※本文内、敬称略
ーーー 皆様の所属する人事部人財開発室の役割を教えてください。
石川 新入社員から役員層まで広く人財育成に携わっています。特に第一生命ホールディングス株式会社の人財育成も担当しており、各国に勤務する社員の人財育成といったグローバル人財育成も担当領域です。
課題・背景
若手社員に安定志向を脱却し、グローバルマインドを身につけてほしかった
ーーー 今回、アルーの海外派遣研修を導入した課題・背景を教えてください。
蔵口 GTS(グローバルタレントシーズ)海外派遣研修自体は、数年前から実施していました。入社3年目の社員の中から英語アセスメントのスコアをもとに選抜し、海外に派遣していました。
一方、社員からは「GTS海外派遣研修のような研修に自分も参加してみたい」という声が上がってきていました。そこで2024度から、入社1年目から5年目の若手社員を対象とした公募形式で実施することにしました。社員のやる気や自ら学んでいく姿勢を大切にし、「チャレンジ」する社員を後押しする研修でありたいという思いから指名型研修から公募型研修に変更しました。
また、海外という日本とは全く違う環境で自分の力を試すことで、若手社員が積極性を身につけ、帰国後自信を持って業務に取り組めるようになることも期待していました。
ーーー 指名型研修から公募型研修に移行した背景を詳しく教えていただけますか。
石川 金融業界・保険業界以外の方とグローバル人財育成について情報交換をしていると、当社と同じように社外への派遣を育成施策として実施している企業が多いと感じていました。多くの企業は「社員の自律を促したい」といった思いを持っており、それを叶えるために公募型をとっています。我々も社員全員が公平に「チャレンジ」できる仕組みに変えていきたいと考え、2024年度から、海外研修やその他の研修についても極力公募にしていくことになりました。
ーーー グローバル人財育成において、これまではどのような施策を行っていましたか。
蔵口 公募型海外研修で挙げると、「海外短期OJT」という、当社の海外グループ会社に1週間派遣するという施策があります。海外のグループ会社の業務を知り、グループ会社メンバーとの交流を図ることで、業務スキル・語学スキルの習得・向上およびグローバルな視点の醸成を目的とした研修です。
ーーー 今回のGTS海外派遣研修の導入によって達成したい目的・ゴールを教えていただけますか。
蔵口 GTS海外派遣研修の目的は、グローバルマインドの醸成です。多様性を理解し、仕事に向き合う場面で視野を広く、視座を高くしてほしいと考えています。
所属において会社を変革していくような行動を自ら起こしていく人財になることを目的・ゴールにしています。
英語でのビジネスコミュニケーション力というのはもちろん、どちらかというとマインド面の習得をより期待しています。
特に、「自分で考える」「前例踏襲を疑う」「周囲を巻き込む」「主体的に行動する」といったマインドを身につけてもらい、その結果として社員自身の行動変化につながることを期待していました。
言葉も文化も習慣も異なる海外に身を置くことで、自らが動かざるを得ないという追い込まれた状態を実現したのがこの研修です。社員には、たとえ海外にいても自分の能力を発揮し、困難な環境の中でチャレンジしてほしいと考えていました。
石川 私たちの業界は生命保険という事業の性格上、安定志向に陥りやすいところがあります。「外を見て、外を知ろう」「表に出て『チャレンジ』しよう」というマインドが今一番大事なマインドです。GTS海外派遣研修では、そういったマインドを持ち帰ってほしいという思いもありました。
ーーー 英語力やスキルより、グローバルマインドの醸成を重視した背景を教えていただけますか。
石川 GTS海外派遣研修に参加している世代は、大学入学と同時にコロナ禍が始まっています。大学4年間の内2年間ほどはキャンパスに通っておらず、様々な体験を制限された学生生活でした。そんな中でも、「やろうと思っていたことがコロナ禍でできなくなったが、工夫したらできるのではないかと思い『チャレンジ』した」という経験を語ってくれた学生が多数いました。そこで感じたのが、今の若い世代の方は、工夫をしたり別のやり方を考えてみたりといった創意工夫が得意であり、積極的に取り組むマインドをもっているのではないかということです。創意工夫と多様性にあふれる世代が入社してくれたのであれば、その力を発揮できるような場がもっとあった方がよいと考えています。
そこで若い世代が元々持っていたマインドを呼び起こすために、GTS海外派遣研修を実施しているという面もあります。社員本人にとってもタイトなゴールで大変だったはずですが、今年の社員はみなやりきってくれました。多少うまくいかないことがあったとしても、様々な方法で「チャレンジ」してくれました。このように、若い世代が元々持っていたマインドを呼び起こすのも人事部の大事な責務と考えています。

実行施策
3週間の海外派遣でチャレンジを積み重ねる
ーー 今回アルーに依頼いただいた「GTS海外派遣研修」はどのような研修ですか。
蔵口 グローバル人財育成の施策の一環として、GTS研修の海外派遣型と国内型をお願いしています。主な対象は入社1年目から5年目の若手を中心とした、公募制の研修です。
海外派遣研修は、3週間の海外派遣型の研修です。英語を実際に使いながら、海外の文化や商習慣などを理解し、コミュニケーションスキルも身につけることのできるプログラムです。研修での失敗も成功も社員の帰国後の仕事につなげ、自信をもって業務に取り組むことができるようになることを期待していました。
海外派遣研修の参加希望者には、事前にどれぐらいの熱量があるか、やりたいことがはっきりしているか、将来どういったキャリアを歩みたいのか、GTS海外派遣研修で得られる経験をどうやって自分のキャリアに活かしていくか、といった点を確認しました。応募者52名の内、16名がGTS海外派遣研修に参加しました。
国内研修は、1週間、オンラインで終日英語漬けの環境に身を置きます。海外のビジネスパーソンや大学生と交流し、ビジネススキルも身につけてもらい、日本にいながら海外にいるような研修だと考えています。
ーー 海外派遣研修に応募のあった52名の中から16名を選抜する際、どのようなポイントを重視しましたか。
蔵口 研修の意義・目的をしっかりと考えているか、という点を重視しました。一方で、英語のスキルはそれほど重視していませんでした。
成果
失敗を恐れず、自ら発信する力が身についた
ーーー アルーの海外派遣研修を実施した所感を教えてください。
蔵口 正直、社員がきちんと学びを得られるか、受け入れ先とうまくやっていけるか、という不安がありました。
実は、私が当初イメージしていた研修は、現地企業でみっちり3週間インターンを行う形式でした。ところがアルーさんから、インターン先に行く前に社員全員で集合し、3日間ほど商習慣や海外での振る舞い方などを学んだ方がよいと提案を頂いたのです。現地のビジネスパーソンと話す機会を設け、プレゼンテーションスキルや傾聴力、マレーシアやインターン先に関する知識などを学んだ方がよいというご提案でした。
結果、その3日間があったことで、スムーズにインターンとして活躍ができたと思います。事前準備があることで、うまく学びを得られないリスクを避け、安心感と自信をもってインターンに臨んでもらえたと思います。
石川 2024年度から従来のカリキュラムから変えていきたいと考えていたところ、その思いにも柔軟に対応いただきました。きめ細かい点についてアドバイスも頂けたからこそ、無事に研修を終えることができたのだと思います。
ーーー 当初設定していた目的は達成できましたか。
蔵口 GTS研修の目的は、「チャレンジ」する経験を通して、自分の限界やスキルを知り、自分自身を理解するという点にありました。社員からも、3週間の間に自分の限界や良い点に気づいたという声が挙がり、また、異文化を知ることで自分の価値観や常識が必ずしも相手と同じではないことへの理解にもつながりました。
ーーー 研修を通して、社員が変わったと感じる点を教えてください。
蔵口 印象的だったのは、最終日のプレゼンテーションで、社員みなが「3週間やり切った」という達成感からか、終始笑顔で自信に満ち溢れたプレゼンテーションをしてくれた点です。3週間、しっかりと学びを得られたのだと実感しました。
社員からも、「今までの経験や価値観だけでは通用しないということがわかったので、自分でどうすればそれらを変えられるか考えながら行動できた」といったコメントをもらっています。
3週間の研修期間中は現地やアルー様から現場の様子をフィードバックしてもらっていたので、社員の想い・意識・行動が変わってきているというのは感じていました。
石川 会社の研修というと、人事部や会社がお膳立てをしがちですよね。今回のGTS海外派遣研修では、誰も知っている人がいないインターン先に社員自ら飛び込んでいくことが求められるため、自ら動き、発言し、人を助ける必要があります。
日本とは異なる文化・商習慣・環境の中で、自分と向き合うという経験が社員の内省に繋がりました。日本に帰ってきた後も、自分に向き合う時間が増えたという社員が多ければよいと思っています。
ーーー 社員の行動変容を感じるエピソードを教えてください。
蔵口 研修受講前の「間違えていると恥ずかしいから言わないでおこう」「答えを見つけてから実行しよう」というような行動から、研修後は、自分が分からないこと、失敗したことを正直に発信し、助けてほしいと言えるようになったと思います。間違わないようにしようということに気を取られていると全く仕事が進まないという経験をしたからではないでしょうか。
また、自身の意見を積極的に発信できるようになった、という社員もいました。
「失敗が怖いから」「若手だから」といった理由で、上司の前や会議の場でほとんど発言しなかった社員が、「発言をしないといない人だ」とみなされてしまうということを自ら学んだようです。失敗を恐れず、自分の意見を言い、自分の存在感をアピールすることができるようになったと思います。
最終プレゼンテーションは社員の上司にも聴講してもらっており、その際に上司が社員のキャリアについて、「対話したり後押ししたりしていきたい」、「部下の意外な一面を見ることができてよかった」と感想をくれたのです。これは、研修開始前には想定していなかった効果でした。
また、社員の中には「海外でキャリアを積んでいきたい」と明確にキャリア志向が固まったという人もいました。研修前は漠然と海外に行きたいと考えているだけだったのが、海外企業でのインターンを経験することで、海外で仕事をすることがどれだけ大変で、自分には今どのようなスキルが足りないのかということを理解し、それでもやはり海外に「チャレンジ」したいと強く考える人も出てきたようです。
もしかしたら、行動が変容したのではなくて、社員の皆さんそれぞれが持っていた思いが発芽しただけなのかもしれません。「GTS(グローバルタレントシーズ)」という研修名にも、まさに「種」という言葉が入っています。社員は「失敗を恐れず、上下関係に関わらず、自分の立場に捉われず、自分の思うことを言いたい、やりたい」という思いを「種」として元々持っていて、社員の「種」を芽吹かせるきっかけであることもこの研修の意義と捉え直したいと思います。
ーーー 社員の方から寄せられた感想やフィードバックにはどのようなものがありましたか。
蔵口 「業務において、今まではチームや上司に判断を任せていたところを、少しずつ自分の判断でやるように心がけて動いています」、「前提を疑う姿勢を持つようになりました」、「過去の環境下ではよかったが、今の環境下では意味が変わっていないかという点まで考えが及ぶようになり、これまで慣習的に行われていたことが本当に正しいのかどうかを改めて考えるようになりました」、「未経験業務への「チャレンジ」に対する抵抗感がなくなりました。加えて、英語を利用する際の抵抗感も薄れています」というようなコメントがまさに、行動変容が起こったことを表しているかと思います。
ーーー 経営層や他部門からの研修に対する評価や意見にはどのようなものがありますか。
蔵口 海外派遣研修に過去参加した社員や上司から、「このような海外派遣研修のような機会がもっとあってよいのではないか」、「研修で身につけた学びを維持し続ける機会もほしい」、「異動とセットで同様の研修を考えてほしい」という声がありました。
石川 経営層からは、難易度の高い異動に自ら手を挙げる社員が増えてきているので、こういった研修というのは意味があるのだろうという評価をもらっています。
社員の中に海外へのキャリア志向を持っている人間がいるとすると、そこを引き出すのが人財育成の仕事です。役員とも、社員の思いを形にする大事なステップとして人財育成に取り組もうという話をよくしています。
蔵口 採用説明会でGTS海外派遣研修について説明しており、実際に「内定者時代にGTS海外派遣研修の話を聞いて、参加するために3年間頑張ってきました」という若手社員の方もいらっしゃいました。
ーーー 公募型のGTS海外派遣研修を始めてから、変化を感じることはありますか。
蔵口 海外派遣研修に対する間口が広がりました。今までは海外派遣研修はクローズな世界だという印象が強かったと思います。「自分には関係ない」というイメージを持っている社員が多かったのではないでしょうか。公募にしたことで、自ら手を挙げ、参加できるものなのだということが伝わったと思います。
ーーー GTS海外派遣研修について、さらにもっとこうだったらよかったと感じる点はありますか。
蔵口 研修前にフレームワークなどをしっかり学ばせてから行った方がより効果的になるのではないかと考えています。
石川 当社の社員には日本だけでない様々な文化を知り、多様性あふれる人財になってほしいので、多くの人にGTS海外派遣研修を経験してもらいたいと思います。

今後の取り組み
グローバルマインドを全社員に浸透させたい
ーーー 貴社の今後のグローバル人財育成において、どのようなことを実現していきたいですか。
蔵口 グローバルという言葉にそもそも拒否反応がある社員もいるので、全社員へのグローバルマインドの浸透を図っていきたいと思います。
当社の2024年度の人財育成方針では、全社員が学ぶべきものとして「グローバルマインド」・「DX」・「マネジメント」の3つの柱を掲げています。
グローバル人財を特別なものと思っている社員もいるかもしれないのですが、そうではなく、世界で戦っていくために必要なスタンダードな人財であるということを示し、社員が自分ごと化してくれるようにしていきたいと思います。
ーーー グローバル人財育成以外の分野で取り組んでいきたいことはありますか。
石川 人財育成のテーマとしては、組織の多様性と人財の多様性というキーワードも出てきています。中途社員や外国籍の社員が増えていますし、様々な人の様々な考え方を活かしながら仕事を変えていくことが、会社全体のビジネスモデルを変えていくという課題にも繋がるのではないでしょうか。
極端なことを言うと、人財育成を担う組織がなくなり、社員同士で自発的に、自由に創意工夫をしていける形が会社の理想形なのではないでしょうか。それが事業の成長につながっていけるよう、後押しをするのが人事部の仕事ですので、そういった仕掛けを今後は行っていきたいです。
蔵口 組織に多様な人財がいたとしても、いるだけでは活躍できないこともあると思います。多様な人財が活躍できる風土にすることで初めて、そういった人財が活きてくることを忘れてはいけないと思っています。
ーーー 今後実現したいことにおいて、アルーにはどのようなことを期待されますか。
蔵口 我々が把握しきれない人財育成の動向を教えていただきたいです。
アルーを選んだ理由
当社の視点だけでなく、抜け漏れている視点をカバーできる
ーーー アルーのことは何をきっかけに知りましたか。
蔵口 以前から海外派遣研修でお世話になっており、当時から様々な相談にのっていただいたり、研修内容も柔軟に変えていただいたりしていたので、継続してお願いをしようと思った次第です。
ーーー 貴社では、研修会社を選ぶ上でどのような点を重視していますか。
蔵口 当社の意図をヒアリングしてくださり、それを形にするアイデアをいただける会社かどうかという点が決め手です。
石川 我々が考えていることを形にするという視点に加え、我々が見落としている考え方や視点についてアドバイスいただけるかどうかを見ています。
足りない視点についてアドバイスを頂いたり、他企業がこんなことをやっているという情報を頂けたりするとありがたいと思います。
ーーー 今回の研修のパートナーとしてアルーを選んだ理由を教えてください。
蔵口 グローバルの視点だけではなく、人財育成全般に対する考えや実績があったのがポイントです。
石川 様々な場面でお世話になっているので、当社の社員の雰囲気や傾向を掴んだ上で、企画や提案に活かしていただいているとも思います。
ーーー アルーから提案を受けている際に印象に残ったことはありますか。
蔵口 インターン先の選定をお任せすることができ、助かりました。どのような企業を派遣先とするか、「アルーさんが選定した企業であれば大丈夫」とお任せしきることができました。
ーーー 他の研修会社と比べて、アルーの特徴は何だと思われますか。
蔵口 「こういう情報があります」「なにか足りない情報はありますか」と細やかに対応してくれます。要望に対してもすぐに「調べてみます」と反応してくださり、非常に頼りになる印象です。
ーーー -アルーは皆様や人事部にとってどのような存在ですか?
蔵口 特に、今回のGTS海外派遣研修に携わってくださったグローバルチームの皆様には大変感謝しています。
組織の大きさや蓄積されてきたノウハウ、実績も強みかもしれませんが、どういう方と一緒に仕事をしていくかという点を大切にしているので、今回携わってくださった皆様が非常に信頼できたというのは大きかったと思います。
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アルー営業担当からの一言