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コールセンター研修の設計と進め方|失敗しない黄金比とKPI

コールセンター研修は、応対品質と離職率に直結する経営インパクトの大きい人材育成テーマです。しかし多くの現場で「座学ばかりで現場で活用できない」「研修効果を数字で説明できない」といった課題が繰り返されています。「座学とロールプレイング、OJTの配分はどう考えればよいのか」「研修に何日かければ現場で通用するのか」——現場の担当者が抱えるこうした疑問に、明確な答えを持てている企業はまだ多くありません。

本記事では、コールセンター研修の目的や手法、カリキュラム設計、効果測定、失敗パターンまでを、現場でそのまま使える具体的なレベルで解説します。

この記事でわかること

  • 座学やロールプレイング、OJTフォローの配分の考え方と使い分け
  • 新人オペレーター向け10日間モデルカリキュラムの週次スケジュール
  • 研修効果を測るKPIツリー(AHT/FCR/CS/離職率)の設計
  • 失敗する研修パターン8選と回避策
  • SV・トレーナーの育成の型
  • 生成AIを活用した応対フローとモニタリングの押さえどころ
  • 内製と外注の判断軸

この記事の監修者

落合 文四郎

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎

1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。

コールセンター研修とは

コールセンター研修とは、オペレーターやリーダー、SV(スーパーバイザー)が、顧客応対品質や生産性、定着率を継続的に高めるために設計される、階層別・段階別の育成プログラムを指します。単なる「電話応対マナー講座」ではなく、応対スキルや商品知識、システム操作、折衝力、メンタルマネジメント、指導力までを含む、複合的な人材育成体系です。

目的と位置づけ

コールセンター研修の目的は、大きく3つに分けられます。第一に応対品質の向上(顧客満足度・FCR=一次解決率の改善)、第二に生産性の向上(AHT=平均処理時間の適正化・稼働率の改善)、第三に定着率の向上(早期離職の防止)です。これら3つは相互に連動しており、たとえば応対品質が低いままだとクレーム対応で疲弊し離職につながり、離職が増えると新人比率が上がりさらに品質が落ちる、という負のスパイラルに陥ります。

コールセンター研修は単発のイベントではなく、「採用直後の導入研修 → 独り立ち後のスキルアップ研修 → リーダー・SV育成」という継続的な育成パイプラインとして設計する必要があります。

導入研修・スキルアップ研修・SV研修の3レイヤー

コールセンター研修は、階層別に3つのレイヤーで設計します。

レイヤー

対象

主な目的

期間の目安

導入研修

新人オペレーター

独り立ちできる状態を作る(応対の型・商品知識・システム操作)

1〜4週間

スキルアップ研修

独り立ち後〜ベテラン

応対品質のばらつきを減らす・上位応対(クレーム二次対応など)を担える

定期的(月1〜四半期に1回)

SV・トレーナー研修

リーダー・SV・トレーナー

モニタリング・フィードバック・コーチング力の強化

昇格時+定期フォロー

多くの現場では導入研修だけに投資が集中し、スキルアップ研修とSV研修が手薄になります。しかし応対品質や定着率の差は、独り立ち後のスキルアップ研修とSVの指導品質で決まる部分が大きいという点は重要なポイントです。

コールセンター研修で身につけるべきスキル

コールセンター研修で扱うスキルは、「応対の基礎」「商品・業務知識とシステム操作」「折衝・課題解決」の3層で整理できます。この3層を意識しないと、座学だけ・ロールプレイングだけに偏り、現場で使えないスキルセットになります。

応対の基礎スキル

第一声や名乗り、保留、クロージングといった応対の型、共感表現、傾聴、話速のコントロール、クッション言葉などが含まれます。これらは「知っている」ではなく「無意識にできる」レベルまで反復する必要があります。座学で理解しても、ロールプレイングを繰り返さないと定着しません。

商品・業務知識と社内システム操作

自社商品の仕様や料金、キャンペーン、業務フロー、CRM/CTIの操作といった、担当業務に固有の知識です。ここは座学とeラーニングでの反復が有効な領域で、テストと再テストを組み合わせて到達度を可視化します。

折衝・課題解決スキル

顧客の真の要求を引き出すヒアリング、代替案の提示、クレーム二次対応、心情理解と論点整理、社内エスカレーションの判断など、独り立ち後に伸ばしていく高次スキルです。ここが不十分なままだと「マニュアル対応しかできないオペレーター」にとどまり、応対品質スコアもFCRも改善しません。

折衝・課題解決スキルを「わかる」を「できる」まで引き上げるためには、知識のインプット(座学・eラーニング)だけでは足りず、反復訓練(ロールプレイング)と現場実践(OJT)の掛け算が不可欠です。

研修対象者別に見る内容の違い

研修は対象者ごとに、ゴールと手法が大きく異なります。同じ「コールセンター研修」という言葉で括ってしまうと、新人オペレーター向けの導入研修とSV育成の内容が混在し、どちらも中途半端になります。

新人オペレーター向け

ゴール:独り立ち(=一人でシフトに入り、標準的な問い合わせを最後まで対応できる)。

中心手法:座学(知識)+ ロールプレイング(型の習得)+ OJT(現場応対)。座学中心に振らず、ロールプレイングを厚めに配分し、OJTで現場感覚を積ませるのが原則です。座学偏重にすると「聞いてわかった」で止まり、現場で応対の第一声が出てきません。

ベテラン・リーダー向け

ゴール:応対品質のばらつき低減、上位対応(クレーム二次対応、複雑問い合わせ)を担うこと。

中心手法:録音モニタリング + フィードバック、テーマ別のロールプレイング(クレーム対応・提案応対など)、eラーニングでの知識アップデート。導入研修とは違い、既存の癖を修正する要素が強くなります。

SV・トレーナー向け

ゴール:フィードバック力・コーチング力・モニタリングコメント作成力の強化。

中心手法:集合研修 + 実際の応対録音を使ったコメントトレーニング + 1on1実践。SV研修が手薄だと、指導品質がSVの経験と勘任せになり、オペレーター育成の質がSVごとに大きくブレます。

研修の主な手法と使い分け

コールセンター研修の主要手法は、座学・ロールプレイング・OJT・eラーニングの4種です。それぞれ得意領域が異なり、単独ではなく組み合わせて使うのが原則です。

座学・ロールプレイング・OJT・eラーニングの役割

手法

得意領域

苦手領域

座学

知識のインプット、応対の型の理解、業務フローの理解

型の定着、応対の反射的な発話

ロールプレイング

応対の型・話し方・クッション言葉・クレーム対応の練習

実際の顧客の予測不能な発話への対応

OJT

実応対を通じた実践、SVからの個別フィードバック

標準化

eラーニング

商品知識・業務ルールの反復学習、テストによる到達度確認

対人スキル・応対の型

ロールプレイングについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

手法別使い分けマトリクス

学習目標別に、推奨手法を整理します。

学習目標

主

副

商品・業務知識の習得

eラーニング

座学(要点補足)

応対の型・話し方の定着

ロールプレイング

座学(型の紹介)

実応対力の獲得

OJT

ロールプレイング(事前訓練)

クレーム二次対応

ロールプレイング

座学(心情理解フレーム)

SVのフィードバック力

録音ケースを使った集合研修

1on1実践

在宅・ハイブリッド勤務下では、これに録画ロールプレイング(オペレーターが自分の応対を録画し、SVが遠隔でコメントを返す)と チャットモニタリング(SVが応対中のチャットを見ながら助言する)を組み合わせることで、対面OJTと同等の指導密度を担保できます。

OJTについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

新人オペレーター向け10日間モデルカリキュラム

新人オペレーターの導入研修は、10日間・4週間・3か月といったパターンがあります。ここでは、導入研修で広く採用されている「10日間モデル」の週次スケジュール例を紹介します。社内検討や設計の叩き台としてご活用ください。

なお本セクションで扱うCRM(Customer Relationship Management、顧客情報と応対履歴を一元管理する顧客関係管理システム)とCTI(Computer Telephony Integration、電話とコンピュータを連携させ着信情報や録音を扱う仕組み)は、コールセンターの応対業務で日常的に使う2大システムです。新人オペレーターは応対スキル習得と並行してこれらの操作習熟が求められるため、10日間の中でハンズオン枠を確保しています。

座学・ロールプレイング・OJT・フォローの配分の考え方

10日間の配分は、業種や商材の複雑さで最適解が変わります。一律の比率を示すことは避けますが、原則としては ロールプレイングを厚めに置き、座学は必要な知識を絞り込んで短くする、OJT(モニタリング陪席・折衝陪席)を必ず組み込む、独り立ち移行のためのフォロー枠を確保する、という4点を意識してください。座学に振りすぎると、独り立ち後にロールプレイング不足のツケが必ず出ます。

10日間の研修スケジュール例

日

午前

午後

1日目

オリエンテーション/事業・センターの役割理解

応対の基礎(第一声・名乗り・保留・クロージング) 座学

2日目

商品・料金・業務フロー 座学

応対の型ロールプレイング(ペアワーク)

3日目

CRM/CTI操作 座学+ハンズオン

応対の型ロールプレイング(SV講評)

4日目

商品知識テスト → 復習

応対フルスクリプトロールプレイング(録画+セルフレビュー)

5日目

クッション言葉・共感表現 座学

感情労働・メンタルセルフケア 座学+ワーク

6日目

想定問い合わせロールプレイング(基本パターン)

ロールプレイング(応用パターン)

7日目

クレーム一次対応ロールプレイング

モニタリング陪席(SV応対を聞く)

8日目

モニタリング陪席

折衝陪席(SV応対に同席)

9日目

実応対デビュー(SV立ち会い)

実応対 → 直後フィードバック

10日目

実応対(独り立ち初日)

10日間の振り返り・目標設定

設計の要点は次の5点です。

  1. 1〜4日目で「型」を作り込む:この段階で応対の型が身についていないと、ロールプレイングでもOJTでも崩れます
  2. 5日目に感情労働・メンタルケアを入れる:クレーム対応による新人オペレーターの離職や負担を軽減するための予防施策です
  3. ロールプレイングは録画+セルフレビュー+SV講評の3点セット:「やった」で終わらせず、改善サイクルを回します
  4. モニタリング陪席と折衝陪席をロールプレイングとデビューの間に挟む:いきなり応対デビューさせないようにします
  5. 10日目に必ず振り返りと目標設定:OJT移行期の挫折防止のためです

研修効果を測るKPIツリーと改善サイクル

「研修をやったが、応対品質と離職率が本当に下がっているのか」——この問いに数字で答えられなければ、経営や現場SVに投資対効果を示せません。研修効果を測定するには、KPIツリーの設計と、複数タイミングでの計測が必要です。

KPIツリーの設計

コールセンター研修のKPIは、以下の階層で設計します。

層

指標

意味

応対レベル

応対品質スコア(モニタリング評点)

応対の型・共感表現・情報の正確性

応対レベル

AHT(平均処理時間)

1件あたりの処理時間

応対レベル

FCR(一次解決率)

折り返し・再入電なしでの解決率

顧客レベル

CS(顧客満足度)・NPS

応対後アンケートの満足度・他者への推奨度

組織レベル

早期離職率(6か月/1年)

研修と現場ギャップの結果指標

組織レベル

独り立ち到達日数

研修終了から標準応対独立までの日数

なお表中のNPS(Net Promoter Score、顧客推奨度)は、「この会社(サービス)を友人・同僚に勧めたいか」を0〜10点で尋ね、推奨者比率から批判者比率を差し引いて算出する指標です。CS(顧客満足度)が「その応対に満足したか」を測るのに対し、NPSは「関係を継続・推奨したいか」というより長期的な態度を測る点で補完的に使われます。

設計の順番が重要です。まず「応対品質スコア」で個別応対の質を測り、それが「AHT・FCR」の生産性指標に反映され、最終的に「CS・NPS・離職率」に効いてくる、というツリー構造で捉えます。いきなりCSや離職率だけを追うと、原因分析ができません。

研修後・3か月後の2回測定

もう一つ大事なのが、計測タイミングを2回に分けることです。

研修直後:応対品質スコアや商品知識テストの点数、ロールプレイング評点で、研修の到達度を測る

研修3か月後:実応対のAHT・FCR・応対品質スコア・在籍率で、現場での定着度を測る

この2回測定によって、「研修では成績が良かったが3か月後に劣化する層」「研修では平均だったが3か月後に伸びる層」といったパターンが見え、次期研修の改善ポイントが特定できます。「研修を実施したものの、本当に応対品質の向上や離職率の低下につながっているのか」という懸念に対しては、この2回測定を制度化することが有効な打ち手になります。

研修効果測定について詳しくは以下の記事をご参照ください。

失敗する研修パターンと回避策

コールセンター研修が「やった気」で終わってしまう典型パターンを、兆候・回避策とともに整理します。

失敗パターン

兆候

回避策

座学偏重・ロールプレイング不足

「知っている」のに現場で第一声が出ない

座学を短くし、ロールプレイングを厚めに確保

ロールプレイングが「読み合わせ」で終わる

ロールプレイング講評が「良かった/悪かった」の感想レベル

録画+セルフレビュー+SV講評の3点セット化

OJTが「放置」になる

SVが自分の応対に忙しく新人オペレーターを見られない

OJT期間はSVの応対件数を減らす前提でシフト設計

効果測定が受講後アンケートだけ

「満足度が高い」で終わり、現場成果と接続していない

KPIツリーを設計し研修後・3か月後の2回測定

クレーム対応が「心構え論」で終わる

ロールプレイングでクレーム二次対応の型が身についていない

二次対応スクリプトと心情理解フレームを用意しロールプレイングで反復

SV・トレーナー育成が抜けている

指導品質がSVごとにばらつく

SV向けフィードバック・コーチング研修を年次で組み込む

OJT移行期のフォローがない

独り立ち後1〜3か月で早期離職が発生

独り立ち後1週間・1か月・3か月の面談を制度化

生成AI活用が現場運用と噛み合わない

生成AI応対支援・生成AIモニタリングを導入したが、オペレーターやSVが使いこなせず形骸化

AIの出力の見方・修正判断・限界の理解を研修に組み込み、AIと人の役割分担を明文化

「OJT移行期の失敗」に関しては、研修から独り立ちまでのオンボーディング設計を、研修の一部として組み込む発想が必要です。また「生成AI活用のミスマッチ」は、生成AIを導入するセンターが増えたことで新たに顕在化してきた失敗パターンです。

SV・トレーナーをどう育てるか

SVの指導品質が高いセンターは、オペレーターの成長速度・応対品質・定着率のすべてが安定します。逆にSVの指導が感覚で行われている現場では、オペレーターの育ちがSVごとに大きくばらつきます。

必要な3つの力

SV・トレーナーに必要な力は、大きく3つです。

フィードバック力:応対を聞いて、良い点・改善点を、具体的な事実に基づいて言語化できる力です。「なんとなく良かった」ではなく「開始20秒の共感表現が顧客の話速を落ち着かせた」といった粒度で言えるかどうかがポイントです。

コーチング力:答えを教えるのではなく、オペレーター自身に気づかせて次の行動を決めさせる力です。ティーチングとコーチングを使い分けられるかが、育成の質を左右します。

モニタリングコメント作成力:録音を聞いてコメントを残す際に、オペレーターが読んで納得でき、次のアクションが取れる文章にできる力です。ここが弱いと、モニタリング制度自体が形骸化します。

フィードバックについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

育成の進め方

SV育成は、集合研修だけでは定着しません。「集合研修で型を学ぶ → 実際の録音を使ってコメントを書く演習を月次で回す → 1on1で上位SVからフィードバックをもらう」という反復サイクルが必要です。

生成AIを活用した応対フローとモニタリングの押さえどころ

近年、コールセンターでは生成AIを活用した応対支援(オペレーターへのリアルタイムなFAQサジェスト・要約・スクリプト提案など)や、生成AIを用いた応対モニタリング(録音の自動文字起こしと評価コメント下書きなど)の導入が進んでいます。これらは応対品質の底上げとSVの工数削減に有効な一方、現場の運用と噛み合わないまま導入して形骸化するケースも出始めています。研修設計の観点で押さえるべき論点を整理します。

生成AI応対支援を研修に組み込む論点

生成AIによる応対支援を導入する場合、オペレーターは「AIのサジェストをそのまま読み上げる」のではなく、「サジェストを踏まえて自分の言葉で応対する」ことが求められます。ここで押さえるべきは次の3点です。

第一に、AIのサジェストが顧客の実際のニーズと合っているかを判断する目を養うことです。AIは過去の類似ケースからサジェストを出しますが、目の前の顧客の状況とズレていることは珍しくありません。第二に、サジェストをそのまま読み上げると顧客に違和感を与える場面(高齢者対応・クレーム対応など)を認識できることです。第三に、AIサジェストに引っ張られて自分の傾聴が疎かにならないよう、AI活用と傾聴を両立させる姿勢を持てることです。

これらは座学だけでは身につかないため、AIサジェストを表示した状態でのロールプレイングを組み込むことが必要になります。

生成AIモニタリングを運用する論点

生成AIによる応対モニタリング(自動文字起こし+評価コメント下書き)を導入する場合、SV側の運用設計が重要になります。AIが自動生成した評価コメントをそのままオペレーターにフィードバックするのではなく、SVが最終的に加筆・修正して人の言葉として届けることが原則です。AI生成コメントには、応対の背景文脈(顧客の口調・オペレーターの体調・当日のセンター状況など)が反映されないためです。

SV研修には、AI生成コメントの読み方・修正判断・オペレーターへの伝え方を組み込むことが望ましい論点になります。

コールセンター研修の内製と外注の判断基準

判断軸と使い分け

判断軸

内製に向く

外注に向く

業務知識・商品知識の範囲

自社固有・複雑・頻繁に更新

汎用スキル(応対マナー・傾聴・クレーム対応)

SV・トレーナーの育成

指導できるSVが揃っている

SV自身の育成が課題

研修設計ノウハウ

過去のカリキュラム資産がある

ゼロから設計する必要がある

効果測定の設計

KPIツリーの運用実績がある

効果測定の設計から支援が必要

拠点数・規模

単一拠点・少人数

複数拠点で品質を揃えたい

原則として、商品知識・業務フロー・システム操作は内製、応対の基礎スキル・クレーム対応・SV育成・研修設計・効果測定は外注または併用が向いています。

研修の内製化について詳しくは以下の記事をご参照ください。

併用型のすすめ

現実的には、多くのセンターには 内製+外注の併用型が最適です。たとえば、「商品知識と業務フローは内製、応対の型とロールプレイングは外注パッケージ、SV育成とKPI設計は外注支援」といった組み合わせです。この設計にすると、自社固有の知識は自社の資産のまま、汎用スキルと設計ノウハウは外部の知見で補えるため、投資対効果が最も高くなります。

コールセンター研修の成功事例

大手情報通信会社のコールセンターマネジャー層に対して、マネジメントの基本理解 → 自センターの問題解決実践 → ダイバーシティマネジメントの3セッションを実践期間を挟んで組み立てた事例を紹介します。

大手情報通信会社におけるコールセンターマネジャー育成事例

規模・対象者

アルーが支援した大手情報通信会社では、コールセンターマネジャー層を対象に、「担当センターの目標に対し、経営資源を有効活用し、部下育成とチームマネジメントを通じて期待される成果をあげる」ことを期待役割とした育成プログラムを設計しました。

課題

現場のマネジャーはプレイヤーからの登用が多く、これまで見よう見まねでマネジメントを行ってきたケースが少なくありませんでした。会社としてのマネジメント観・期待役割が明文化されておらず、「何が良いマネジメントか」の基準がマネジャーごとにばらつく状態でした。加えて、目の前のインシデント対応に追われ、センターの根本課題(業績指数・組織力の底上げ)に踏み込めていないという課題もありました。

実施した施策

セッション①を2日間実施し、1日目にマネジメントベーシックプログラム(管理職の役割認識、マネジメント活動の原理原則、リーダーシップの発揮)、2日目に問題解決ワークショップ(問題明確化・原因分析・対策立案の5ステップ)を組み込みました。その後、数か月の実践期間を設け、自センターの業績指数を対象とした問題解決プランを現場で回してもらいました。セッション②では、実践経過の成果発表(グループ内での相互フィードバック・全体発表)と、ダイバーシティマネジメントプログラム(多様な人材のマネジメント・ケーススタディ)を1.5日で実施し、今後のアクションプラン作成まで落とし込みました。マネジメントの型を単に座学で伝えるのではなく、実践 → 成果発表 → 相互学習のサイクルで身につけてもらう設計にしたことが最大の特徴です。

成果

受講者からは「これまでは見よう見まねでマネジメントをしてきたが、マネジメントの基本についての理解が深まった」「実践期間においてチームの課題解決に取り組んだことで、目の前のインシデントに追われるだけではなく、根本的な問題に対処する必要性という気づきを得た」「メンバーの多様性を受け入れることと、チームとしての一体感や帰属意識を醸成することは両立できるイメージが湧いた」という声が挙がりました。会社としてのマネジメントの型を示すことで、マネジャーの期待役割を理解した上で、「何が良いマネジメントか」の基準をすり合わせることができました。

設計のポイント

最も効果的だった設計は、セッション①とセッション②の間に実践期間を挟むことで、研修を「学びの場」で終わらせないようにしたことです。マネジメント研修は座学だけで終わると「わかった気」で現場に戻り、行動が変わりません。実践期間を挟むことで、目の前のインシデント対応にとらわれていた視野を、センターの根本課題へと向ける契機になりました。

まとめ

コールセンター研修の成否は、「座学中心・場当たり型」から「KPI連動・行動変容型」に設計を切り替えられるかどうかで決まります。ポイントは次の5つです。

  1. 座学は絞り込み、ロールプレイングを厚めに、OJTとフォローも一定量確保する配分で、10日間モデルの週次スケジュールに落とし込む
  2. 応対品質スコア → AHT・FCR → CS・NPS・離職率 のKPIツリーを設計し、研修後と3か月後の2回測定で改善サイクルを回す
  3. 「わかる」ではなく「できる」まで、録画+セルフレビュー+SV講評の3点セットでロールプレイングを反復する
  4. SV・トレーナー自身のフィードバック力・コーチング力・モニタリングコメント力を計画的に伸ばす
  5. OJT移行期のオンボーディング(独り立ち後1週間・1か月・3か月の面談)を育成施策の一部として設計する

これらを一度に全部やろうとせず、自社のセンターで最も弱い1〜2箇所から着手することをおすすめします。研修は「単発イベント」ではなく「継続的な育成パイプライン」として設計するもの、という発想の転換が第一歩です。

よくある質問(FAQ)

Q

コールセンターの新人オペレーター研修は何日かければ十分ですか?

A

業務の複雑さで大きく変わりますが、汎用的な応対業務であれば 10日間が一つの基準です。金融・通信など商材が複雑な場合は3〜4週間、シンプルな注文受付なら5〜7日といった調整が必要です。日数そのものよりも、座学・ロールプレイング・OJT・フォローの配分と、独り立ち到達日数のKPIで管理することをおすすめします。

Q

ロールプレイングは何本くらいやれば現場で通用しますか?

A

目安は1つの応対パターンにつき10〜20本、全パターン合計で80〜100本です。「わかる」を「できる」に変えるには、頭で理解した型を反射的に発話できるレベルまで反復する必要があります。ただし本数を追うのではなく、録画+セルフレビュー+SV講評のサイクルを1本ずつ丁寧に回すことが定着の鍵です。

Q

研修効果を経営に説明するには、どの数字を出せばよいですか?

A

応対品質スコア・独り立ち到達日数・6か月離職率・CS(顧客満足度)の4つを、研修導入前後で比較するのが基本です。AHT(平均処理時間)とFCR(一次解決率)は生産性の中間指標として補足で示します。単発の受講後アンケートの満足度だけを出しても経営には響かないため、必ず現場成果と接続した指標を用意してください。

Q

在宅・ハイブリッド勤務のオペレーターにも同じ研修設計で通用しますか?

A

基本設計は同じで問題ありませんが、OJTとモニタリングの部分だけ工夫が必要です。具体的には、録画ロールプレイング(自分の応対を録画してSVが遠隔で講評)、チャットモニタリング(応対中のチャットでSVが助言)、独り立ち後の1on1面談を対面より高頻度(週1回など)で組む、といった調整で対面と同等の指導密度を担保できます。

アルー株式会社
アルー株式会社
20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。

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