※本文内、敬称略
ーーー 貴社の事業内容と部署の役割を教えてくださ
澤橋 医療機関で実施する治験を支援するSMO(治験施設支援機関)として、事業を行っております。その中で我々人事部 教育研修課は、階層別研修やビジネススキルを中心とした社員向けの教育について、体系構築や企画運営を行っております。
課題・背景
プレイヤーからマネージャーへの意識転換を行い、健全なグループ運営をできるようにしたい
ーーー 今回、新任グループ長研修を導入されるに至った課題、背景を教えてください。
澤橋
今回の研修の対象者であるグループ長は、これまでプレイヤーとして活躍されてきた方々であり、立場的にマネジメントや人材育成についての学習をする機会が少なかったという背景があります。特にCRC(治験コーディネーター)という職種は、半分は会社員、もう半分は医療機関で働くコメディカルに近い立場であると個人的には捉えていますが、そういった業種特性に応じた研修体系や教育環境が十分でなかった部分もあるとも思っています。実際、「コーチング」というスキルのことは知ってはいるが、詳しく学んだことがないという声を聞いたこともあり、我々が学ぶ機会を提供できていなかったということで、常に課題として考えていた部分でした。
グループ長に昇格すると、プレイヤーとして業務をすすめる一方で、マネジメント領域にも足を踏み入れるという難しいポジションに就くことになります。昇格したばかりのグループ長の方はまずその点で壁にぶつかっていることが多いように見えていたので、我々がもっとサポートできる部分があるのではないかと常々考えていました。
ーーー そのような課題を感じたきっかけはありますか。
澤橋
これまでは自社内で新任グループ長研修を実施していました。その際にアンケートをとったところ、「本来はプレイヤー業務50%、マネジメント業務50%で働きたい。だが現状は、昇格前と同じくらいのプレイヤー業務があり、プレイヤー業務100%に対して単純にマネジメント業務50%がのってしまっている状態だ」というような声が多く集まりました。
過去に新任グループ長と面談した際にも、「自分のプレイヤー業務は減らないのに、マネジメント業務が加わりどうしてよいかわかりません。何とかしていますが……」という相談を受けることが多々ありました。「実務自体は上司に教えてもらえるが、プレイヤー業務と併せてマネジメント業務をどうやって両立してすすめていくのかという具体的な方法については、誰も教えてくれない」という声もありました。
プレイヤーからマネージャーへの意識転換が非常に難しいということがアンケートや個別面談からわかったため、この課題にはぜひアプローチしたいと考えていました。
ーーー課題に対して、これまではどのような研修や施策を行っていましたか。
澤橋 当然ではあるのですが、業務に役に立つ情報を求められていたこともあり、当社独自の専門業務などの内容を優先していました。マネジメントや後進を育てるための施策は足りなかった部分があると思います。その中でもなんとかできることを、と人材育成関連のコンテンツを作成し、社内で講師を立てて研修を実施していました。ただ、自社内で研修を実施してみた結果、社外の人から講師として話してもらう方が伝わりやすい、受け入れやすいケースもあると感じました。
また、少ない人員で、マネジメントや後進育成に関して作り込んだ研修を独自で制作することが難しかったという事情もあります。やりっぱなしの研修にしないためにフォローアップ研修も実施していましたが、すべて自社内で行うとなると、多くの手間と時間がかかるため、今回は研修会社の力を借りることにしました。
ーーー 新任グループ長研修によって達成したい目的やゴールを教えてください。
澤橋
リーダー職である「グループ長」として、まずはマネジメントの基礎力をつけてほしいというのが一番の目的です。グループをマネジメントする上で基礎になる姿勢やマインド、具体的にメンバーをどうフォローしていくかといった育成の知識を身につけてほしいと考えていました。最終的には、それぞれのグループ長が「スムーズにグループを運営できること」がゴールですね。
グループ長に昇格して1~2年ぐらいは、周囲も温かい目で見守ってくれています。その間に、研修での学びを実践することでグループ長として成長していってほしいです。そして、一つ一つのグループが健全に運営できているという状態が理想ですね。知識をつけるだけでなく、研修で学んだ知識を、現場で活用してもらうことが重要だと思っています。
ーーー 「健全なグループ運営ができている」とは、具体的にどのような状態を指しますか。
澤橋 当社では社員一人ひとりが数値目標をもっています。目標達成に向けて一人ひとりが頑張るだけではなく、「グループで達成していこう」という姿勢が見られると、健全なグループ運営に近づくのではないでしょうか。
当社の業務は担当ごとに分かれているため、極端なことを言えば「私の担当分だけ頑張ればよい」という姿勢でも、短期的に個人目標が達成できることもあります。他の人の力を借りずとも、自分が動けば完遂できるということもあり得ると思います。
ただ、その姿勢で長期間安定した成果を出し続けるのは難しいと思います。人間ですから、体調を崩すこともありますし、ずっと同じ状態で力を発揮し続けるということはできません。
社員一人ひとりが業務を幅広くカバーできていることは素晴らしい部分でもあるのですが、もっとお互いフォローし合ったり、自分のスキルや知識を同僚や後輩に伝えたりできるとよいですよね。そのようにお互いに支え合い、よりよい影響を与え合うことができる点が、グループであることのメリットでもあり、グループとして取り組んでいる意義でもあると思っています。
ーーー 新任グループ長研修によって、受講者にどのような知識習得、また行動変容が起きてほしかったですか。
澤橋 グループ長としての役割を理解し、自分がメンバーからどう見られているかを意識してほしかったですし、その上で、どのようにメンバーをフォローするのか、自分には何ができるかを具体的に考えてほしいと思っていました。
メンバーをフォローする一般的な方法を知っていても、自分ごとに置き換えて言語化するのが難しかったり、なかなか自分では実行できなかったりといった課題があったためです。書籍などを読んで学べることもあると思いますが、行動に落とし込んで初めて「メンバーのフォローとはこういうことなのか」と実感できると思っています。
実行施策
現場の課題に合わせて、マネジメントの基礎知識を習得
ーー 新任グループ長研修の内容について教えてください。
澤橋 対象は新任グループ長で、当社のグループ長はリーダー職や係長クラスに該当します。グループ長になる方の多くは、CRC(治験コーディネーター)という専門職として経験を積んできた方です。
グループ長になると、これまでとは別の役割を求められます。たとえば、メンバーのフォローをしたり、人事評価をしたりする必要があります。グループ長になるということは、一人一人にとって大きな変化が訪れるということです。転機となるこのタイミングに、マネジメントの最初の一歩を踏み出していただくためのサポートとして、メンバーとの接し方や育成方法、マインドなどの基礎知識を学習する機会を作りたいと考えました。
< 図:新任グループ長研修アジェンダ >
ーーー 今回の研修で工夫した点はありますか。
澤橋 アルーに依頼したのは、当社の業界、状況に沿った内容にしてほしいということでした。一般論を伝えるだけだと伝わりにくいこともあるため、可能な限り現場に寄せたお話をしていただけないかとご相談しました。人材育成における専門用語をただ解説するのではなく、しっかり当社の社員がわかる形に噛み砕いて伝えていただいたと思います。
成果
受講者が自身の状態を把握し、課題を認識できた
ーーー 新任グループ長研修を実施してみての感想をお聞かせください。
大瀧 事前に当社にきちんとヒアリングを行ってくれたおかげで、当社の課題に合ったクオリティの高い研修を実施できました。また、医療現場を知っている講師を選定してくださったので、研修の序盤から受講者の興味をしっかり引き寄せていた印象があります。内製研修と比べると、適度な緊張感もありながら、前向きな姿勢が見られました。講師の方の進行がスムーズで、受講者を引き込んでくれたので、研修が進むにつれてどんどん盛り上がったのが印象的です。時間の経過とともにグループでのディスカッションも活発になり、大変よかったのではないかと思います。
ーーー 当初想定していた目的の達成には近づきましたか
大瀧 受講後にアンケートをとったところ、「研修内容を今後どれくらい活用できそうですか?」という質問に対して、約8割の方が「活かせそう」と回答をしてくれていました。研修で学んだことをどれだけ現場で活かせるかというのも課題の一つだったので、この結果はよかったと思います。
実際、今現場に戻ってからはどうなのか、というのは現時点ではわからない状態ではありますが、受講者の気持ちの面では研修目的達成に近づいたのではないでしょうか。
ーーー今回、アルーの提供する職場学習支援システム「compath」もご利用いただきました。「compath」からわかる効果はありましたか。
澤橋 まだ劇的な変化は起きていないと思います。ただ、受講者が自身の状態を把握し、「本当はこうしたいのだが、それがなかなかできていない」という課題意識を持てていることはプラスと捉えています。compathを通して、グループ長が現状そのような課題を抱えているのだということが人事部としても把握できました。グループ長がそのような状況に置かれているのは、本人達だけの問題ではなく、会社としての問題でもあると思っています。今はcompathから見えてきた課題に対して、私たちができることを考えている最中です。
今後の取り組み
時代の変化に合わせて多様な人材にマッチする研修を提供したい
ーーー新任グループ長育成において、今後さらに何を実現していきたいですか
澤橋 マネジメントを継続して学んでいただきたいと思います。具体的には、人事評価や目標設定の場面での面談スキルや、部下のキャリア形成を考えたコミュニケーションなどです。そのための人材の体制や研修体系づくりを目指していきたいと思っています。
ーーー グループ長育成に限らず、人材育成においてどういったことを実現していきたいですか。
澤橋
変化に対応しつつも、会社として不変のものとのバランスを取りながら人材育成の体系づくりをしていきたいです。
我々の現在の事業はSMO(治験施設支援機関)という医療機関を支援する事業ですが、求められるもの、提供しているサービス内容なども変わってきています。
事業内容が少しずつでも変わるのであれば、会社として求める人材像も当然変わっていきます。今回の研修がうまくいったから、来年もこれをやろうという姿勢ではなく、都度見直していくことが大事だと思っています。
現代は、様々なことが変化する時代です。その変化に対応していくことが、我々にも求められていると思います。もし自分が受講者の立場だったら、10年前に作られた研修を受けたいとは感じないでしょう。
そもそも、社員育成の本来のゴールは一人一人がのびのび働けることです。研修を時代に合わせて都度見直すことで、変化していく環境に、かつ、多様な人材にマッチするような仕組みや体系を作っていきたいと思います。
ーーー 貴社の今後実現したいことにおいて、アルーにはどのような期待をされますか
澤橋 新しいサービスがあればご紹介いただきたいですし、現行のサービスのアップデートも期待しています。最近では別の課題感がでてきているので、その点でも相談にのっていただけたら嬉しいです。
大瀧 その課題感というのは「リーダーシップがうまく発揮されていないこと」ですね。控え目な人が多いように感じることがあります。
澤橋 社内には、元看護師を始めとしてEQが高い人が多いという印象です。EQの高さとリーダーシップが反比例するというわけでは決してありませんが、メンバーに対しても一歩引いてしまう、寄り添いすぎてしまっているのではと感じる場面にも遭遇してきました。リーダーシップも様々な形がありますが、それぞれの力がマネジメントのシーンで良い形で発揮できるようなサポートをしていきたいと考えています。
アルーを選んだ理由
業界に合わせた教材アレンジと粘り強い提案力
ーーー アルーのことはどこで知りましたか。
澤橋 以前、EPSグループの新入社員研修でアルーにお世話になっていた時期があり、その時に私もEPLinkの研修担当として入っていたので、お名前は存じておりました。
ーーー 研修会社の選定で重要視した点は何ですか。
澤橋 テキストが分かりやすいかどうかを重視していました。今回の研修の対象者であるグループ長は、今までビジネススキルについて学ぶ機会が少なかったという方もいて、ただ作られた既成の研修を実施してもどうしても伝わりきらない部分があると感じていたためです。
現場の社員は、医療機関内で発生するさまざまな問題に日々直面しています。対応する相手がドクターや患者であることも多く、急な体調不良や緊急事態が発生することも少なくありません。そうした健康リスクの高い現場環境においては、一般的なマネジメント知識をそのまま伝えても、すぐに実践することは難しいこともあると思っています。受講者が医療現場で働く専門職であるということを理解した上で、研修内容をアレンジしてもらえるかどうかをポイントにしていました。
ーーー 今回の研修をアルーに依頼した理由を教えてください。
澤橋 研修内容をしっかりアレンジしてくださったことが理由の一つです。企画検討中の段階から、様々なご提案を頂くことができました。
また、コンピテンシースナップとアクションプランノートを併用することで、効果測定ができる点もよいと感じました。既に見えている課題へのアプローチも必要ですが、研修の効果測定の結果、次に何をすべきかがわかるのではないかと期待し、アルーに発注しました。
大滝 ただ、コスト面で他社さんの方が手を出しやすい価格ではあったので、検討の初期段階では正直他社さんに魅力を感じていましたね。
澤橋 最終的な決め手は、営業担当の神戸さんが何度も連絡をくれたことですね。多くの研修会社さんは一度しか提案しないと思うのですが、アルーは「どこがダメだったのか」と丁寧にヒアリングをして、何度も提案をしてくれました。
ーーー アルーに対して、さらにもっとこうだったらよかったなという部分はありますか。
大滝 職場学習支援ツールとして取り入れた「compath」のデータの見方が難しく、理解しづらかったです。
また、研修後のアンケートでより詳しい受講者の声が分かるとよいと感じました。研修内容のどの点を活用できそうに思ったのか、どこがより理解できたのか、といった点です。
澤橋 データを出していただけるのはありがたいのですが、営業担当の方の解説なしでは理解しづらかったです。
ーーー アルーは皆様にとってもどのような存在でしょうか。
澤橋 相談できる相手というふうに感じています。今回の研修企画では、当社の弱い部分やわたくしどもが感じている課題を正直にお伝えしたところ、それらを丁寧に拾っていただけました。粘り強く向き合ってくださる会社さんだと思っております。
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アルー営業担当からの一言