※本文内、敬称略
――― 御社の事業内容について教えていただけますでしょうか?
内田 当社は、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3つの分野で事業を展開し、3事業のシナジーでお客様や社会の課題解決に取り組んでいます。今回のプログラムはエレクトロニクス事業部門で実施したのですが、この部門では、フォトリソグラフィ技術を核とし、最先端の技術を活用した半導体やディスプレイ関連製品を提供しています。
――― 所属部署について教えていただけますでしょうか?
内田 我々は、エレクトロニクス事業本部の総務部門に所属し、人財に関する施策全般を担当しています。「企業は人なり」という信念のもと、組織と個人の能力が最大限発揮されるよう、人財開発に力を入れています。総務部は、人事労務、総務、庶務を担当し、特に人財育成に注力しています。企業が事業を進める際に必要となる「ヒト・モノ・カネ・情報」の中で、「ヒト」を扱う部分が主なミッションです。
――― 総務人事の機能について、ホールディングスと事業部門での違いについて教えていただけますでしょうか?
内田 ホールディングスの人事・総務部門は、グループ全体の人事施策を担当しています。一方、事業部門の人事は、それぞれの事業部門特有の人財課題に対処しながら、施策を展開する役割を担っています。
――― 皆様の役職とご担当されている業務について教えていただけますでしょうか?
内田 私は総務部の部長職で、シニアチームリーダーとして人事・採用や労務を担当しています。また、芝浦地区の施設管理も担当しています。
岡村 私はチームリーダーで、主に管理職の評価、昇格、管理職制度の運用を担当しています。
瀧島 私は一般社員の人財開発を担当しており、新入社員研修やフォローアップ研修などが対象です。労務では労使交渉の事務局対応を行い、採用では営業系の新卒対応もしています。新卒採用において、エレクトロニクス事業志望の方のジョブマッチングを担当しています。
久徳 私は瀧島とともに人財開発を担当し、施設管理や安全管理業務も行っています。今回の研修では、運用担当者として関わっています。
課題・背景
管理職の世代交代により年上部下が増加
< 年上部下に関する課題感 >
――― 今回の研修を実施することになった理由や背景について教えていただけますでしょうか?
内田 人生100年時代と呼ばれる昨今、職業人生も長くなっています。社内ではさまざまな年代の社員が働いていますが、特にベテラン社員の活躍が増えています。ベテラン社員の皆さんの持つ経験や知見は、事業において非常に重要な要素となっています。ただし、役職定年や世代交代により、従来の年功序列型で役職が割り当てられる組織体制は変わりつつあります。そのため、彼らがさらに活躍できる体制をどう構築すべきか、またその方々と一緒にマネージャー層や後進をどのように育てていくべきかが、課題となっています。
自分よりも年上の社員や、元上司と一緒に働く機会が増えていく中で、組織として成果を出すにはどのようなアプローチが有効かという問題意識が、今回の企画の発端となりました。
――― 年上部下が誕生する機会が増えたのでしょうか?
内田 そうですね、世代交代は、組織運営において避けられないものです。次世代へのバトンタッチが必然的に行われますが、その後、ベテランの皆さんにどのように活躍いただくかが重要な焦点となっていると感じています。
――― 世代交代による年上部下とのコミュニケーションに課題が顕在化してきたのは、どのくらい前からでしょうか?
岡村 顕在化しているというよりも、ベテラン層がここ数年で増えていることが背景にあります。彼らにどう活躍してもらうかが社内で大きなテーマとなっており、それが今回の研修を実施するきっかけにもなりました。
――― この課題は特にエレクトロニクス事業本部で顕著なのでしょうか?
岡村 そうですね、他事業部門も含めその傾向はあると思います。一般的にも50代が多くなっている状況で、エレクトロニクス事業本部でも50代の割合が多いと思います。
――― この研修の検討はいつ頃から始まったのですか?
瀧島 2023年度からです。
久徳 検討自体は2023年の年末頃に始まり、実際に研修を実施したのは2024年の3月から4月にかけてです。
実行施策
管理職同士が共通課題について学び合うワークショップを実施
< 管理職向け相互学習プログラム(年上部下)のアジェンダ >
――― 今回実施された研修内容について教えてください
久徳 まず、部下との接し方について、基本的な課題を理解してもらうところから始めました。前提となる思い込みや、コミュニケーションをとる際に生じている課題について、どこにうまくいかない要因があるのかをインプットしました。その上で、年上の部下とのコミュニケーションにおいて、どのようなポイントが重要かについても説明しました。今回の研修では、課題認識を深めることと、今後年上の部下と仕事を進める際にどのようなポイントに注意すべきかヒントを持ち帰ってもらうことを目指しました。
――― 今回の研修のポイントについて教えていただけますか?
久徳 エレクトロニクス事業本部では、独自に管理職を対象とした相互学習プログラムを展開しています。このプログラムは、参加者同士が自らの持つマネジメントの暗黙知を言葉に出して共有し、お互いの成長につなげることを目的としています。過去には、MBO(目標管理)や若手社員との接し方に焦点を当てた研修も行ってきました。今回はテーマを「年上部下」にし、アルーさんの研修を採用しました。
――― 管理職向けの相互学習プログラムは、管理職全員が対象だったのでしょうか?
岡村 今回はチームリーダーが対象でした。年上の社員や一般社員を部下に持つチームリーダー全員に参加してもらいました。総勢200名だったため、2クラスに分けて、午前と午後の2日間にわたって実施しました。グループ分けも行い、オンラインで実施しました。
瀧島 グループ分けは、年上の部下を持つ人と持たない人が偏らないように工夫しました。
――― 今回は管理職向けの研修ということですが、これは階層別研修の一環として行われたのでしょうか?
岡村 相互学習プログラムは、管理職の皆さんが、自分のやり方に対して「これで正しいのだろうか」と悩む点をみんなで共有し、相互理解を深めながら形式化していくことが目的です。したがって、階層別のステップに従うというよりは、相互に学習し合い、現在のやり方を確認したり、新しい取り組みを試してみたりするという趣旨の研修です。2021年から管理職全員を対象に実施しており、グループディスカッション形式で進めています。
――― 事前課題はありましたか?
久徳 事前課題として、年上の部下と接している人には、その経験から何か課題があるかを考えてもらいました。接していない人には、将来的にどのような課題が想定されるかを考えてもらいました。
成果
「自分のやり方は間違っていなかった」と自己肯定感が上がった
――― 実施後の受講者に対する所感を教えていただけますか?
久徳 アンケートを実施した結果、印象に残ったのは、「今のやり方が正しいんだ」といった回答があったことです。受講者の自己肯定感や自己効力感が高まり、前向きに自分らしいマネジメントを進めていこうという意識を醸成できたというのがわかるような反応がありました。そこは非常に良かった点だと思っています。
――― 研修において効果測定や、数値的・定性的な評価はされていますか?
久徳 研修直後にアンケートを実施して、「今後どう活用していきますか」といった質問をしています。ただし、継続的な効果測定は行っておらず、各研修は一回で完結する形にしています。
――― 行動変容は見られましたか?
久徳 今回の相互学習プログラムの目的としては、チームリーダーにコミュニケーションの引き出しを増やしてもらうことにありました。そのため、大きな行動変容がすぐに見られるわけではないかもしれませんが、きめ細やかなマネジメントを行う上で、新しい選択肢が増えるような結果に繋がればよいと考えています。
――― 研修タイトルにこだわらず、コミュニケーション全般の底上げを目指しているということで、副次的な効果も期待しているのですね
岡村 そうですね。「年上の部下」というテーマで扱ったものの、受講者からは「すべての人に通じる内容だ」という声が上がっていました。
――― 今回の講師についての感想はいかがですか?
久徳 膨大な内容を2時間にうまくまとめていただき、とても有意義な時間になりました。私たちとしても感謝しており、非常に助かりました。
――― オンラインでの実施に関して、対面と比較して良かった点や改善点はありますか?
岡村 多くの人にとってオンラインでの研修は当たり前になっています。対面の方がやはり深いコミュニケーションが取れ、話しやすくなるというメリットは感じます。対面での企画も考えていますが、大人数を集める必要がある場合、オンラインでの実施が現実的です。
今後の取り組み
伴走型マネジメントが実現できる体制にしたい
――― 管理職向け相互学習プログラム以外に、事業本部で実施したい研修や取り組みはありますか?
久徳 例えば、TOPPAN全社的な課題として、若手層や中堅層のキャリアの見通しが課題となっています。キャリアデザインに焦点を当てた教育を進めていきたいと考えています。すでにキャリアデザイン研修は新人向けに実施していますが、20代・30代の若手層や中堅層にも広げていく計画があります。
――― 中堅層、管理職未満の方に向けた研修も考えられていますか?
岡村 若手層や管理職層以外の層に対しても、何らかの刺激を与える研修が必要だと考えています。現在は具体的な計画はありませんが、今後人事総務として、そのギャップを埋めるための研修を検討していきたいです。
――― 事業部門内から具体的な研修の要望はありますか?
岡村 部門間を超えて協力し合うためのフォロワーシップ研修など、特に監督職層に対してパフォーマンス向上を期待する声が出ています。このような声を反映した研修企画も進めています。
――― 研修以外に総務部として今後実現したいことは何ですか?
岡村 現在、管理職には部下と対話を重ねる「伴走型マネジメント」を強く求めています。キャリアに悩んでいる一般社員が多いので、彼らに寄り添いながら成長を促進していきたいと考えています。しかし、これを具体的にどう進めるかは課題ですので、今後何らかの仕掛けを考えていきたいです。
――― 管理職が各メンバーに寄り添いながらも、リーダーシップを発揮する形を模索しているのですね
岡村 その通りです。個別に寄り添いつつも、全体を統括する施策も同時に進めていく必要があります。
――― 会社全体としてのミッションやビジョンに向けた取り組みはありますか?
岡村 TOPPANのValues(価値観)を体現する人財育成が重要であり、組織と人財の成長を促す取り組みが今後ますます必要になると考えています。今後も、総務部としてメッセージを発信し続け、行動変容と意識改革を進めていきたいです。
アルーを選んだ理由
抽象的なオーダーを具現化する伴走者
――― 今回の研修で良かった点は何ですか?
久徳 今回の「年上部下」というテーマは、慎重に進めていきました。企画段階で他のテーマと比較しながら進められたため、企画の質を高めることができた点は非常にありがたかったです。
岡村 非常にタイトなスケジュールの中で対応していただき、ぼんやりしていたテーマを形にしてもらったのが、本当に助かりました。
――― 今回アルーの研修を採用した理由はなんですか?
久徳 アルーさんには、以前から新入社員研修などの階層別研修で相談をさせていただいていました。今回の研修内容は、明確なテーマが定まっていなかったので、アルーさんに伴走していただきながら内容を詰めていきました。その結果、自然な流れで研修実施までお願いする形となりました。特に良かった点は、研修を一緒に企画してもらえたところです。
――― 今後アルーに期待することは何ですか?
久徳 人財開発のニーズは変化しており、階層別研修のような画一的な研修ではなく、各層に適した研修を検討する必要があります。アルーさんには、今後も人財戦略に基づいた研修の組み立てを提案していただき、我々の突破口を開いていただけるような支援を期待しています。また、一緒に研修を形作るパートナーとしての役割もお願いしたいです。
瀧島 今回の研修では、我々から抽象的な要望を伝える部分もありましたが、アルーさんには今後、より具体化して実施できるようサポートをお願いしたいと思っています。
岡村 総務として、組織と人財のパフォーマンスを最大化するのが目標です。ただ、その目標を言語化し、納得のいく形で進めることが難しい部分があるので、そこをアルーさんにサポートしていただけると大変助かります。
――― アルーは皆様にとってどういう存在ですか?
久徳 総務部の「お客様」は社員です。社員のパフォーマンス向上に役立つ研修サービスを提供するため、アルーさんは一緒に価値を提供するパートナーとして取り組んでいただいています。我々が漠然と抱えている課題や思いを、アルーさんは非常に上手に整理して具体化してくれます。課題は感じているけど、解決の糸口が見えない部分をサポートしてくれる点が素晴らしいです。
瀧島 アルーさんは、我々が「こうしたい」と思っていることを様々な角度から見てくれる貴重な存在です。自社だけでは偏った視点で課題を捉えがちですが、アルーさんは豊富な知見を基に多角的な視点を提供してくれます。こうした視点があるからこそ、新たな研修や解決策が見つかるのだと思います。またあいまいなイメージを言語化・具体化をしっかり行ってくれる点が大きいです。また、準備期間が短い場合でも、対応してくれるところも非常にありがたいです。
岡村 アルーさんは、外部の視点を提供してくれる頼りになる存在です。自社だけで考えていると、「自社にとっての当たり前」だけで研修を組み立ててしまうことがあります。アルーさんの視点が入ることで、多くの従業員に価値のある研修に繋がっていくと感じています。やりたいことが実現できるようサポートしてもらえる点が本当にありがたいですね。
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アルー営業担当からの一言