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アサーティブコミュニケーション研修とは?研修会社の選び方を解説

アサーティブコミュニケーション研修の導入を検討する人事担当者にとって、最も判断に迷うのが「どの研修会社に依頼して、どの形式で、どの階層に実施すべきか」という判断ではないでしょうか。ネットで検索すると数十社のサービスがヒットしますが、提示されている「DESC法」や「Iメッセージ」といった手法名はどこも共通しているため、一見すると違いが見えづらいのが実態です。

「アサーティブコミュニケーション研修を1日受けただけで本当に職場の人間関係が変わるのか?」「手法を教えるだけなら、どの研修会社を選んでも同じなのでは?」と感じている人事担当者は少なくないでしょう。さらに「言いにくいことを言えない原因は、個人のスキル不足だけでなく、組織風土や上司側のマネジメントにあるのでは?」という本質的な懸念の声も少なくありません。

そこで本記事では、アサーティブコミュニケーション研修を成功させる設計のコツ、研修会社の選び方を「階層×形式×到達ゴール」の3軸に整理し、そのまま稟議書に転記できるレベルまで具体的に解説します。

この記事でわかること

  • アサーティブコミュニケーション研修の選定軸(対象階層×形式×到達ゴール)
  • 研修形式別(公開講座・講師派遣・オンライン・eラーニング)の費用相場と使い分け
  • 新人・中堅・管理職それぞれの階層別カリキュラム設計の違い
  • 研修が形骸化する3つの落とし穴と、行動変容まで導く設計の打ち手
  • 効果測定のKPI設計と、稟議に使える論拠の作り方

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この記事の監修者

落合 文四郎

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎

1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。

アサーティブコミュニケーション研修とは——目的と注目される背景

アサーティブコミュニケーション研修は、自分の意見や要望を、相手に配慮しながら率直に伝えるスキルを習得する研修です。1950年代に心理学者ウォルピが行動療法の中で提唱した考え方をルーツとし、現在は職場の対話スキル向上や人間関係の円滑化を目的とした定番の施策として広く活用されています。
アサーティブコミュニケーションについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

🔗ブログ記事:アサーティブコミュニケーションとは?職場での具体例やデメリットを解説

研修の定義と狙い

研修の真の狙いは、「自分の言いたいことを我慢する」でも「相手に意見を押し付ける」でもない「第三の伝え方」を身につけることにあります。具体的には、相手の立場や状況に配慮したうえで、自分の要望を率直に伝える「自他尊重」のスタンスを行動レベルで定着させます。

そもそも職場で「言いにくいことを言えない」場面が発生するのは、個人のマインドだけが原因ではなく、「適切な伝え方の選択肢(型)を持っていないこと」が大きな要因です。研修内の演習でアサーティブな伝え方を繰り返し練習して型を学び、現場の咄嗟の場面でも適切な表現を選択できる状態を目指します。

たとえば部下に締め切り超過を指摘する場面では、感情的に相手を責める(攻撃的/アグレッシブ)でも強く言えず黙認する(受け身/パッシブ)でもなく、アサーティブ(事実→影響→要望→合意の順で伝える)の型を使うことで、関係性を損なわずに業務改善を促すことができます。こうした「型」を演習を通じて習得することが研修の中核となります。

注目される背景

アサーティブコミュニケーション研修が近年注目される背景には、主に3つの組織課題があります。第一に、ハラスメント防止と心理的安全性の両立が経営テーマとなり、「言うべきことを言えない/言いすぎてしまう」の二者択一ではなく、その中間にある「適切な主張」の解が求められていることです。第二に、リモートワークや非同期コミュニケーションの普及により、テキスト中心のコミュニケーションが増え、より率直で、かつ誤解を生みにくい丁寧な伝え方の重要性が増したことです。第三に、価値観の多様化により「指示の背景や意図が納得できないと動けない」という傾向を持つ若手が増えており、上司側にも高圧的にならない丁寧な説明・対話スキルが求められるようになっています。

これらの背景は、研修の受講者が新入社員だけでなく、中堅・管理職へと広がっている理由でもあります。「部下が指示を聞いてくれない」「上司に意見を言えない」「同僚との連携でストレスがたまる」といった階層横断の課題に対し、共通言語としてのアサーティブを導入する企業が増えています。

研修で扱う代表的な手法と3つのコミュニケーションタイプ

研修の中核は、自分のコミュニケーションタイプを認識したうえで、アサーティブな伝え方の「型」を演習で体得することです。研修会社による違いは、扱う手法そのものではなく、どこまで深く演習を組み込んでいるかにあります。

3つのコミュニケーションタイプ

研修ではまず、自分の伝え方の傾向を3タイプで認識します。これは「自分はどのタイプか」を自覚することが行動変容の起点になるためです。

タイプ

特徴

典型的な場面

パッシブ(受け身型)

自分の意見を抑え、相手に合わせる

「忙しいですが大丈夫です」と引き受けて残業

アグレッシブ

(攻撃型)

自分の意見を一方的に押し付ける

「何度言えばわかるの?」と感情的に指摘

アサーティブ

(自他尊重型)

相手に配慮しつつ自分の意見を率直に伝える

「今週は難しいので、来週なら対応できます」と代替案を提示

多くの受講者は「自分は普段こうしているが、特定の相手や場面では別のタイプになる」と気づきます。たとえば部下には攻撃的になりがちでも上司には受け身になる、といった場面依存の傾向を可視化することが研修の出発点です。

DESC法とIメッセージ

アサーティブな伝え方の代表的な型がDESC法とIメッセージです。研修ではこの2つを軸に、ロールプレイで繰り返し練習します。

DESC法は伝える内容を4ステップに分解する型です。

ステップ

内容

例(部下の報告遅延を指摘する場面)

D: Describe(描写)

客観的事実を述べる

「昨日の進捗報告が予定より2日遅れたね」

E: Express(表現)

自分の気持ちや影響を伝える

「クライアントへの返信が遅れて、私も焦った」

S: Suggest(提案)

具体的な要望を伝える

「次回から遅れそうな時は前日に一声かけてほしい」

C: Consequence(結果)

提案が受け入れられた/されない場合の結果

「そうすれば私も他のタスクを調整できて、クライアントへの報告を優先できる」

Iメッセージは主語を「あなた」ではなく「私」にすることで、相手を責めずに自分の感情や要望を伝える型です。「(あなたは)いつも報告が遅い」ではなく「(私は)報告が遅れると不安になる」と伝えることで、相手の防衛反応を引き出さずに対話を続けられます。

研修選定の際は、これらの手法を「講義で説明するだけか」「ロールプレイでどこまで反復させるか」を確認することが重要です。手法名はどの研修会社も同じですが、演習の濃度で定着度が大きく変わります。

研修選定の3つの軸——対象階層×形式×到達ゴール

研修会社を比較する際、価格や知名度だけで選ぶと「受講後に行動が変わらない」結果になりがちです。稟議に使える論拠を作るには、「誰に・どの形式で・どこまでの行動変容を狙うか」の3軸で整理することが有効です。

軸1: 対象階層

「全社員一律で実施する」か「特定階層に絞る」かで、研修の重点テーマが変わります。新入社員には「自分の意見を率直に伝える基礎」を、中堅社員には「他部署や年上の同僚との対話」を、管理職には「部下指導と上位層への提言」を重点に置きます。一律実施はメッセージが薄まり失敗リスクが高いため、最初は1階層に絞って成功事例を作るのが現実的です。

軸2: 実施形式

公開講座・講師派遣・オンライン・eラーニングの4形式があり、それぞれ単価やカスタマイズ性、行動変容の見込みが異なります。選定時のポイントは「自社の課題が標準的な内容で対応できるか、固有事例での演習が必要か」です。固有事例での演習が必要なら講師派遣、基礎習得ならeラーニングと公開講座の組み合わせが選択肢になります。

軸3: 到達ゴール

「知識として理解する」「研修内でできる」「職場で行動が変わる」のどこをゴールにするかで、設計の厚みが変わります。知識として理解するだけなら半日のeラーニングで十分ですが、「研修内でできる」「職場で行動が変わる」レベルを狙うなら集合研修+事後フォロー+上司巻き込みの3点セットが必要です。稟議では「なぜそのレベルを目指すか」を経営課題と紐づけて説明できる状態を作ります。

3軸の選定チェックリスト

研修選定時に以下のチェックリストを稟議資料に添付すると、選定根拠が明確になります。

  • 対象階層は1階層に絞られているか(全社一律ではないか)
  • 階層ごとの重点テーマが言語化できているか
  • 実施形式の選定理由が「課題の特性」から説明できるか
  • 到達ゴールが行動レベルで定義されているか
  • ゴールを測定する指標(KPI)が事前に決まっているか

このチェックリストを満たすと、研修会社の選定が「価格比較」から「設計比較」に変わり、形骸化リスクを下げられます。

研修形式の比較——公開講座・講師派遣・オンライン・eラーニングの使い分け

研修形式は単価とカスタマイズ性のトレードオフで選びます。階層や人数、到達ゴールに応じて、複数の形式を組み合わせるブレンディッド設計が現実的です。

形式別の比較表

形式

単価の目安(1人あたり)

1日あたり費用の目安

カスタマイズ性

行動変容の見込み

向いている

ケース

公開講座

3〜5万円

低(標準カリキュラム)

少人数(1〜10名)・基礎習得

講師派遣

1人あたり1〜3万円

50〜100万円

高(自社事例で演習設計)

20名以上・固有課題への対応

オンライン(ライブ型)

講師派遣と同様

50〜100万円

拠点分散・全国一律実施

eラーニング

月額数千円〜/1人

低〜中

知識習得・事前事後学習

費用相場の目安

費用は「研修会社の実績・信頼性」「講師の経験値」「演習設計の濃度」で大きく変わります。アサーティブコミュニケーション研修の場合、半日(4時間)〜1日(8時間)の集合研修が標準で、講師派遣型・オンライン(ライブ型)ともに1日50〜100万円が目安です。これに加えて、教材費や事前事後アンケート費用、フォロー研修の設計費などの付帯費用が発生します。
費用対効果を高めるには、「集合研修でスキルを習得→eラーニングで復習→3か月後にフォロー研修で実践共有」というブレンディッド設計が有効です。1日完結の集合研修だけよりも、定着度が大きく上がります。
どの形式にするか迷う場合、以下のフローで判断します。

  • 受講者が4名未満の場合:公開講座(派遣型は費用対効果が低い)

  • 受講者が20名以上で、自社の固有事例を用いて演習したい場合:講師派遣

  • 受講者が各地に分散している場合:オンライン(ライブ型・講師派遣と同等の費用感)

  • 知識習得が目的:eラーニングで基礎、必要に応じて集合研修

  • 行動変容まで狙う: 集合研修+eラーニング+フォロー研修のブレンディッド

弊社アルーは行動変容まで狙ったアサーティブコミュニケーション研修を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。

🔗研修サービス詳細:アサーティブコミュニケーション研修

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階層別カリキュラム設計の違い

「アサーティブコミュニケーション」という同じ研修テーマでも、対象階層によって扱う重点が大きく変わります。階層を間違えると「内容が自分の課題と合わない」と感じられ、研修満足度が下がり行動変容にもつながりません。

新入社員向け: 上司・先輩との対話の基礎

新入社員向けの研修では、「一緒に働きたいと思われる聞き方・話し方」を重点とします。具体的には、能動的に「聴く」スキル(相手がもっと話したくなる態度)と、積極的に話しかけるスキル(報連相の質を上げる)を2軸で扱います。

新入社員は職場の上下関係に戸惑い、ノンアサーティブ(受け身型)に傾きがちです。「わからないことを聞けない」「困っていても言い出せない」という状態を、心理的安全性の理解と話しかけ方の型で乗り越えさせます。

新入社員向けの標準的なカリキュラム(4時間〜半日):

  • 良い関係性を築くための心構え(I'm OK, You're OK)
  • 相手がもっと話したくなる聴き方(能動的傾聴)
  • 良い仕事を引き寄せる話しかけ方(報連相の型)
  • 行動指針の作成

ここでDESC法を本格的に扱うかは議論が分かれます。新入社員段階の研修では、まず「話しかけられる」状態を作ることを優先し、DESC法は2年目以降のフォロー研修で扱うように設計すると現場感に合います。

中堅社員向け: 他部署・年上同僚との対話

中堅社員向けの研修では、「相手の文脈を理解したうえで自分の意見を伝える」スキルの習得を中心に据えます。他部署との調整、年上の同僚との協働、後輩への指導など、立場や利害が異なる相手と対話する場面が増えるためです。

重点テーマは、相手のコミュニケーションスタイル(ソーシャルスタイル理論など)を理解する力と、自分の要望を「リクエスト」として明確に伝える力です。中堅社員はノンアサーティブとアグレッシブのどちらか一方に振れやすく、「言わないで溜め込む」か「感情的にぶつかる」かの二択になりがちです。

中堅社員向けの標準的なカリキュラム(1日):

  • 自ら周囲と良い関係性を築く必要性の理解
  • 相手の文脈(立場・目的・考え)を考える
  • 相手のコミュニケーションスタイルを知り、合わせて伝える
  • 自分の意見を「リクエスト」として明確化する
  • 相手に配慮しながら自分の意見を伝える(DESC法の本格演習)

管理職向け: 部下指導と上位方針の咀嚼

管理職向けの研修では、「部下のモチベーションを下げずに改善を要求する」「上位方針を咀嚼して部下に伝える」ことを目的にします。管理職はアグレッシブ(攻撃型)に傾きやすく、「何度言えばわかるのか」「自分で考えろ」といった伝え方で部下を萎縮させるケースが頻発します。
重点テーマは、部下との信頼関係構築の土台(心理的安全性)と、フィードバックの型(事実→影響→要望)、上位者への提言(建設的提案)です。管理職研修では、コーチングやティーチングとの組み合わせで扱うことが多くなります。
管理職向けの標準的なカリキュラム(1日〜2日):

  • 管理職の期待役割の理解
  • 心理的安全性を保つコミュニケーションの土台
  • 部下への期待の伝え方
  • フィードバック(捉えて伝える)とティーチング(教える)の使い分け
  • 上司を巻き込むスキル / メンバーを支援するスキル

部下指導について詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:部下指導で大切なことや指導方法を解説!管理職の部下指導力を育成しよう

研修の失敗パターンと行動変容に導く設計方法

「研修を実施しても現場で行動が変わらない」という悩みは、アサーティブコミュニケーション研修で最も多い課題です。原因は受講者のスキル不足だけではなく、設計と運用にあることがほとんどです。

「結局アサーティブコミュニケーション研修って、1日受けただけで本当に職場の人間関係が変わるのか?」という疑問は当然のもので、1日の集合研修だけで行動を変えるのは困難です。形骸化を防ぐには、原因を「個人スキル論」に閉じず、上司側・組織風土側の阻害要因まで構造化して対処する必要があります。

3つの落とし穴

形骸化の原因を個人要因・上司要因・組織要因の3層で整理します。

原因

現場で見える兆候

対策

個人要因

「わかる」が「できる」にならない

研修直後は前向きだが、1週間で元の伝え方に戻る

数多くのシチュエーションを想定した反復演習で「型」を体に染み込ませる

上司要因

上司がアグレッシブで、部下のアサーティブな伝え方を受け止めない

部下が要望を伝えても「ごちゃごちゃ言わずにやれ」と返される

上司にも同じ研修を受講させるか、事前に運用ガイドを配布

組織要因

「言いにくいことは言わない」が組織文化として根付いている

会議で誰も発言せず、上司の意向に流される

心理的安全性の文化醸成施策と組み合わせる

最も見落とされやすいのが上司要因です。新入社員がアサーティブな伝え方を学んでも、上司が「ごちゃごちゃ言わずに動け」というスタンスだと、学んだスキルを使う場面で否定される体験をすることになり、結果としてアサーティブコミュニケーションは身につきません。

「言いにくいことを言えない原因は個人のスキル不足ではなく、組織風土や上司側にあるのでは?」という疑問は、多くのケースで正しいと言えます。だからこそ、研修を企画する段階で「受講者の上司に何を期待するか」を設計に組み込むことが必須です。

行動変容を生む設計

行動変容を狙う研修設計は、「集合研修だけで完結させない」ことがポイントです。具体的な設計の打ち手として、以下の3点をセットで組み込みます。

打ち手1: 演習の量を増やす

「わかる」を「できる」に変えるには、ロールプレイの量が決定的です。1〜2回の演習では咄嗟の場面で使えないため、複数のシチュエーション(部下や上司、他部署、顧客)で繰り返しDESC法を使う設計にします。

打ち手2: 上司巻き込み

研修前に上司にメッセージを送り、「部下が研修で何を学ぶか」「研修後に何を実践しようとするか」を共有します。研修後1か月の1on1でアサーティブな伝え方が実践できているかを上司から確認する仕組みを作ると、現場での試行が促されます。

打ち手3: フォロー研修(3か月後)

研修終了後3か月のタイミングで、実践事例を共有する2時間のフォロー研修を組み込みます。「実際に使ってみてどうだったか」を持ち寄ることで、習得した型が定着し、組織内の共通言語になります。

研修効果を見える化するKPI設計と費用相場

「研修効果の測定方法を上司や経営に説明する根拠が持てない」という悩みは、人事担当者にとって稟議を通す最大の難所です。アサーティブコミュニケーション研修は対人スキル研修のため定量化が難しいと思われがちですが、KPI設計の型を持っておくと稟議書に転記しやすくなります。

KPI設計の3層

カークパトリックの4段階評価モデルに沿って、3層のKPIを設計します。

測定対象

具体的な指標

測定タイミング

反応(Level 1)

研修の満足度・有用感

5段階評価で4以上の比率 / NPS(ネットプロモータースコア)

研修直後

学習(Level 2)

知識・スキルの習得度

DESC法の理解度テスト / 行動イメージのアンケート

研修直後

行動(Level 3)

職場での実践度

自己評価/上司評価/部下評価の3者測定 / 1on1での具体的事例

研修3か月後

ROI(Level 4)まで測定できれば理想ですが、対人スキル研修では因果関係の特定が難しいため、まずはLevel 3までを確実に測ることを目指します。

2回測定の運用

最も実装しやすく説得力が出るのが、「研修終了直後」と「3か月後」の2回測定です。直後は満足度と理解度を、3か月後は職場での実践度を測ります。

事前事後アンケートのテンプレート例

項目

事前

事後

3か月後

自分の意見を率直に伝えられる(5段階)

相手に配慮した伝え方ができる(5段階)

直近1週間で実践した具体的事例

自由記述

上司から見た受講者の変化

(別途上司に質問)

自由記述

3か月後測定では、受講者本人の自己評価だけでなく、上司にも「研修前と比べて変化を感じる行動」を聞くことで、客観性を担保します。

稟議書ロジック

稟議に使える論拠は、「課題→打ち手→効果測定」の3点構造で組み立てます。

構造

記載内容(例)

課題

中堅社員の部署間調整で摩擦が頻発、複数人が「上司に意見を言えない」と1on1で発言

打ち手

アサーティブコミュニケーション研修(1日・講師派遣)+3か月後フォロー研修(2時間)

効果測定

事前事後アンケート(Level 1-2)+3か月後の上司評価(Level 3)+1on1での実践事例共有

費用

講師派遣1日80万円+フォロー研修40万円=120万円(受講者25名想定で1人あたり4.8万円)

このフォーマットで稟議書を組むと、「なぜこの研修か」「どう効果を確認するか」が明確になり、決裁者の不安を和らげることができます。
研修効果測定について詳しくは以下の記事をご参照ください。

🔗関連記事:研修効果測定のやり方とは?4段階評価モデルや具体的な指標を解説
🔗おすすめ資料:アサーティブコミュニケーション100本ノック研修サービス資料

アサーティブコミュニケーション研修の導入事例

医療機器メーカーにおける中堅社員向け公募型プログラム

規模・対象者

アルーが支援した医療機器メーカー(5000名以上規模)では、自律型人材育成の一環として、中堅社員を対象に公募型のアサーティブコミュニケーション研修を導入しました。

課題

同社の中堅社員には、「自分の中でコミュニケーションを完結し、他者と積極的に関わろうとしない」「相手の立場や都合に配慮せず、想定外の反応を自分本位に解釈する」「伝えづらいことを察してもらおうとする」といった傾向がありました。部署間連携や後輩指導の場面で、こうしたコミュニケーションスタイルが組織の協働を阻害していたのです。

実施した施策

1日完結の集合研修を組み立てました。学習内容を以下の5つです。

  • 自ら周囲と良い関係性を築く必要性の理解
  • 相手の文脈(立場・目的・考え)を考える
  • ソーシャルスタイル理論に基づき相手のコミュニケーションスタイルに合わせる
  • 自分の意見を「リクエスト」として明確化する
  • 相手に配慮しながら自分の意見を伝える

それぞれの学びの最後にペアワークで実践演習を行い、職場で起こりがちな具体的なシチュエーションを題材に繰り返し演習を行いました。最後にコミュニケーションの作戦を練る時間を設け、個人ごとの行動指針を作成しました。

成果

受講者からは「自分本位の解釈をしていたことに気づいた」「相手の文脈を考えるという発想が新鮮だった」「伝えづらいことを率直にリクエストとして伝える方法を学べた」というコメントが集まりました。公募型としたことで参加意欲の高い社員が集まり、研修後の実践報告会でも積極的な事例共有が行われました。

設計のポイント

「わかる」を「できる」に変えるため、講義時間を最小限にし、ペアワーク中心の進行にしたことです。「研修前の自分のコミュニケーション」と「研修後に目指す状態」を最初に言語化してもらい、ゴール意識を持って演習に取り組ませたこともポイントでした。公募型として参加動機の高い層に絞ることで、組織内のオピニオンリーダーから先に行動変容を起こし、波及効果も狙っています。

まとめ

アサーティブコミュニケーション研修の選定は、「対象階層×形式×到達ゴール」の3軸で整理することで、価格だけではなく設計内容による比較を行うことができます。

選定を進める際の手順は以下の通りです。第一に、自社の課題を1階層に絞ること(全社一律ではなく、新人・中堅・管理職のどこに重点を置くかを決める)。第二に、到達ゴールを「理解する」・「演習でできる」・「職場で行動が変わる」のどこに置くかを決めることです。第三に、形式を単発の集合研修ではなく、事前学習+集合研修+事後フォローのブレンディッド設計で組むことです。

失敗を防ぐには、個人のスキルに原因を求めるのではなく、上司側の受け止め体制と組織風土の阻害要因まで含めて設計することが鍵です。研修効果は「研修終了直後」と「3か月後」の2回測定で可視化し、稟議では「課題→打ち手→効果測定」の3点構造で論拠を整理します。

研修テーマの選定だけでなく、階層別研修体系のどこにアサーティブコミュニケーション研修を組み込むか、上位スキル(部下指導や1on1、コーチング)とどう連動させるかまで設計できると、人材育成全体の投資対効果が大きく上がります。

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よくある質問(FAQ)

Q

アサーティブコミュニケーション研修は1日で本当に効果が出ますか?

A

1日の集合研修だけで職場の行動が変わると期待するのは現実的ではありません。「研修で型を習得→eラーニングで復習→3か月後にフォロー研修で実践共有」というブレンディッド設計と、上司の巻き込みをセットで組むことで、行動変容が起こりやすくなります。集合研修は「型を体験する場」と位置づけ、定着は職場での反復と上司の声かけで作る設計が現実的です。

Q

公開講座と講師派遣はどちらを選ぶべきですか?

A

受講者数と課題の特性で判断します。5名未満で基礎習得が目的なら公開講座(1人3〜5万円)、20名以上で自社の固有事例を演習に組み込みたいなら講師派遣(1日50〜100万円)が選択肢になります。20名以上の場合、講師派遣のほうが1人あたり単価が下がり、自社事例での演習ができるため行動変容の見込みも高くなります。

Q

研修効果はどう測定すればよいですか?

A

カークパトリックの4段階評価モデルのうち、まずはLevel 1(満足度)・Level 2(理解度)・Level 3(行動)の3層を測ります。具体的には、研修直後の事前事後アンケートで満足度と理解度を、3か月後の追跡アンケートで職場での実践度を測定します。3か月後の測定では受講者本人の自己評価だけでなく、上司にも「研修前と比べて変化を感じる行動」を聞くことで客観性を担保できます。

Q

上司側がアグレッシブな組織風土だと、部下にアサーティブコミュニケーション研修を受けさせても意味がないのでは?

A

その懸念は実態として正しく、上司側の阻害要因を放置すると研修は形骸化しやすくなります。対策は2つあります。1つ目は、上司にも同じ研修を受講させるか、最低でも「部下が何を学ぶか」「研修後に何を期待するか」を事前に共有することです。2つ目は、心理的安全性に関する施策(1on1の質向上、フィードバック文化の醸成など)と組み合わせて、組織全体で「率直に伝え合う」文化を作ることです。研修単体ではなく組織開発の一部として位置づけると、効果が持続します。

アルー株式会社
アルー株式会社
20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。

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