
DEIB(ディーイーアイビー)とは?4要素の意味とD&I・DEIとの違いを解説
「DEIB(ディーイーアイビー)」という新しい略語を耳にする機会が増えました。ただ、既存の「D&I」「DEI」と何が違うのか、社内で説明できる形で整理できていない方も多いのではないでしょうか。「結局Bを足しただけの言葉遊びなのでは?」「米国でDEIが後退している今、日本で推進する意味はあるのか?」——こうした疑問は、実務担当者として当然抱くものです。
本記事では、DEIBの4要素の意味や、D&I・DEIからの変遷、日本企業で注目される背景、さらには推進の失敗パターンや実務ステップについて整理します。「言葉の言い換え」で終わらせず、自社の推進フェーズに応じた次の一手を言語化できる状態を目指します。
この記事でわかること
- DEIB(ディーイーアイビー)の読み方と4要素(多様性/公平性/包摂性/所属感)の定義
- D&I→DEI→DEIBへの概念変遷と「Bが加わった本質的意味」
- 公平性(Equity)と平等(Equality)、所属感(Belonging)とエンゲージメント・心理的安全性の違い
- 米国DEIバックラッシュを踏まえた日本企業のスタンス設計論点
- DEIB推進の失敗パターン5選と回避策
- フェーズ別(0→1/1→10/10→100)の実務アクション
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この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
DEIB(ディーイーアイビー)とは
DEIB(ディーイーアイビー)は、多様性(Diversity)・公平性(Equity)・包摂性(Inclusion)・所属感(Belonging)の4語の頭文字を取った略語です。これら4つを組織づくりの一体概念として捉える考え方を指します。
従来「D&I(多様性と包摂性)」「DEI(多様性・公平性・包摂性)」と発展してきた概念に、新たに「所属感(Belonging)」が加わったのがDEIBです。単なる用語の追加ではなく、「多様な人材が集まり(D)、公平な機会が保障され(E)、意見を発信できる状態にある(I)」だけでは組織が機能しない、という現場実感から生まれた概念です。
DEIBの読み方と略語の意味
DEIBは「ディーイーアイビー」と1字ずつアルファベット読みするのが一般的です。英語圏でも「D-E-I-B」と読むのが通例で、日本語のビジネスシーンでもこの読み方が主流です。発音のしやすさから「デイブ」と呼ぶ例も一部にありますが、経営層向け資料・IR(投資家向け情報開示)資料など公式文書ではアルファベット読みが標準です。
各要素の意味は次の通りです。多様性(Diversity)は「属性・経験・価値観の多様な人材が組織に存在する状態」、公平性(Equity)は「個々の状況に応じた機会保障」、包摂性(Inclusion)は「多様な人材が発言・参画できる状態」、所属感(Belonging)は「自分がこの組織の一員だと実感できる状態」を指します。
4要素の定義早見表
DEIBの4要素は、それぞれ組織に対する「問い」の形で整理すると理解しやすくなります。
要素 | 定義 | 実務で問う視点 |
|---|---|---|
多様性が「構成」、包摂性が「参画」を対象とするのに対し、所属感は「個人の主観的な実感」に着目する点が特徴です。この主観的実感の重要性が、DEIBという新概念が生まれた背景にあります。
D&I→DEI→DEIBへの変遷
概念変遷の背景を辿ると、所属感が加わったのは組織課題の本質的な変化に応じた必然であることがわかります。
概念変遷の年表
D&IからDEIBへの発展は、およそ次のような流れで進んできました。
時期 | 概念 | 加わった要素 |
|---|---|---|
各段階は「前段階の欠落を補う」形で発展してきました。DEIまでは主に「制度・構造の整備」が焦点でしたが、DEIBは「個人の主観的実感」まで踏み込む点が本質的な違いです。
なぜBが加わったのか
所属感(Belonging)が加わった主要な理由の一つが、人的資本経営の推進です。人材を「コスト」ではなく「資本」として捉える人的資本経営では、社員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できる状態をどう作るかが問われます。
ここで浮上したのが、「制度としては包摂しているのに、当事者が実感していない」というギャップです。ダイバーシティ推進のポスターが貼られ、公平な評価制度が整っていても、実際にマイノリティ属性の社員が「浮いている」「本音を言えない」と感じていれば、パフォーマンスは引き出せません。
所属感は、この「制度と実感のギャップ」を埋める概念として登場しました。エンゲージメントサーベイで組織を測る企業が増える中、「所属感」という主観指標が組織パフォーマンスの先行指標として注目されたのも同じ文脈です。
人的資本経営について詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:【事例あり】人的資本経営とは?情報開示項目一覧と進め方・ポイント
DEIBの4要素の使い分け、所属感とエンゲージメントの違い
DEIBを推進する際、混同されやすいのが「Equity・Equality」「所属感・エンゲージメント・心理的安全性」です。この違いを整理できていないと、施策設計の方向性がぶれます。
EquityとEqualityの違い
日本語ではどちらも「公平」「平等」と訳されがちですが、DEIB推進の上では大きな差があります。
観点 | Equality(平等) | Equity(公平性) |
|---|---|---|
公平性の判断で迷う場面は多く、「特別扱いではないか」「逆差別ではないか」という懸念が出やすい領域です。判断基準としては、「機会の入口(スタート地点)を揃えるための調整は公平性、結果を強制的に揃えるのは平等の逸脱」と整理すると判断がしやすくなります。
所属感・エンゲージメント・心理的安全性の違い
所属感は、既存の組織開発概念であるエンゲージメントや心理的安全性と近接していますが、焦点が異なります。
概念 | 焦点 | 問い | 主な測定領域 |
|---|---|---|---|
3つは相互に関連しますが、所属感は「自分らしさを保ったまま所属できているか」という個人の実存的実感に踏み込む点が独自です。心理的安全性が「発言のしやすさ」というチーム機能に焦点を当てるのに対し、所属感は「自分がこの組織に居ていい存在かどうか」という受容感を問います。
心理的安全性について詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:心理的安全性とは?作り方や高める方法、ぬるま湯組織との違いについて解説
DEIBが今、日本企業で注目される背景
DEIBが日本企業で注目される背景には、外圧(制度・市場)と内圧(組織課題)の両方があります。
人的資本開示による外圧
2023年3月期以降、有価証券報告書での人的資本開示が義務化され、「多様性」「人材育成」「エンゲージメント」等の指標開示が求められるようになりました。ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)やSSBJ(日本のサステナビリティ基準委員会)による基準整備、人材版伊藤レポート2.0における「動的な人材ポートフォリオ」の提唱も、この流れを後押ししています。
これらの潮流は、DEIBを「CSR(企業の社会的責任)的な社会貢献」ではなく「経営指標」として位置づけ直す圧力になっています。開示要件を満たすだけでなく、投資家・求職者から「実質的な多様性・所属感」を評価される時代に入っています。
米国バックラッシュ以降の日本企業のスタンス
米国と日本ではDEI/DEIBの成熟度が異なり、日本でDEIB推進を止める合理的理由は乏しいのが実態です。以下、その背景と稟議・上申に使える論拠を整理します。
2023〜2024年にかけて米国では大手企業がDEIプログラムを縮小・廃止する動きが相次ぎ、「DEIバックラッシュ」と呼ばれる潮流が生まれました。この動きを受け、「DEIを推進すべきか、継続判断に迷う」という声が日本企業からも聞かれます。
しかし、日本企業の状況は米国とは前提が異なります。米国では既にDEIが定着し、施策の反動が起きているのに対し、日本ではむしろ「これから制度を整える」段階にある企業が大半です。実際、アルーが支援する日本企業でDEI/DEIB施策の縮小判断を検討している事例はほとんど確認されていません。
大切なのは、「米国の議論をそのまま輸入せず、日本企業の文脈で継続判断のロジックを組み立てる」ことです。経営層との議論では、次の3点で整理すると判断軸が明確になります。
- 採用競争力:Z世代・女性・シニア・外国籍人材の獲得に、DEIBは事実上の必要条件になりつつあります。とりわけ、ジェンダー平等(女性活躍推進)は、多くの日本企業でDEIB着手の起点になってきた領域です
- 人的資本開示要請:有価証券報告書での多様性指標開示は義務です。開示は継続的な取り組みなしに実現しません
- 離職コスト:帰属意識の低さは離職に直結し、代替採用・教育コストは可視化しづらいが甚大です
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DEIB推進のよくある失敗パターンと回避策
「推進しても形骸化するのでは」「トークニズム(象徴的起用)と批判されるのでは」——踏み出しにくさの正体は、失敗パターンへの漠然とした恐れです。ここでは5つの典型パターンと回避策を整理します。
※トークニズム:多様性をアピールするために、少数派の属性を持つ人を象徴的に登用・配置すること
失敗パターン5選
# | 失敗パターン | 起きる兆候 |
|---|---|---|
5つのパターンに共通するのは、「制度・宣言」と「現場の行動」の分断です。特に5番目の「管理職の行動変容不足」は、他4つの失敗を引き起こす根本原因になりやすい要素です。
管理職の行動変容を核にした失敗回避の方法
DEIBを形骸化させないためには、施策設計の中心に「管理職の行動変容」を据えることが効果的な回避策になります。制度・KPIをどれだけ整えても、日々の1on1やアサインメント判断で管理職の行動が変わらなければ、社員の実感は変わりません。
回避策のチェックリストとしては、以下の観点で自社の推進体制を点検できます。
- 経営メッセージが「宣言」ではなく「行動基準」まで落とし込まれているか
- KPIに数値目標だけでなく「行動指標(1on1実施率・アサイン多様性等)」が含まれているか
- マイノリティ属性の社員が「象徴」ではなく「実権のある役割」に配置されているか
- 公平性の意図(スタート地点の調整)が全社員に説明されているか
- 管理職向け研修が「知識付与」でなく「行動変容(演習+現場実践+フォロー)」まで設計されているか
「わかる」から「できる」への転換には、単発研修ではなく、演習と現場実践を往復する設計が必要です。特にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修は、知識提供だけでは行動が変わらないケースが多く、演習を反復し実践と往復させる設計が効果を発揮します。
アンコンシャスバイアスについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:アンコンシャスバイアスとは?アンコンシャスバイアスの問題点や失敗しない研修のポイントを解説
DEIBを自社で推進する手順
DEIB推進は、自社のフェーズによって打つ手が異なります。
フェーズ | 状態 | 主要アクション | 成果物 |
|---|---|---|---|
自社がどのフェーズにあるかは、「ビロンギングサーベイの結果を経営会議で議論しているか」という一問で概ね判別できます。していれば10→100、方針はあるがサーベイまでは至っていなければ1→10、方針自体が未整備なら0→1です。
ビロンギングサーベイ設問例
所属感を測る設問例を4問挙げます。5段階評価(1:全く思わない〜5:強く思う)を想定した設問です。
# | 設問例 | 測る観点 |
|---|---|---|
既存のエンゲージメントサーベイと併用する場合、上記4問を追加設問として組み込むと運用負荷を抑えられます。エンゲージメントスコアが高いのに所属感スコアが低い部門があれば、「熱意はあるが所属感は低い」というギャップが可視化され、施策の焦点が絞れます。
DEIB推進の企業事例
製造業のライン管理職層に対する「エンゲージメント向上施策」でDEIB推進の土台となる管理職の行動変容を引き出した事例を紹介します。「成功循環モデル(関係の質→思考の質→行動の質→結果の質)」に基づき、複数年をかけて1フェーズずつ管理職の行動を積み上げていくロードマップを設計したことがポイントです。
管理職の行動変容を軸にしたDEIB推進事例
規模・対象者
アルーが支援した製造業では、部長・ライン管理職(チームリーダー層)約80名を対象に、エンゲージメント向上を核としたマネジメント変革プログラムを実施しました。DEIBを「制度・宣言」で終わらせず、多様な部下一人ひとりの所属感と貢献意欲を引き出す日常マネジメントに落とし込むことが主眼です。
課題
エンゲージメント向上の重要性は管理職に浸透してきたものの、業務多忙により後回しになりがちで、研修の学びが実行に移されるかどうかはばらつきが大きいという課題がありました。人材育成の正論はわかるが、そうはいっても現場では適応できない」という理想と現実のギャップに対するモヤモヤ、「人材育成の実務多忙の中での両立をどう進めるか」「多様な部下一人ひとりに応じた向き合い方の引き出しをどう広げるか」といった実装レベルでの課題感が管理職層から挙がっていました。価値観の変容を伴う人材育成の変革は時間がかかるため、単年施策では効果が限定的だという認識が背景にありました。
実施した施策
マサチューセッツ工科大学ダニエル・キム教授の「成功循環モデル」に基づき、4年間を1サイクルとして毎年1フェーズずつアプローチする長期ロードマップを設計しました。初年度に「関係の質」(信頼を得る力・傾聴・尊敬を得る力)、翌年度に「思考の質」(関係性構築・仕事の依頼・ティーチング・フィードバック)、次年度に「行動の質」(振り返り・現状把握・問題解決・意識の課題を見直す作戦会議)、最終年度に「結果の質」へとアプローチする構成です。各年度の研修は1日×3回・1クラス20〜25名の対面形式で、講義とグループワークを往復させ、単なる知識の理解にとどまらず、現場で実践できる状態を目指した設計にしました。特に「意識の課題を見直す」フェーズでは、Z世代の傾向を踏まえて管理職自身の「あるべき」を問い直す作戦会議を設け、多様な部下との向き合い方を実務レベルで再構築する設計にしました。
成果
複数年ロードマップの継続実施により、社内のエンゲージメントスコアが3ポイント向上しました。制度や宣言だけでは動かなかった管理職の日常マネジメントに、部下との関係性構築や傾聴、仕事の依頼の再設計といった行動変容が定着し、DEIB推進の土台が組織的に整った点が成果として確認されています。
設計のポイント
特に効果的だったのは「4年で1サイクル」という長期ロードマップの明示です。DEIB・エンゲージメント向上は価値観の変容を伴うため単発研修では動きません。「関係→思考→行動→結果」の順序を守り、毎年1フェーズずつ積み上げる構造にしたことで、管理職が「今年は何を身につけ、来年はどこに進むのか」を見通せる状態を作り、学びの浸透度合いのばらつきを抑えることができました。また、Z世代の傾向を踏まえて管理職自身の「あるべき」を問い直す作戦会議を組み込んだ点も、多様な部下との関係性再構築を促す要因となりました。
弊社アルーはDEIB推進の要となる管理職の行動変容を支援する「管理職研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗研修サービス詳細:管理職研修
まとめ
DEIBは、D&I・DEIから発展した「多様性・公平性・包摂性・所属感」の一体概念です。所属感が加わったのは、制度・機会を整えても当事者の実感が伴わなければ組織パフォーマンスに繋がらない、という現場実感からの必然です。
日本企業がDEIBを推進する意義は、米国バックラッシュを冷静に整理したうえで、人的資本開示・採用競争力・離職コストの3点から語れます。推進で最も重要なのは、制度・KPIの整備と同時に、管理職の行動変容を核に据えることです。DEIウォッシュ・KPI偏重・トークニズム・逆差別批判・行動変容不足という失敗パターンは、いずれも「制度と現場の分断」から生まれます。
自社のフェーズ(0→1/1→10/10→100)に応じて、次の一手を言語化することから始めましょう。方針策定・研修設計・サーベイ導入のどこにボトルネックがあるかを見極めることが、「言葉の言い換え」で終わらせない出発点です。
よくある質問(FAQ)
Q | DEIBは何と読みますか? |
|---|---|
A | 「ディーイーアイビー」と1字ずつアルファベット読みするのが主流です。英語圏でも「D-E-I-B」と読むのが通例で、日本のビジネスシーン・経営層向け資料でもこの読み方が標準となっています。発音のしやすさから「デイブ」と呼ぶ例も一部にありますが、公式文書ではアルファベット読みを推奨します。 |
Q | 米国でDEIバックラッシュが起きているのに、日本でDEIBを進める意味はありますか? |
|---|---|
A | 米国と日本ではDEI/DEIBの成熟度が異なります。日本ではむしろ制度整備の段階にあり、加えて人的資本開示要請・採用競争激化・人材不足という文脈から、推進を止める合理的理由は乏しいのが実態です。米国の議論をそのまま輸入せず、日本企業の文脈で継続判断のロジックを組み立てることが重要です。 |
Q | 所属感(Belonging)とエンゲージメントは何が違いますか? |
|---|---|
A | エンゲージメントが「仕事・組織への熱意と貢献意欲」を測るのに対し、所属感は「自分がこの組織に属していると実感できるか」という個人の受容感を測ります。エンゲージメントが高くても所属感が低い状態はあり得ます。その場合「熱意はあるが所属感は低い」というギャップが組織課題として浮上します。 |
Q | DEIB推進で「逆差別」批判を受けないためにはどうすればいいですか? |
|---|---|
A | 公平性(Equity)の意図(スタート地点の調整であり、結果を強制的に揃えるものではない)を全社員に説明することが基本です。加えて、施策設計時に「マジョリティ属性への説明責任」を織り込み、「機会を奪う」ではなく「機会を広げる」設計であることを言語化することで、批判の芽を減らせます。 |


