ファイントゥデイの共通概念「パーパス」「バリュー」「リーダーシップビヘイビア」
-貴社の事業内容と部署の役割を教えてください
矢地様(以下、敬称略):当社は、2021年7月に資生堂から事業を継承し、設立されました。TSUBAKI、unoをはじめとした、ヘアケア、ボディケア、スキンケア製品を扱い、日本のほか、中国・APAC(アジア太平洋地域)も含む11の国と地域でグローバルに事業展開している会社です。
その中で人事本部は、グローバルな会社の成長を担っている組織です。APACの各子会社に足りないHR機能の補填や統合を行っています。
人事本部内の人財マネジメント部では、社員のHRマネジメントを採用時から一気通貫で支援しています。私たちはその中の「人財開発グループ」に所属し、「社員の成長は組織全体の成長」という考えのもと、社員の成長を支援しています。個人と組織という観点、また、短期と長期という観点で、組織の成長を支える役割を担ったチームです。
-今回、アルーにはどのような研修を依頼しましたか?
矢吹様(以下、敬称略):当社の「バリュー」と「リーダーシップビヘイビア」を全社員に浸透させ、「リーダーシップビヘイビア」を体現するために必要な知識やスキルを階層別に身につけてもらうことを目的に研修を実施しました。「上級管理職層」「ミドルマネジメント層」「メンバー層」の3つに分け、それぞれアッパーマネジメント、コーチング、セルフリーダーシップというテーマに取り組んでもらいました。
上級管理職層に実施したのがアッパーマネジメント研修です。上級管理職層は、トップから与えられた戦略を自部署に展開する役割を担っています。与えられた戦略を横流しするのではなく、「背景を理解しながら、自分の言葉で伝える」という役割認識を揃えてもらいました。
ミドルマネジメント層に実施したのはコーチング研修です。ミドルマネジメントは、上級管理職から伝えられた戦略を実際に展開し、メンバーを動かしていく役割を担っています。そのため、組織のコンディションを把握し、何が起こっているのかを理解した上で、メンバーを動かせるようになってもらう必要がありました。
メンバー層に実施した研修がセルフリーダーシップ研修です。メンバーは、戦略を実行するにあたって、自分の持ち場でリーダーシップを発揮することが求められます。そのためのコンディション作りとして「セルフリーダーシップ」というタイトルで展開しました。
また、リーダーシップスキルだけでなく、当社のパーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアを改めて周知し、それらと自分の価値観や大切にしている想いが引き寄せ合う部分について対話するパートを各研修に組み込みました。
-今回の研修を導入した課題や背景を教えてください
矢吹:ビジネスを成長させるにあたって、組織としてのベーススキルや共通のマインドが揃っていない状態だったことが課題でした。立ち上げ当初は、資生堂からの社員が大半である一方で、中途採用で全く異なるバックグラウンドを持つ社員の入社も増えつつあるという状態でした。全社員のスキルレベルや考え方を揃えていくために、各階層で求められるリーダーシップの開発に合わせ、企業パーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアといった社内共通のマインドや考え方を伝えようと研修を打ち出しました。
当社は企業パーパスを「世界中の誰もが、素晴らしい一日を紡ぎ、いつまでも美しく、豊かな人生を送れるようにすること」としています。
バリュー(価値基準)はパーパスからブレイクダウンし、「お客さまへの想い・高品質」「わたしたちが培ってきた美意識」「フロンティア精神」の3つを定めています。
リーダーシップビヘイビアは、バリューを具体的な行動指針として落とし込んだもので、「お客様以上にお客様を知る」、「最高のチームプレイに貢献する」、「異質に可能性を見出す」、「美しさの本質に向き合う」、「一人称で語る」の5項目で示しています。
また、5つの項目毎にさらに具体的な行動の善し悪しを「Do's」「Don'ts」として定めています。Do's は取るべき行動・賞賛すべき行動・評価されるべき行動で、Don'ts は取ってはいけない行動です。Do's を取り入れている企業はよくありますが、当社では Don'ts も設けています。つい取りがちな行動や流されてしまいがちな行動などを、Don'ts としてリーダーシップビヘイビアの中で明示しています。
矢吹:バリューは社員から公募してボトムアップ式で作りました。そのため、パーパスやバリューの存在は知っているという社員は多いです。しかし、バリューを「実際にどのように使うのか」「日常の中でどのように判断軸として用いていくとよいのか」「どのように評価されるのか」という点までは認識されていませんでした。
矢地:パーパスは上位概念なので、具体的な行動として何をすればいいのかをイメージしにくいため、リーダーシップビヘイビアを設定して社員の行動レベルに落とし込みました。
-今回は、その「パーパス」を軸にした研修を実施されたということでしょうか?
矢吹:そうですね。パーパスを中心にバリュー・リーダーシップビヘイビアを設定していますので、リーダーシップビヘイビアを日々実践していくことが、バリューの体現であり、パーパスの実現に繋がります。
矢地:リーダーシップビヘイビアは細かく定義していますが、会社の考え方を押し付けるわけではなく、さらに可変であるべきだと思っています。戦略が変われば社員に求められる行動も変わるし、部署や、社員一人ひとりの立場によっても強弱があります。リーダーシップビヘイビアは「パーパスやバリューを体現するために何をすればいいのか」を社員一人ひとりが考えるきっかけに使ってもらいたいです。
リーダーシップビヘイビアをもとに、ファイントゥデイらしい行動についてみんなで話し合っていきたいと思っています。
共通のパーパスのために、共通のバリューやリーダーシップビヘイビアの中で、自律的に行動する人財を目指す
-今回の研修によって達成したいゴールを教えてください
矢吹:全階層共通のゴールは、2つ設定しています。1つは、バリューとリーダーシップビヘイビアを理解してもらうことです。もう1つは、バリューとリーダーシップビヘイビアを理解した上でまず最初の行動を起こしてもらうことです。
今回の研修は2日間で設計し、1日目と2日目の間にアクションプランを実践する期間を設けています。アクションプランは各階層によって異なり、それぞれの役割に合わせたゴールを設定しています。
アッパーマネジメント研修では、戦略の背景や意味合い、自部署の提供価値を理解して、自部署に伝えられるようになることを目指しました。
コーチング研修は、日々の業務に追われ忙しい中でも、チームの目標達成のためにメンバーと効果的なコミュニケーションを図り、チームをマネジメントするためのリーダーシップを発揮することが目標です。
セルフリーダーシップ研修では、受け身にならず自分から行動して、いろんな視点を得ながら自分の持ち場でリーダーシップを発揮することを目標としました。
矢地:リーダーシップビヘイビアは、当社の目指す人財像を明確に定義したものになります。当社の求める人財は「自律的に課題解決できる人財」ですが、ただ自律的であるだけではなく「共通のゴールのために、共通の価値基準や行動指針の中で、自律的に行動すること」を大事にしています。「ゴール」「価値基準」「行動指針」がつまり「パーパス」「バリュー」「リーダーシップビヘイビア」であり、そこの認識を統一していくために研修を行いました。
また、パーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアを理解した上で、各階層ごとに必要なリーダーシップについて伝えていくことも、今回の研修のゴールとしました。
-今回の研修を通じて、受講者にどのような知識を獲得して欲しいと考えていましたか?
矢吹:スキル面では、研修で学んだ各階層に必要なリーダーシップを持ち場で活かしてもらいたいという思いがありました。マインド面では、ファイントゥデイ独自の「バリュー(価値基準)」「リーダーシップビヘイビア(行動指針)」を理解してもらうことを目指していました。
矢地:さらにマインド面でいうと、「当社の求める人財材像の価値基準」と「自分の大切にしている価値観」を統合することを今回の研修のテーマにしました。当社のバリューやリーダーシップビヘイビアを遵守しなさい、という押し付けではなく、ファイントゥデイで働いている意味というパーソナルな価値観にも向き合ってもらいました。
-今回の研修を実施するにあたって、アルーを選んだ理由を教えてください
矢地:研修を提供してもらうというより、一緒に作り上げていきたいと考えていたため、当社の考える大事にしたいポイントと合致する研修会社に依頼したいと考えていました。
大事にしたいポイントは2つあります。1つは、今回の研修は「会社の価値基準と社員の価値観を結びつける」というハイレベルなテーマを扱っているので、それに対してきちんとファシリテートしてくれることです。このテーマをプログラムの中に組み込んで研修を作ってくれることをポイントとしていました。
もう1つは、研修後もアップデートして改善しながら進めていけることです。パッケージ化された研修ではなく、研修をより良くしていく提案がもらえることをポイントとしていました。
研修を実施するごとにアップデートをしてもらっているので、これまで15回以上研修を実施してもらいましたが、同じ内容の研修はなかったです。共通して押さえるべきエッセンスを押さえながらアップデートをしてもらえたと思います。受講者の状況に合わせたり、バックグラウンドを伸ばしたり、講師と一緒に最適な研修を提供してもらっています。
-実際にアルーから提案を受けた中で印象に残っていることはありますか?
矢地:「研修というタイミングで、バリューとリーダーシップビヘイビアを全社員にまず周知させたい」という話をしたときに、アルーの講師と営業担当が「どうやったら認知されるのか」を考えて提案してくれたことが印象的でした。リーダーシップビヘイビアの内容をただ研修に組み込むのではなく、受講者に伝わるようなプログラムを考えてくれました。
当社にとって良い方法、受講者にとって効果的な施策について、企画の段階から一緒に考えて研修を提供してくれたことが良かったです。講師とも連携して、企画から研修実施まで一貫した研修を提供してくれたと思います。
矢吹:当社とアルーとで、「一緒に研修をより良くしていこう」という意識が揃っていたと強く感じました。受講者に対して良い研修であり、当社にとっても良い研修であることを追い求め続けてくれて、温度感が一緒だったと思います。
矢地:アルーの姿勢はすごく真摯だと感じました。当社からの要望をただ受け身で取り入れるのではなく、時には言いにくいことも言ってくれて、「仲間」のように感じていました。
パーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアを周知させ企業カルチャーを作る第一歩となった
-研修を実施した所感を教えてください
矢吹:当社で研修を実施すること自体が初めてだったので、社員の期待値が高く、前向きに取り組んでもらえました。研修のスタイルを工夫し、当社らしい要素を取り入れてインタラクティブな研修にしました。そういった点も、受講者が前向きに参加してくれた理由だと思います。
たとえば、対話中心のプログラムなので、机をなくして椅子を円形に配置して、対話がうまく進むように工夫しました。
また、出来る限り部署が重ならないようにしてグループを組みました。受講者は自部署以外の横のつながりを求めていたことも分かり、結果としてその要望にも応えることが出来ました。
-研修のゴールは達成できましたか?
矢吹:研修後のプログラムとして「行動を起こす」ところまで設計していたので、「まず行動を起こしてもらう」というゴールは達成できました。
また、年に2回全社員を対象に実施しているエンゲージメントサーベイ内の「パーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアの浸透度」についての回答でも良い傾向が見られました。行動レベルが研修前は43%だったのが、研修後には50%弱まで伸びたのです。これから社員が日常の様々なシーンでリーダーシップビヘイビアと重なる行動を起こすことで、会社全体にじわじわと波及していくと思います。
矢地:本来、リーダーシップビヘイビアは、個人が能動的に起こして欲しい行動になります。パーパス浸透のために人事評価や目標設定の中に組み込んでいる企業は多いと思いますが、当社はあえてまだ組み込んでいません。人事制度への組み込みは今後検討すべきことですが、先に評価制度などに組み込んでしまうと「評価のために」行動してしまうからです。当社では、ちょうど今こそが、一人ひとりがバリューやリーダーシップビヘイビアに思い切り向き合うチャンスだと考えています。
半年前にバリューとリーダーシップビヘイビアの話をしたとき、受講者はきょとんとしていましたが、今では「バリュー」「リーダーシップビヘイビア」という言葉を皆が認知しているように感じます。
今後は、受講者が起こした行動をカルチャーレベルにしていく必要があります。その足がかりとなる研修を実施できたという実感があります。
-受講者にはどのような変化がありましたか?
矢地:管理職層、特に上級管理職層の受講者がリーダーシップビヘイビアを言葉にする様子が見られました。上位層がパーパス、バリュー、リーダーシップビヘイビアにコミットすることでメンバー層もついてくるので、上位層が価値基準に触れる機会を意図的に多く設けています。メンバー層の変化はこれからだと感じています。
当社の目標とする人財像は、「自律的に課題解決できる人財」です。そのためのバリューやリーダーシップビヘイビアであり、これらを軸にして企業カルチャーをつくっていきたいです。バリューやリーダーシップビヘイビアを体現できる人の密度を高めることは、1年、2年で実現できることではありません。また、強制的に伝えても効果がなく、継続的に社員と向き合っていく必要があります。研修を通じてその一歩目を踏み出したところです。
矢吹:研修後の変化として、研修内のグループワークで他部署との接点が出来たことで、「業務がうまくいったことがあった」「スムーズに連携が進むようになった」「新しいことを始めた」などの話を聞きました。研修前では関わりがなかった社員同士でしたが、研修のグループワークで知り合い、実際の業務でも一緒に進めてみようという動きがあったようです。
「自律的に課題解決できる人財」を目指して仕組みを用意し、細かいメッシュで支援していく
-今後、どのような施策を行っていきたいですか?
矢地:「自律的に課題解決できる人財」を目指して、社員がチャレンジできる仕組みを用意していく必要があります。与えすぎる人財開発ではなく、基本的には自分で学習する機会を取りに行き、本人が選択できる人財開発が重要だと思っています。
今回の研修では3つの階層ごとにマネジメントやリーダーシップのスキルを提供しましたが、今後はよりメッシュを細かくして課題を明確化し、スキルの提供をしていきたいです。今後もアルーに提案をいただきながら一緒に向き合っていきたいと思っています。
-アルーの研修に対して、もっとこうだったら良かったという部分はありましたか?
矢吹:改善の要望はありませんが、今後も同じ講師に研修を行ってほしいという希望はあります。企画の段階から一緒に考えて研修を実施してくれたので、当社の状況も理解してもらっています。また、登壇回数を繰り返し受講者のことも理解していると思いますので、同じ講師で続けていけたらと考えています。
-アルーはどのような存在ですか?
矢吹:チーム「ファイントゥデイ」の一員だと思っています。クライアントとベンダーという関係ではありますが、それを超えたチームの一員のような存在です。
企画の段階から、当社の人事か部員のように一緒になって考えてくれて、最後までデリバリーして、またアップデートまでしてくれるところがアルーの特徴だと思います。コンサルタントではなく、一貫して伴走してくれるところが本当にありがたいと思っています。
矢地:私も「パートナー」だと思っています。当社の要望に応えるだけでなく、客観的な目線で健全な批判をクリティカルな問いとして投げてくれるのがすごく心強いです。その投げた問いについて一緒に考えてくれるパートナーだと思っています。
-最後に、営業担当と講師にコメントがあればお願いします
矢吹:もうすでに1年を超えた付き合いをして、ファイントゥデイの変化に対応しながら研修をデリバリーしてくれているところに感謝しています。これからもよろしくお願いします。
矢地:まず、1年半も伴走してくれたことに感謝しています。当社もアルーに支援いただきながら成長していきますが、アルーも当社の人財開発の現場を見て成長してもらいたいです。一緒に切磋琢磨していくことで、より良いものが出来ていくというイメージを持っています。今後ともパートナーとして、お互いに刺激し合う「仲間」のような関係でいられたら嬉しく思っています。
アルー営業担当からの一言