「点」ではなく「線」でのグローバル人材育成が必要だった
人材開発センター 所長 金谷 範人様
-今回、グローバル人材育成体系の構築に取り組んだ目的は何だったのでしょうか?
金谷様(以下、敬称略):「Yakult Group Global Vision 2030」の実現に向けて、グローバル化が進んでいるコア事業で貢献できる人材を育てていくことです。
-これまでのグローバル人材育成において、どのような点に課題を感じていましたか?
金谷:今までは、「点」での研修にとどまっていました。グローバルインターンシップや海外トレーニー制度などはあったのですが、正直なところ、長期的な視点に立った育成制度ではなかったように思います。前年までの育成施策を踏襲しただけのケースもあり、育成対象者も時に管理職、時に若手社員、というようにバラバラでした。受講人数も一年で10~20人程度と少なく、これだと全社的な拡がりにはつながらないし、風土改革も起こらないという課題感を持っていました。
そんな中で、経営戦略に沿ってどのような人材が必要なのか、必要な人材を育てるにはどのような育成施策に力を入れるべきなのかを明確にし、研修を組み立てていこうという話がでてきました。
そんな中で、グローバル人材育成に強みを持ったアルーさんにグローバル人材育成全体を体系化したい、というご相談をさせていただきました。
グローバル人材像の定義から育成体系の策定まで伴走してもらえた
人材開発センター 尾崎 駿様
-アルーのコンサルティングを受ける中で、印象的な場面はありましたか?
尾崎様(以下、敬称略):全体設計をする際に、関連部署の部長クラス へのインタビューを実施していただいたことが印象的でした。
金谷:そういったコンサルティングだけでなく、講師もコーディネーターもやっていただきました。個人的にはそこが一番驚いたポイントでした。分業されている会社さんも多い中で、すべてできてしまうのはすごいなと思います。
かなり入り込んで伴走いただいていて、多いときには2日に1回くらい打ち合わせしていたんじゃないでしょうか。
平田様(以下、敬称略):弊社は、組織規模の影響か、意思決定のスピードが遅い傾向がありますが、アルーがサポートしてくれたおかげで期日通りに施策を進めることができたのかなと思っています。
▼今回ご提供したグローバル人材育成体系コンサルティングの内容
-グローバル人材育成体系を構築していくにあたって、どのような工夫をしましたか?
尾崎:一つ懸念していたのが、海外展開を進めて海外に行く人をどんどん増やそうとしている会社の風潮に対して、抵抗感を持つ人もいるのではないか、ということでした。
金谷:そこに対しては、社員に向ける言葉を変えていくことで工夫をしました。今までは、国内と海外を対比するという構造の中で「グローバル人材」という言葉を使っていましたが、グローバル企業として「ここにいる人はみんなグローバル人材ですよ」という言い方を人材開発センターのメンバーや役員がするようにしました。これがだいぶ響いたんじゃないかと思います。国内にいながらも、グローバル企業の人としてどう頑張るかという意識が社員の間に芽生えてきた気がしますね。
尾崎:また、実際に研修をやってみると、「すごく参考になった」「実は海外に行きたかったから、こういう研修があって助かった」という声も聞きました。
-グローバル人材育成体系構築にあたってのベンダー選定はどのような点を重視していましたか?
尾崎:グローバル人材育成体系を一から一緒に作り上げていけることを期待していました。
既にある研修やプログラムを提案いただくのではなく、弊社の課題に沿って提案してくださるかどうかを重視していました。
金谷:アルーの場合、最初の企画書の時点で弊社が求めるものがすべて入っていましたね。あるべきグローバル人材育成の像と、アルーが持っているノウハウが全て詰まっていました。
特に、グローバル人材の能力要件を定めるところから始めたかったので、アルーはその部分で実績があったのが大きいですね。
個々の研修の提案をしてくださるベンダーさんはたくさんいらっしゃるのですが、その前提となる考え方やグローバル人材育成体系の構築の仕方についてはアルーの提案が一番でしたね。
グローバル人材育成に関する豊富なノウハウをお持ちであることや、顧客に合わせたカスタマイズの仕方など、素晴らしいと思います。
-グローバル人材コンサルティング以外に、アルーからは「海外赴任者向け研修」の実施を支援させていただきました。「役割認識」「上位役割に必要な知識の習得」「異文化理解力の向上」「ヤクルトの事業の再認識」などを学ぶプログラムでしたが、そもそも海外赴任者育成についてはどのような課題をお持ちでしたか?
平田:元々、海外赴任者への海外赴任前研修は、語学研修程度しか行なえていませんでした。
海外に赴任すると、国内でのポジションより一つ二つ上の役割を担うことになります。視野を広く持ち、自分の部署だけでなく会社全体を見ていかなければなりません。
海外赴任者には少しでも不安を解消し、自信をもった状態で、モチベーション高く赴任してもらいたいという思いがあり、今回の海外赴任前研修を企画しました。
人材開発センター 平田 仁美様
-アルーの海外赴任前研修で役に立った部分はどこでしたか?
金谷:海外赴任者の能力要件をきちんと定義したことが、受講者の理解に繋がったと思います。
研修の際、海外に赴任した際に身につけておくべき力として、「異文化理解力」、「グローバルマネジメント力」、「語学力」の3つを明示していただきました。
「今までの国内でのキャリアの中で身につけてきた能力以外に、海外ではこれらの能力も必要ですよ」と伝えていただいたので、受講者の納得度も高かったのではないでしょうか。
-海外赴任前研修により、どのような変化がありましたか?
平田:知識やスキルを学べたという点はもちろんあります。また、1か月半という長い期間、定期的に研修を行うことで、赴任者同士の横のつながりも生まれました。「赴任同期」という言葉を赴任者同士で使っており、赴任する際の安心感に繋がったのではないかと思います。
金谷:受講者からの声を聴くと、良い声ばかりでしたよね。
実は受講対象者の中には2回目の赴任をする方もいて、そういった方からは「こういう研修を1回目の赴任のときに受けたかった」という声をもらいました。
平田:既に海外赴任を経験している方から好評の声を頂くということは、赴任先で実際に活きる内容に近かったのではないかなと思います。
金谷:研修後の反応として、普通は批判的な声もあると思うのですが、今回の海外赴任前研修についてはそういった声はほとんどなかったですね。
尾崎:受講者の声を受けて、少しでも不安を解消し、自信をもった状態で、モチベーション高く、国際事業本部からも「海外赴任前研修やってよかったね」と、私たちの施策を認めてもらえたのではないかと思います。
-もう一つアルーが携わった「管理職向けグローバルマインドセット」(以下、「グローバルインターンシップ」と表記)について教えてください。
平田:グローバルインターンシップは元々弊社で実施しているプログラムで、2週間ほど海外に社員を派遣するというプログラムです。ジュニア(若手社員)、ミドル(中堅社員)、エグゼクティブ(管理職)の3階層に分けて実施しており、ジュニアとミドルは内製で実施しています。
今回、アルーから役職や階層によってアプローチを変えた方がよいのではないかという提案をいただき、エグゼクティブ層へのプログラムに関してはアルーに依頼することになりました。
-なぜエグゼクティブ層のグローバルインターンシップは外注しようと考えたのでしょうか?
平田:エグゼクティブ層のグローバルマインドセットについては、他の層とは課題感が違っていると感じていました。
エグゼクティブ層は、これから会社の経営を担っていく世代であり、かつ、時代の変化と共に求められるマネジメントも変わってくると考えました。
そのためには、外部の目線を入れて、視野を広げ、「全社最適」、「今までを疑う」、「外に目を向ける」等の視点を持ってもらいたいという判断から、他社に協力いただいた方が効果的だと考えました。
内製化する場合、結局、当社っぽいものが出来上がるとも思いました。
金谷:弊社の現在の管理職の多くは、ヤクルトを「グローバル企業」として認識して入社しているわけではないので、「グローバル企業の管理職とはどうあるべきか」ということを認識できていないケースがあります。
管理職には視野を拡げてもらう必要があるわけですが、組織の中から伝えてもなかなか響きません。そこで、グローバル人材育成の実績があり、コンサルティングの際にアンケート調査などもしていただいたアルーにお願いしようと考えました。
-グローバルインターンシップの実施後、受講者からはどのような声があがりましたか?
金谷:様々な声を聴きました。「やっても意味がないのではないか」と言う人もいれば、「必要だ」と言ってくれる人もいました。
今回のプログラムを通して、管理職の意識の現状を把握できたことだけでも、収穫だと思っています。
「やっても意味がない」と感じている社員に対しては、これからも育成プログラムをやり続けて、意識を変えていくしかないなと思っています。
尾崎:一方で、「グローバル企業として弊社が抱えている大きな課題は何なのか、改めて考えなければいけない」という気付きを得てくれた受講者もいました。今まで会社としての大きな課題を考えたことがなかった層に対して、新しい刺激を与えられたのではないかと思います。
金谷:「グローバル企業の管理職としてどうあるべきか」という話を今まであまり聞いたことがなかったので、色々な気付きがあったのではないでしょうか。
-エグゼクティブ層のグローバルインターンシッププログラムの目的にはどこまで近づけましたか?
平田:受講者の声をきくと、「グローバル領域は、グローバルに関係する部署だけではなく、自分にも関係がある」という意識を持っていただけた方も多かったです。
我々が目指したいところなどをヒアリングして組み立てて頂いたので、ある程度の形になったのではないかと思います。
部署をまたいだ協働体制にも繋がっている
-今回のグローバル人材育成体系構築コンサルティングから始まる一連の施策を通して、課題の解決には近づきましたか?
平田:まずはスタート地点に着いた、という印象です。これから実際に動かしていくことが大事だと思いますが、まず土台に立てたという意味では、ほぼ満足いくところかなと思います。
いつまでに何をすればいいのか、どこに重点的に取り組むのかがはっきりとしました。
金谷:グローバル人材育成の体系図がヤクルト本社としてできたのは大きいですね。グローバル人材の養成に特化した体系図ができたことで、全社にグローバル人材育成プログラムを積極的に打ち出せるようになりました。
-全社的な変化はあったのでしょうか?
尾崎:今までは長期ビジョンを通して、「海外展開やグローバル企業化する」となんとなく考えていた社員が多かったと思うのですが、今は中堅層や若手社員から「グローバルに関する取り組みが増えた」という声を聞くようになりました。グローバル化へのイメージがだいぶついたのではないでしょうか。
金谷:グローバル人材育成の対象者が増えたことも大きいですね。今までは10~20人程度でしたが、今は100~200人が対象になっています。全従業員に占める割合が格段に上がっているので、全社的な変化で言うとそこが大きいと思います。
-なにか想定外の効果はありましたか?
平田:他部署との協働がやりやすくなりました。今までは他部署と認識を合わせながら進めるというのが結構大変だったのですが、グローバル人材育成という一つの軸があることで動きやすくなったなと思います。
金谷:あとは、思ったよりも海外事業所は協力的でしたね。海外事業所の方と話していると、早急にグローバル人材を育成しなければいけないという意識をもっていることがわかりました。
「グローバル人材」という言葉をなくすことが最終目標
-グローバル人材育成の今後の目標は?
金谷:全ての社員に、国内外問わずどこでも活躍できる人材になってもらうことがゴールだと思っています。
「グローバル人材という言葉をなくしたいね」という話を社内でしているんです。「グローバル人材」という言葉を使っている時点で、国内と海外を分けて考えているわけですから。「グローバル人材育成」という言葉をなくすことが最終目標ですね。
平田:国内と海外では、情報や知恵等が十分に共有されておらず、グループ全体としては勿体ない印象があります。
そのような国内と海外間や、国内の部署間でも、もっともっとボーダーレスになって、明るい未来をみんなで築いていけたら良いと思っています。
-目標に向けて、今の課題は何だと思いますか?
尾崎:若手社員は元々グローバル意識が高い人が多いこともあり、グローバル人材育成が効果的だと感じています。
一方、中堅層以上になると、様々な事情の中でグローバル人材としての一歩が踏み出せない方がまだまだ多いと思います。
金谷:特に管理職のグローバル化が難しいですね。今の管理職の世代は、グローバル企業だと思ってヤクルトに入社してきていないのです。グローバル意識の高い若手社員がどんどん入ってきても、管理職のマネジメント手法は昔のままで変わっていないケースが多々あります。「別に海外に行かなくても、日本で頑張れば?」という意識があるので、若手社員と管理職の間に壁がある状態です。若手社員は「海外に行きたい」という方が非常に多いのですが、5年ぐらい経つとその気持ちが失せてきてしまいます。これには、管理職のマネジメントが要因になっている部分もあるのではないかと思っています。
管理職層に対するグローバルインターンシップについてアルーからの提案にもありましたが、管理職層は海外要員をつくるというよりはまず、グローバル企業の管理職としてどうあるべきかという意識を持ってもらうことが最大の課題です。
-「管理職層の意識」という問題に対してはどのような解決策を考えていますか?
金谷:ジュニア層、ミドル層、エグゼクティブ層のそれぞれで、定期的にグローバルへの意識を持ち続けてもらう取り組みを今後はしていかなければいけないと思います。
今は、グローバルインターンシップという研修を通して行なっていますが、どうしても研修だけでは限界があります。研修で数週間海外に行くのと、実際に数年間働くのは全然違いますからね。
異動も含めたキャリアパスをどのように形作っていくかが今後の課題です。
-キャリアパスの形成に向けて、今後の取組みがあれば教えてください。
金谷:今年はじめて、2年目の若手社員に海外に行ってもらうことになりました。若いうちに海外を経験させることが重要ですので、チャレンジとして取り組んでいます。
アルーは「先生」のような存在
-アルーのサービスに対するご感想をお聞かせください。
平田:アルーは弊社の事情を理解しようと努めてくださったので、弊社に寄り添った内容になっていたと思います。
尾崎:元々この研修をやったら良いのではないか、という漠然とした考えしかなかったので、まずあるべき人材像を組み立てて必要な能力要件を洗い出し、どの層にいつ何をすべきかというところまで細かく分析してもらえた点がありがたかったです。
スケジュールとしても少し急いでいたのでかなり無理を申しまして、それでも対応いただき助かりました。
-皆さんにとってアルーはどのような存在ですか?
金谷:もう、私たちはアルーの大ファンですよ。メンバーもアルーに会うのを毎回楽しみにしていましたからね。
平田:「先生」のような存在ですね。提案内容も勉強になったのですが、仕事の進め方や視点、論理立ての仕方など、いち社会人として尊敬させていただいています。
尾崎:柔軟性のある会社だなと思います。私たちはグローバル人材像の定義から始めなければいけなかったので、ゼロから色々とご教授いただきました。
既に色々進めていて迷っている会社さんには、また違う角度のご提案をされるのではないかなと思います。
-アルーには今後、どのようなことを期待しますか?
尾崎:弊社は内向きになりがちで情報のキャッチ力も弱いところがあるので、外部の情報含めてアドバイスを頂きたいと思っています。
まだスタート地点に立ったところなので、正しいかどうか模索しながらしている段階です。ただ突き進めていくだけではなく、色々な状況を踏まえながら改善していきたいと思っています。
金谷:ぜひ、刺激を与えてほしいですね。時には「あなたたち大丈夫?」と言ってほしいです。
2030年の目標に向けて3つのフェーズに分けて取り組みを進めています。今が第1フェーズなので、第1フェーズの振り返りや第2、第3フェーズをどうしていくかという計画にはぜひアルーも入っていただきたいと考えています。さらにその次の2040もあるので、そこまで一緒にやっていただけるとありがたいなと思います。
研修だけではなく人事制度のキャリアパスなどについても知見をお持ちでしょうから、うちの部署だけではなく採用担当に対しても色々サポートしていただけるとありがたいです。
-最後に、アルーへのメッセージをお願いします。
尾崎:ぜひ引き続き情報提供をしていただければと思います。人材育成体系の組み立てから研修での登壇まで、一気通貫でやっていただけるのが魅力的で、安心してお任せできると感じているので、今後も継続してお願いできればと思います。
平田:やり取りを通して刺激を頂いているので、引き続き連携させていただければありがたいと思います。
金谷:言いたいこと言い合えるような関係になってきたので、議論を重ねながらお互いが成長できるように取り組んでいけたらと思います。
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アルー営業担当からの一言