
離職率の計算方法5パターン比較|定義の統一からExcel活用まで実務解説
「厚生労働省の計算式は分かる。でも、自社の中途や新卒、パートが混在した状況にどう当てはめればいいのか」——離職率の計算は、教科書通りの1本の式では実務に合わない場面が多くあります。分母を年初在籍にするか期中平均にするかで数字は変わり、定年退職や育休から復帰しなかった社員を分子に入れるかどうかで印象も変わります。
本記事では、離職率の代表的な5つの計算方法を比較表や数値シミュレーションで整理し、Excelテンプレートの構成例や厚生労働省統計との比較手順、活用シーンまでを実務担当者に向けて解説します。自社の離職率は高いのか低いのかを、根拠を持って説明できる状態を目指します。
この記事でわかること
- 離職率の代表的な計算方法5パターンと使い分けの基準
- 同じ会社データでも定義を変えると数字が何%変わるかのシミュレーション
- 定年退職、会社都合、出向、育休未復帰などのイレギュラー処理の判断フロー
- Excelで毎月ラクに集計するテンプレートの列構成と関数例
- 厚労省統計と自社数値を正しく比較する5ステップ
- 計算した離職率を経営報告、採用広報、研修設計にどうつなげるか
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この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
離職率の代表的な計算方法5パターンと使い分け
離職率の計算式は「離職者数 ÷ 在籍者数 × 100」が基本ですが、実務では分母と分子の取り方によって少なくとも5つのパターンが使い分けられています。まず全体像を押さえ、自社の目的に合うものを選ぶことが出発点です。
厚労省式(雇用動向調査型)
自社を業界平均と正しく比較する際の標準式が厚生労働省式です。分母は1月1日時点の常用労働者数、分子はその年の離職者を用います。式は以下の通りです。
- 離職率(%)= 年間離職者数 ÷ 1月1日時点の常用労働者数 × 100
この式は厚生労働省の「雇用動向調査」で用いられており、日本で最も広く参照されている基準です。厚生労働省が毎年発表する業種や企業規模ごとのデータと同じ基準で比較できるため、自社の数値を対外的に示すときや、業界平均と自社を比べたいときは、まずこの式で計算しておくと議論の起点が揃います。
一方、注意点は「対象期間中の入社者は分母に含めない」というルールです。中途採用が多い企業では、期中入社者を分母に含めないことで実態より離職率が高く見える場合があるため、期中平均式との併用が推奨されます。
新卒3年式や中途1年式
採用のミスマッチ度合いや初期定着を測るために使われるのが、入社年次を固定した式です。
- 新卒3年以内離職率(%)= 入社3年以内に離職した新卒者数 ÷ その年度の新卒入社者数 × 100
- 中途1年以内離職率(%)= 入社1年以内に離職した中途採用者数 ÷ 対象期間の中途入社者数 × 100
新卒3年式は厚生労働省も毎年公表しており、大卒で約3割前後という水準が指標として知られています。中途1年式は公式統計が少ないため業界横並び比較は難しいものの、採用手法の見直しやオンボーディング設計の効果検証には有効です。
これらの式は「入社年次の同期集団(コホート)を追跡する」構造のため、母集団が小さいと1〜2名の増減で数値が大きくブレます。新卒10名規模の企業では、絶対数と併記して読み解く運用が現実的です。
期中平均式や月次累計式
分母を一時点で固定せず、期中の在籍変動を反映させるのが期中平均式と月次累計式です。
- 期中平均式:離職者数 ÷((期首在籍数 + 期末在籍数)÷ 2)× 100
- 月次累計式:離職者数 ÷(各月末在籍数の平均)× 100
大量採用や大量退職が並行して起きる企業(小売や飲食、派遣など)や、急拡大フェーズのスタートアップでは、期首と期末の在籍数が大きく異なるため厚生労働省式では実態を捉えにくくなります。期中平均を分母に設定することで、期中に入退社した人員も一定程度反映され、より実態に近い数字を算出できます。
月次累計式はさらに精度が高く、社員数が季節変動する業種でも安定した数値が得られます。ただし毎月の在籍数を集計する運用負荷があるため、Excelテンプレートでの自動化が前提となります。
5パターン比較表と自社に合う選び方
5つのパターンを一覧で整理すると以下のようになります。
パターン | 分母 | 分子 | 使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
選び方の原則は、目的に応じて複数の計算式を併用することです。対外開示や業界比較には厚生労働省式、初期定着の検証には新卒3年式や中途1年式、社内での月次モニタリングには期中平均式または月次累計式という組み合わせが一般的です。
「1つの式だけを見て『自社の離職率は◯%です』と経営陣に報告し、『前提が異なっているのではないか』と指摘を受ける」といった事態は、複数の計算式を併記していないことが原因で発生します。
定義を変えると離職率は何%変わるか
「計算式によって数字が変わる」と言葉で説明するより、同じ会社データを5パターンで計算してみるのが最も分かりやすい方法です。ここでは架空のモデル企業を使って、定義変更でどれくらい数値が動くかを可視化します。
同一データで5パターンを計算するシミュレーション
同じ企業データを5パターンで計算すると、式によって数値は大きく変わります。モデル企業の前提は以下の通りです。
- 期首(1/1)常用労働者数:200名
- 期末(12/31)常用労働者数:220名
- 期中の全離職者:20名(うち定年退職2名、会社都合1名を含む)
- 月次累計式の年平均在籍数:205名
- 3年前に入社した新卒:10名(うち3年以内に離職:3名)
- 前年に入社した中途:40名(うち入社1年以内に離職:6名)
同じ会社を5パターンで計算すると次のようになります。
パターン | 計算式 | 結果 |
|---|---|---|
ここで注意したいのが、上の3つと下の2つは、そもそも測っているものが違うという点です。厚生労働省式、期中平均式、月次累計式は「全社員のうち何%が辞めたか」を、新卒3年式、中途1年式は「特定の入社集団が定着したか」を測ります。前者は9.5〜10.0%と1ポイント未満の差に収まる一方、後者は15〜30%と桁が違って見えますが、これは会社の状態が違うのではなく、分母の集団が違うためです。
新卒3年式の30.0%は、全国平均(大卒33.8%)と比べればむしろ良い水準です。全社離職率10.0%と並べて「3倍の開き」と読むのは誤りで、それぞれ対応するベンチマークと比べる必要があります。
同じ「離職率」という言葉でも、指している数字がまったく違うことが分かります。
分母を変えると数字はこう動く
上記シミュレーションで注目すべきは、分母を期首在籍から期中平均に変えるだけで10.0% → 9.5%と、0.5ポイント下がっている点です。今回は期中で純増(200→220)しているため差はわずかですが、急拡大企業ではこの差が数ポイント単位で開くこともあります。
逆に人員削減局面(期首より期末が少ない)では、期中平均式のほうが厚生労働省式より高い数字が出ます。「自社は成長期か、縮小期か、安定期か」で、どの式が実態を最もよく表すかが変わるわけです。
経営会議で離職率を報告する際は、この差分を最初に説明しておくと「なぜこの式を選んだのか」という質問に一貫して答えられます。
「離職率」「定着率」「退職率」用語比較
似た言葉が混在するため、社内資料や求人票でどれを使うかで混乱が起きがちです。主要な用語を整理します。
用語 | 定義 | 主な用途 |
|---|---|---|
離職率と定着率は表裏の関係にあります。ただしこれは同じ分母、同じ期間で計算した場合に限ります。離職率を厚生労働省式(期首在籍者が分母)、定着率を中途1年式(入社者が分母)で算出すると、足しても100になりません。求人票の「定着率95%」と社内資料の「離職率10%」が食い違う、というのはよくあるケースです。表裏で示すなら、必ず同じ式から導いてください。
残存率は分母が特定の入社集団に固定されるため、定着率とは別の指標です。「新卒3年後残存率70%」のように、対象と期間をセットで示します。
退職率は企業によって定義が揺れやすいため、社内で用語定義を統一しておくことが重要です。厚生労働省の雇用動向調査でも離職者と退職者は別の集計項目として扱われており、公的統計の水準でも使い分けられています。
分子に含める/含めないの判断フロー
離職率の計算で最も判断に迷うのが、定年退職や会社都合退職を分子に含めるかです。ここでは典型的なケースを整理し、判断の基準を示します。
イレギュラー処理の判断フローチャート
退職理由ごとに、分子への含有判断が異なります。基本は「目的に応じた複数集計」ですが、以下の内容で整理できます。
退職理由 | 分子に含める? | 判断の考え方 |
|---|---|---|
基本原則は「目的に応じて、含める版と除外版を両方集計しておく」ことです。1つの式に固定してしまうと、後から「定年退職を除いたら数字はどう変わるか」と聞かれたときに再集計が発生します。Excelテンプレートで理由コードを持たせておけば、集計時にフィルタで切り替えられます。
判断に迷う典型ケース別の考え方
実務でよく議論になるケースを個別に整理します。
ケース1:定年退職を分子に含めるか
厚労省の雇用動向調査では定年退職も離職者に含める定義です。ただし社内の定着改善議論では、定年退職者を除いた「若手や中堅離職率」を別集計するほうが施策設計に直結します。両方を並記するのが望ましい運用です。
ケース2:希望退職、早期退職優遇を含めるか
会社都合の色合いが強い希望退職は、「自己都合離職率」と分けて集計すると議論しやすくなります。求人票やIR資料では自己都合離職率のみを開示する企業もあります。
ケース3:出向者の扱い
在籍出向(グループ会社への出向で籍は残る)は在籍者としてカウントし、分子には含めません。転籍出向(籍が移る)は退職扱いとするのが一般的です。社内で出向の種類を明確に区分してタグ付けしておくことが前提になります。
ケース4:育休未復帰
育休期間中は在籍者として分母に含め、復帰予定日を過ぎて退職が確定した時点で分子に計上するのが一般的です。ただし「育休中を分母から除外する」運用の企業もあり、社内定義の統一が必要です。
いずれのケースも「唯一の正解」はなく、目的と社内定義の一貫性が判断基準になります。
離職率計算テンプレートの作成方法
毎月、毎年ラクに集計するには、在籍者や入退社日のマスタから離職率を自動算出するExcel活用が有効です。ここでは実務でそのまま使える列構成と関数例を示します。
Excelテンプレートは以下よりダウンロードできます。
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列構成と入力ルール
マスタシート「社員台帳」の推奨列構成は以下の通りです。
列 | 列名 | 例 | 補足 |
|---|---|---|---|

列の並び順は数式に直結します。下の数式サンプルは入社日をF列、退職日をG列、退職理由コードをH列として書いているため、並び順を変える場合は数式内の列記号も合わせて変更してください。
入力ルールは4つです。
- 退職日は「実際の最終出社日ではなく雇用契約終了日」で統一する
- 雇用区分、採用区分、退職理由コードは選択リストにする
- 在籍中は退職日を空欄にする
- 入社日や退職日は必ず日付として入力する
集計シートのサンプル
集計シートは、B1セルに対象年(例:2026)を入力すると、年を変えるだけで全体が再計算される構成にします。
以下の6つのパターンを一覧で指標を見られるようにするのがおすすめです。
- 厚労省式離職率(雇用動向調査型)
- 厚労省式離職率(社内モニタリング用・定年除外)
- 新卒3年以内離職率
- 中途1年以内離職率
- 期中平均離職率
- 月次累計離職率

それぞれの関数は以下よりExcelテンプレートをダウンロードしてご確認ください。
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月次、年次で更新する運用のコツ
テンプレートを長く使い続けるコツは3点です。
マスタと集計シートを分離する
社員台帳(マスタ)と集計ダッシュボード(結果表示)を別シートに分け、集計シートは全て関数で動的に算出されるようにします。マスタの手入力箇所を最小化することで、更新ミスが減ります。
集計軸を柔軟に切り替えられるようにする
雇用区分、採用区分、部署、入社年次などのフィルタをドロップダウンで切り替えられるようにしておくと、「営業部の中途1年離職率」「新卒2022年入社の3年定着率」など、経営や現場からの追加質問に即答できます。
集計ロジックを別シートで文書化する
「厚労省式では退職理由03(定年退職)を含む/社内定着施策では除く」といった集計ルールを、Excel内の「定義書」シートに明文化しておきます。担当者が交代しても運用が引き継がれます。
Excelでの運用は、社員規模が数百名〜1,000名程度までは十分に機能します。それ以上の規模ではHRテック(Human Resources Technology / 人事向けシステム。タレントマネジメントシステムなど)やLMS(Learning Management System / 学習管理システム)の受講データと連動させた集計が必要となります。
自社の離職率を業界平均と正しく比較する方法
「自社の離職率10%は高いのか低いのか」——この問いに答えるには、厚生労働省統計と定義を揃えて比較する必要があります。ここでは5つの手順で整理します。
厚労省統計と定義を揃える5ステップ
ステップ1:自社数値を厚労省式で再計算する
社内で期中平均式を使っている場合でも、業界比較用には厚労省式(分母=1月1日常用労働者数)で改めて計算します。
ステップ2:常用労働者の定義を合わせる
厚労省の「常用労働者」は「期間を定めずに雇われている労働者」と「1ヶ月以上の期間を定めて雇われている労働者」を指します。短期の日雇いや登録型派遣は含まないため、自社データからも同様に除外します。
ステップ3:分子(離職者)の範囲を揃える
厚労省統計は定年退職や会社都合も含めた全離職者数です。社内では別集計している場合、比較用にはこれらも含めた数値を作ります。
ステップ4:比較対象の統計を「業種×企業規模」で選ぶ
厚労省の雇用動向調査は業種別や企業規模別に集計されています。自社と同じ業種、同じ規模帯の数値を参照します。
ステップ5:引用年を必ず明記する
「ベンチマークとなる離職率は◯%です」と示すときは必ず「厚労省令和◯年雇用動向調査より」と明記します。古い年度のデータを最新値として使うのは避けましょう(引用年から2〜3年以内が目安)。
このチェックリストを通せば、「業界平均◯%に対して自社は◯%」という比較の妥当性が担保されます。
業種×規模×雇用形態で補正した「妥当ライン」
単純に業種平均と比較するだけでは、自社の実態を正しく評価できないことがあります。次の3つで補正した「自社にとっての妥当ライン」を持つと、経営判断に使える指標になります。
業種補正
宿泊業や飲食サービス業の離職率は21.5%、製造業は9.2%と、業種間で2倍以上の差があります(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」一般労働者)。まず自社業種の平均を基準に据えます。
規模補正
企業規模による差もありますが、「規模が小さいほど高い」という単純な関係ではありません。全産業では100〜299人が17.9%と最も高く、1,000人以上が12.5%、5〜29人が12.2%とほぼ並びます。中堅規模が突出する山型です。一方、製造業だけを見ると1,000人以上8.2%から30〜99人11.6%へと規模が下がるほど上昇します。業種によって規模の効き方が違うため、自社と近い規模帯の数値を、業種と組み合わせて確認してください。
雇用形態補正
パートやアルバイト比率が高い業種(小売、飲食)では、正社員離職率と全体離職率が大きく異なります。一般労働者11.4%に対しパートタイム労働者は19.9%と、1.8倍の開きがあります。自社と業界平均のパート比率を確認し、必要に応じて「正社員のみの離職率」で比較します。
補正後のベンチマークが「業種平均12% × 規模補正(-2ポイント)× 正社員限定(-1ポイント)= 9%が自社の妥当ライン」といった形で見えると、「自社の10%は業界より1ポイント高い」と根拠を持って言える状態になります。
離職率の採用広報や研修設計への活用
計算して数字を出しただけでは「次に何をすべきか」が分かりません。ここでは離職率を具体的な活用シーンにつなぐ方法を示します。
経営会議、IR、求人票での見せ方
経営会議での見せ方
経営層に離職率を報告する際は、①複数式を併記(厚労省式、期中平均式、新卒3年式)、②前年比較や3年推移、③業界平均との差分、④定年退職を除いた「若手や中堅離職率」の4点セットが基本です。1つの数値だけを提示すると「集計の前提条件は何か」と指摘を受けやすいため、あらかじめ複数の視点から提示します。
IRや統合報告書での開示
人的資本開示の流れで、離職率はIRにおける開示指標の1つとなっています。開示する際は算定基準(対象範囲、分母定義、引用年)を必ず注記します。「自己都合離職率」に限定した開示、正社員のみに限定した開示など、設計思想を明示することが重要です。
求人票での見せ方
求人票では離職率よりも「定着率」で表現することが一般的です。「入社3年後の定着率85%」「中途入社1年後の定着率90%」など、ポジティブに読める指標を選びます。ただし虚偽表示にならないよう、算出根拠を社内で文書化しておきます。
研修設計やオンボーディング改善への接続
「離職率が高い」という結果だけを見て研修を増やしても、根本的な改善にはつながりません。離職率を分解して「どこで、誰が、なぜ辞めているか」を可視化することが起点になります。
入社1年以内の中途離職が多い → オンボーディング設計の見直し(初期3ヶ月のフォロー面談、OJTトレーナー研修)
入社3年以内の新卒離職が多い → 早期キャリア支援(2〜3年目研修、1on1の質向上)
30代中堅層の離職が多い → キャリア自律支援(キャリアデザイン研修、上司のキャリア対話スキル)
管理職手前(課長候補)での離職が多い → 管理職への昇格プロセスの見直し(昇格前研修、管理職の魅力再定義)
「離職率を測る目的は、次のアクションの起点にする」ためです。測って終わりにせず、研修設計や制度設計にどうつなげるかまでを設計しておくことで、投資対効果が可視化されます。
新卒の離職率について詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:新卒の平均離職率はどのくらい?離職率の高い業界・原因・対策方法を徹底解説
中途採用者の離職を防ぐオンボーディング施策については以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:【事例あり】中途入社社員へのオンボーディング施策を成功させるコツ
離職率を下げるための取り組み事例
ここでは、外国籍新卒社員の早期離職が発生した運輸会社が、離職率の分解分析から「主体性、異文化理解、日本企業文化適応」の3軸で育成施策を再設計し、定着に取り組んだ事例を紹介します。
運輸業における外国籍新卒定着に向けた取り組み
規模・対象者
物流サービスを展開する企業の人事部門が、外国籍新卒採用者の定着を主要課題として取り組みました。対象は外国籍新卒社員に加え、日本人新卒社員および既存の中堅層まで広げた育成体系の再設計です。
課題
複数の社員の退職事例をきっかけに「外国籍新卒の早期離職」が現実的な危機感として浮上しました。分解して見ると、離職の背景にはコミュニケーションギャップだけでなく、スタンス(主体性)不足、異文化理解の不足、日本企業文化への適応困難という3軸の課題があることが明らかになりました。加えて、中堅層の薄さが定着率悪化の遠因となっていることも並行して把握されました。
実施した施策
新卒導入研修の設計を「日本人新卒と同じ内容を外国籍にも適用する」という前提から見直し、外国籍新卒には日本人と同じ役割を担える人材への育成をゴールに再設定しました。具体的には、以下の3軸で内容を構成しました。
- スタンス強化(主体性の言語化と行動基準の共有)
- 異文化理解(日本の暗黙のコミュニケーション作法を明示的に教える)
- 日本企業文化への適応支援(会議、報連相、上下関係の運用ルールを座学で共有)
あわせて、日本人新卒向けの内面変容型プログラム(座学から体感や内省型への切替)も並行して設計されました。
成果
外国籍新卒社員からは「日本の文化や商習慣の理解が進み、なぜコミュニケーションを密にとる必要があるのかがわかった」「自分の仕事の成果を理解してもらうためにも、報告・連絡・相談をしなければいけないことがわかった」という声が挙がりました。日本の文化や商習慣を理解することによって、職場で求められることの背景を理解することができ、基本行動の実践への意欲が高まっていることを確認できました。
設計のポイント
最大のポイントは、離職率を「全体の数字」で見るのではなく、外国籍、日本人、中堅と分解して施策を分けた点です。全体離職率だけを追っていた場合、外国籍固有の課題は「コミュニケーションの問題」で片付けられていた可能性がありますが、分解したことで「スタンス、異文化理解、企業文化適応」の3軸という具体的な打ち手に接続できました。
まとめ
離職率は「1つの式で1つの数字を出す」ものではなく、目的に応じて複数の計算パターンを使い分ける指標です。
重要なのは、複数式を併記して定義をそろえ、Excelなどで毎月スムーズに更新できる運用を作ることです。離職率を「どこで、誰が、なぜ辞めているか」まで分解し、オンボーディング設計やキャリア支援、管理職育成といった具体的なアクションの起点として活用してください。
よくある質問(FAQ)
Q | 離職率の計算式は結局どれを使えばいいですか? |
|---|---|
A | 目的に応じて使い分けるのが原則です。業界平均との比較や対外開示には厚生労働省式、採用の質を検証したいときは新卒3年式や中途1年式、社内での月次モニタリングには期中平均式または月次累計式を推奨します。 |
Q | 定年退職は分子に含めるべきですか? |
|---|---|
A | 厚生労働省式では含めます。ただし社内の定着施策の効果検証では、定年退職を除いた「若手や中堅離職率」を別集計するほうが具体的な打ち手につながります。 |
Q | 自社の離職率が業界平均より高いかどうかは、どう判断すればいいですか? |
|---|---|
A | 単純に業種平均と比較するだけではなく、業種×企業規模×雇用形態の3軸で補正した基準を持つことが重要です。厚生労働省の雇用動向調査などの最新数値を参照してください。 |
Q | Excelとタレントマネジメントシステムのどちらで運用すべきですか? |
|---|---|
A | 社員規模が数百名〜1,000名程度まではExcelでも十分に機能します。それ以上の規模や詳細データと連動させたい場合は、タレントマネジメントシステムとの連動が現実的です。 |


