験ができるような、擬似的なプログラムの提案をお願いしたいと考えています。

 

新井  私たちの全体的な人財育成体系を引き続き俯瞰的に見ていただき、総合的なアドバイスをお願いしたいと思っています。例えば、リスク管理研修やコンプライアンス研修についても、必要に応じてご提案いただけるとありがたいです。また、アルーが持っているコンサルティング機能を活かし、他社の事例や知見を共有していただけると助かります。

 

――― アルーは皆様にとってどのような存在だとお考えでしょうか?

 

新井  人財育成における先端的な知見を共有していただける情報源であり、信頼できるパワーアドバイザーとしての位置づけです。

 

山口  企画を担当するメンバーは悩むことが多いので、そういった時に相談できるパートナーとして、一緒に考えていただける存在であると大変ありがたいです。会話の中からヒントを得られることが多いので、その時間を大切にしていただけるパートナーであってほしいと思います。

 

菅沼  私にとっても、相談相手としてアイデアを具体化していくプロセスが非常に助かります。他社の事例も参考にさせていただくことで、弊社のプログラムの幅が広がる点が良いと思っています。

 

――― 他社に弊社を勧めるとしたら、一言でどう表現しますか?

 

新井  「使い勝手がいい」ですね。

 

山口  「一緒に悩み、一緒に伴走してくれる」といったところでしょうか。

 

菅沼  一言で言うのは難しいですが、他社の事例を共有してくれる点が特に良かったと思います。

株式会社ニップン 代表取締役社長
前鶴 俊哉様から

「ニップングループは、人々のウェルビーイング(幸せ・健康・笑顔)を追求し、持続可能な社会の実現に貢献します」という経営理念の実現のため、総合食品企業として食による社会課題の解決に挑み続ける「長期ビジョン2030」を策定しました。売上高5,000億円、営業利益250億円規模まで成長させる「経済的価値」の向上に加え、社会、生活者、従業員のウェルビーイングを実現する「社会的価値」の創造を戦略として据えています。

日本は人口減少の局面を迎えていますが、世界規模でみれば人口は増加しており、当社は海外事業の拡大に努めております。海外事業では既存の米国、中国、タイでの事業に加えて、インドネシアでプレミックス工場稼働による事業拡大、アメリカ・ユタ州で製粉事業に参入しました。
2024年にはベトナムにも新たに進出しており、当社の海外事業を成長させる力を持つ「グローバル人財」の育成が不可欠であると考えます。当社として、求める海外で働くための人財像や若手マレーシア研修等の施策を通じ、社内のグローバル人財が育つことを大いに期待しています。

アルー営業担当からの一言

アルー株式会社
グローバルHRコンサルティング部
熊澤 亜未

研修に参加された皆さまには、施策の冒頭で会社の方針やグローバル人財要件を含む期待を聴いていただきました。ニップン様の一員として個人がどのように成長し、貢献していくかがより明確になったことで施策の効果も高まったように感じます。海外事業と連動した育成体系の構築および人財要件をもとにした効果測定が肝要であると改めて気づかせていただいた事例です。
社員の皆さまが学びを現場で活用され、海外でご活躍されることを想い、引き続き“パッション”を持って貢献します。

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