
シニア社員はいらない?問題がある場合の対処法と戦力化を叶えた事例
役職定年後や再雇用のシニア社員がパフォーマンスを発揮できず、若手のモチベーションを下げていることに悩む人事担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、シニア社員の課題を構造的に整理し、対処法について意思決定できる状態へ導くことを目的としています。
この記事でわかること
- 活躍できていないと感じる原因を4類型で構造化する見立て方
- 活用/配置転換/処遇変更/雇用契約終了の4選択肢と、それぞれの法的リスク
- 現場管理職が年上部下と向き合う1on1の設計とトークスクリプト
- シニア社員を戦力化した企業の育成事例と再現条件
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この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
「シニア社員はいらない」と感じられる背景
「シニア社員の戦力化が難しい」という声は、単なる現場の感情論ではなく、日本企業の構造変化から生まれた必然的な課題です。まずはその背景を整理し、感情論と構造要因を切り分けて考えていきましょう。
定年延長・再雇用制度で生まれる構造的ミスマッチ
制度上の義務と実務との乖離から、構造的ミスマッチが生まれています。高年齢者雇用安定法の改正により65歳までの雇用確保が義務化され、70歳までの就業機会確保も努力義務となりました。企業は制度上、シニア社員を雇用し続ける立場にあります。一方で、多くの企業では役職定年後の役割再設計や評価制度の整備が追いついていません。
その結果、「制度上は雇用しなければならないが、期待役割が曖昧」というミスマッチが顕在化します。役職定年によって給与が減額され、評価制度からも外れ、適切なキャリア支援のないまま「余った席」に配置される——このような構造に置かれた状態では、シニア社員側もモチベーションを保ちにくく、周囲からも「なぜここにいるのか」が見えにくくなってしまいます。
「活躍できていない」という周囲の感情の多くは、シニア個人の能力や態度そのものよりも、この構造的ミスマッチが浮き彫りになった結果として現れているのです。
シニア社員について詳しくは以下の記事をご参照ください。
若手世代から見える「不公平感」の正体
若手社員から見ると、成果を出していないように見えるシニア社員が自分より高い給与を受け取っている構図は、強い不公平感を生みます。「あの人と同じ会社にいる意味があるのか」「頑張っても報われないのでは」という感情が、若手の離職意向を押し上げる要因の一つになっています。
ここで重要なのは、若手が問題視しているのは「シニア社員の年齢」ではなく、「役割と処遇のバランスが崩れていること」だという点です。役割が明確で成果を出しているシニア社員には、若手も敬意を払います。「活躍できていない」と感じられる状態は、役割設計・評価・処遇の三位一体が機能していないシグナルなのです。
シニア社員が活躍できない原因
ここでは、シニア社員が活躍できない原因を「個人要因×組織要因」のマトリクスで4類型に構造化し、類型別に対処の方向性を見立てる枠組みを提示します。
スキル陳腐化型
長年同じ業務に従事してきた結果、事業環境や技術の変化に対応できず、現在の期待水準を満たせなくなっているケースです。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進、生成AI活用、新しい業務プロセスへの適応が追いつかず、若手より低いアウトプットしか出せない状態が続きます。
このタイプの兆候は、「新しいツールを避ける」「昔のやり方に固執する」「担当できる業務範囲が年々狭くなる」といった行動に現れます。本人に意欲はあるものの、リスキリングの機会も動機付けも与えられていないことが多く、組織側のキャリア支援欠如が本質的な原因となっているケースが少なくありません。
対処の方向性は、リスキリング機会の提供、業務再割当、または本人の強みを活かせる領域への配置転換です。
リスキリングについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
態度・意欲低下型
能力はあるものの、モチベーションが低下し、周囲への悪影響が顕在化しているケースです。会議で否定的な発言を繰り返す、若手の指導を拒否する、指示された仕事しかやらない——このような態度が、チーム全体の空気を悪化させます。
このタイプは、役職定年による給与半減・キャリアの断絶・貢献感の喪失といった「働く意味」の欠落から生まれることが多く、本人の性格の問題ではなく、制度設計と処遇のあり方が動機を破壊しているケースが多く見られます。
対処の方向性は、1on1による内省支援、新しい役割の付与、または処遇変更を含む役割再定義です。
健康・体力問題型
加齢に伴う体力・健康面の変化により、以前と同じ業務量やスピードを維持できなくなっているケースです。長時間労働や物理的負担の大きい業務では、パフォーマンスに明確な影響が出ます。
このケースは本人の努力だけで解決できる範囲を超えていることが多く、業務量の再設計や配置転換を中心とした対処が必要となります。
役割ミスマッチ型
能力も意欲もあるが、現在の役割・業務内容が本人の強みや志向と噛み合っていないケースです。かつてマネジャーとして活躍していた人が、役職定年後にプレイヤー業務に戻され、力を発揮しきれていないパターンが典型です。
このタイプは、過去の経験や専門性を活かせる後進育成・技術伝承・特命プロジェクトなど、役割の再設計と適切なアサイン次第で大きく戦力化できる可能性を秘めています。
4類型の見立てマトリクス
上記4類型を、「個人要因の比重」と「組織要因の比重」で整理すると、対処の方向性が見えやすくなります。
類型 | 主因 | 兆候 | 対処の方向性 |
|---|---|---|---|
スキル陳腐化型 | 組織要因(支援不足)> 個人要因 | 新ツール回避、業務範囲縮小 | リスキリング / 配置転換 |
態度・意欲低下型 | 組織要因(処遇・役割)> 個人要因 | 否定的発言、指導拒否 | 1on1 / 役割再定義 / 処遇変更 |
健康・体力問題型 | 個人要因(加齢) | 業務量・スピード低下 | 業務量調整 / 配置転換 |
役割ミスマッチ型 | 組織要因(アサイン) | 燻り、力の発揮不足 | 役割再設計 / 後進育成役 |
「活躍できていない」と感じられる状況について、シニア社員個人や上司であるマネジャーのみを責めるのではなく、まず原因を客観的に見立てることが有効な打ち手を選ぶ出発点となります。
シニア社員への不満を放置した場合の悪影響
「活躍しきれていない」と感じつつも手を打てない状態を放置すると、組織にはどのような影響が及ぶのでしょうか。ここでは、放置がもたらす主なリスクを整理します。
若手のモチベーション低下と離職連鎖
シニア社員のパフォーマンスと処遇の不均衡は、若手の目に「頑張っても報われない会社」として映ります。特に高いパフォーマンスを出している若手ほど、労働市場での市場価値が高く、離職のハードルも低い傾向にあります。優秀な若手から順に離職していくという最悪の連鎖こそが、シニア問題放置の最大のリスクです。
若手の離職は、採用コストや育成投資の毀損にとどまらず、残された若手にさらなる業務負担を強いる悪循環を生み出します。「シニア1人の処遇や役割に手を付けないことで、優秀な若手5人を失う」という構図は、多くの企業で実際に起こっている実態です。
若手社員のモチベーション向上について詳しくは以下の記事をご参照ください。
管理職の疲弊とマネジメント機能不全
年上部下を持つ現場管理職の負担も見過ごせません。パフォーマンスを出せていない年上部下に対して、「適切な指導や評価が難しく、かといって放置もできない」というジレンマが管理職の心理的負荷を高め、本来注力すべき若手育成やチーム戦略に割く時間を奪ってしまいます。
管理職が疲弊すると、チーム全体のマネジメント機能が低下し、組織全体のパフォーマンス低下や若手の育成遅延に直結します。特に管理職のプレイングマネジャー化が進んでいる組織では、シニア問題に対処する余力すら残っていないケースも多く見られます。
「活用しないコスト」と「活用するコスト」の比較
意思決定を円滑に進めるためには、放置によって生じるコスト(リスク)と、対処・活用にかかるコストを並べて比較する視点が有効です。
選択肢 | 主なコスト | 主なリターン |
|---|---|---|
放置(活用しない) | 若手離職、管理職疲弊、組織文化毀損 | 短期的な波風なし |
雇用契約の終了(退職勧奨) | 法的リスク、退職金積み増し、企業イメージ低下 | 人件費削減、若手のガス抜き |
活用(戦力化) | 制度改定、研修投資、管理職の関与工数 | 経験・人脈の活用、若手指導者確保 |
シニア社員だけではなく、どんな人材層に対しても言えることではありますが、「活用しない」も「活用する」もコストがかかる——この事実を直視することが、意思決定の出発点です。放置は「コストがないように見えて、実は最もコストが高い」選択肢であることも多く、意思決定を先送りすること自体がリスクだと認識する必要があります。
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成果が出せていないシニア社員への対処法
成果が出せていないと感じたときに取れる選択肢は、大きく4つに整理できます。4つの選択肢を並列で検討することが、感情論から意思決定への転換点です。
対処法1:活用(戦力化)
シニア社員が持つ経験・専門性・人脈を、組織にとっての価値に転換する方向性です。後進育成、技術伝承、特命プロジェクト、顧客との関係維持など、若手やミドル層では代替しにくい役割にアサインします。
役割ミスマッチやスキルの陳腐化(意欲がある場合)が原因でシニア社員が活躍できていない場合には最も有効です。役割再定義とリスキリング支援をセットで提供することで、戦力化できる余地が大きいタイプです。ただし、期待役割を本人と合意し、成果を可視化する仕組みがなければ「活用しているつもり」で終わります。
対処法2:配置転換
現在の部署・業務では力を発揮できないシニア社員を、本人の強みや健康状態に合った部署に異動させる方向性です。専門職への転換、後方支援部門への異動、グループ会社への出向などが典型です。
シニア社員の健康や体力に問題がある場合、役割がミスマッチになっている場合に有効です。ただし、本人の同意なく著しい労働条件の低下を伴う配置転換は法的リスクを伴います。就業規則上の配置転換命令の範囲と、本人との合意形成のプロセスが重要です。
対処法3:処遇変更
役割・貢献度に応じて、報酬や役職を見直す方向性です。役職定年制度の再設計、成果連動型の報酬制度導入、役割等級制度への移行などがこれにあたります。
処遇変更が有効に働くのは、個人単位の対処ではなく組織全体の制度改定として行う場合です。個別のシニア社員のみに不利益変更を課すことは、同一労働同一賃金の観点や不利益変更法理から法的リスクが高く、制度全体としての再設計が必要になります。
対処法4:雇用契約の終了(退職勧奨・アウトプレースメント)
雇用契約の終了に向けて話し合いを進める方向性です。退職勧奨は法的に「合意退職」を目指す行為であり、解雇とは異なります。アウトプレースメント(再就職支援)をセットで提供することで、本人にとっても次のキャリアへの移行を支援できます。
勤務態度や意欲に問題があり改善余地がないケース、または組織との適合が根本的に難しいケースで検討される選択肢です。ただし、退職勧奨には強い法的制約があり、後述する手順を守らないと違法な退職強要と判断されるリスクがあります。
原因別・対処フローチャート
シニア社員が活躍できない原因と対処法を掛け合わせると、以下のような対処フローが見えてきます。
類型 | 第1選択 | 第2選択 | 最終手段 |
|---|---|---|---|
スキル陳腐化型 | 活用(リスキリング) | 配置転換 | 処遇変更 |
態度・意欲低下型 | 活用(1on1・役割再定義) | 処遇変更 | 雇用契約の終了 |
健康・体力問題型 | 配置転換(業務量調整) | 処遇変更 | (退職勧奨は慎重) |
役割ミスマッチ型 | 活用(役割再設計) | 配置転換 | 処遇変更 |
どの類型でも「活用」から検討を始めるのが原則です。いきなり雇用契約の終了に進むと、法的リスクが高いだけでなく、組織文化への負の影響も大きくなります。
シニア社員への対処における法的リスクと手順
「解雇や退職勧奨は法的にどこまで可能なのか?」という疑問に、実務レベルで答えていきます。ここでは人事の実務担当者が押さえるべき論点を整理します。実際の運用にあたっては、必ず社内法務・顧問弁護士と連携してください。
高年齢者雇用安定法の70歳就業機会確保
高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保を義務とし、70歳までの就業機会確保を努力義務としています。具体的には、定年廃止・定年引上げ・継続雇用制度に加え、業務委託契約や社会貢献事業への従事という選択肢も条件付きで認められています。
この制度趣旨から、企業は原則として希望するシニア社員に対して、65歳(将来的には70歳)までの就業機会を提供する立場にあります。「活用しないから雇用を打ち切る」という単純な判断は、この法律の趣旨に反するため、慎重な対応が求められます。
同一労働同一賃金の観点
再雇用後のシニア社員の処遇について、同一労働同一賃金の観点からの検討も必要です。再雇用後の職務内容や責任範囲が正社員時代と大きく変わらないにもかかわらず、賃金だけが大幅に下がっている場合、法的な争点となる可能性があります。
処遇変更を検討する際は、「役割の変化」と「処遇の変化」を対応させる設計が重要です。役割が縮小したから処遇が下がる、という論理的な整合性を、就業規則や労働契約書で明示できる状態が望ましいと言えます。
解雇規制と退職勧奨の境界線
日本の労働法では、解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ無効とされる、極めて厳格な要件が課されています。パフォーマンスが低いという理由だけで解雇することは、通常は困難です。
そこで実務上は「退職勧奨」というアプローチが取られますが、これも強要にならないよう厳格な手順が求められます。具体的には、面談回数・時間・発言内容が過度になると、違法な退職強要と判断されるリスクがあります。「合意退職」を目指す姿勢を貫き、本人の意思決定を尊重するプロセス設計が必須です。
各対処法と法的リスクの一覧
対処法 | 主な法的論点 | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
活用 | (リスク低) | 期待役割の明示と合意形成 |
配置転換 | 配置転換命令権の範囲、本人同意 | 就業規則との整合、合意形成プロセス |
処遇変更 | 不利益変更法理、同一労働同一賃金 | 制度改定として組織全体で実施 |
雇用契約の終了(退職勧奨) | 退職強要リスク、高年齢者雇用安定法 | 面談回数・発言内容・合意形成の記録 |
雇用契約の終了に進むほど法的リスクは高くなり、実務手順の厳格さが求められます。まず活用・配置転換から検討し、最終手段としての退職勧奨は慎重に進めることが原則です。
シニア人材のやる気を引き出す方法について詳しくは以下の記事をご参照ください。
現場管理職ができる対処
制度改定は時間がかかりますが、現場管理職には今日から動ける手段があります。ここでは年上部下との1on1設計と、パフォーマンス可視化の観点を紹介します。
年上部下との1on1設計
年上部下との1on1は、多くの管理職が「何を話せばいいかわからない」と感じる場面です。ポイントは、評価する立場ではなく、対等な対話者として臨むことです。
1on1の設計として押さえるべきは以下の3点です。第一に、頻度は月1回30分程度から始め、無理のないリズムを作ることです。第二に、テーマは「業務進捗」だけでなく「本人が組織に貢献できていると感じる領域」「モヤモヤしていること」を扱うことです。第三に、管理職側が話しすぎず、7:3で本人に話してもらう時間配分にすることです。
年上部下は、若手部下以上に「聞いてもらえた」実感を求めます。指示・命令のトーンではなく、本人の経験と知見を引き出す姿勢が、関係性の質を大きく左右します。
トークスクリプト(NG例/OK例)
具体的な会話例で、NG例とOK例を比較してみます。
場面 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
1on1の冒頭 | 「最近、成果が出ていませんが、何が原因ですか?」 | 「最近の業務で、手応えを感じている場面と、モヤモヤしている場面をそれぞれ聞かせてもらえますか?」 |
若手指導の依頼 | 「若手に教えてあげてください、それが仕事です」 | 「〇〇さんが持っている△△の経験は、若手には得難いものです。どう活かしていくか一緒に考えたいのですが」 |
業務調整 | 「この業務、負担が大きいようなので外しますね」 | 「体調面も含めて、今の業務量はどう感じていますか?もし調整すべき点があれば教えてください」 |
NG例に共通するのは、評価者としての上から目線と、本人の意思を無視した一方的な判断です。OK例では、本人の経験と知見を尊重し、意思決定に参加してもらう姿勢が貫かれています。
1on1について詳しくは以下の記事をご参照ください。
パフォーマンス可視化アセスメント観点
「感覚的にパフォーマンスが低い」という主観を、客観的な事実に落とし込むことも管理職の重要な役割です。可視化の観点として、以下の4つを押さえます。
- 成果指標:担当業務のアウトプット量・質・納期遵守率
- 行動指標:会議での発言、若手への関与、新業務への挑戦頻度
- 貢献指標:チーム全体への影響、顧客・社外との関係維持
- 意欲指標:1on1での発言、業務改善提案の有無
これらを月次で記録し、本人にもフィードバックする仕組みを作ることで、「なんとなくパフォーマンスが低い」という曖昧な評価から脱却できます。可視化されたデータは、制度改定の議論にも、対処法の意思決定にも不可欠な材料となります。
アルーは年上部下との1on1や管理職としての対応力を育成する「管理職研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗アルーのサービス:管理職に必要なコミュニケーションスキルとは|コツやスキルの身につけ方を解説
シニア社員活躍につなげた育成事例
シニア人材のキャリア再設計と役割再定義によって戦力化した事例を紹介します。ここでは、シニアキャリア研修を通じて本人の意欲と組織への貢献意識を再構築した取り組みを、設計思想を含めて解説します。
サービス業におけるシニアキャリア研修
規模・対象者
アルーが支援したサービス業では、役職定年前後のシニア層を対象にキャリア研修を実施しました。
課題
役職定年後にモチベーションが低下し、周囲への影響も見え始めていたシニア層に対して、これまで会社は明確な打ち手を持てていませんでした。「本人の問題」として捉える空気があった一方で、現場では「組織側が役割を用意できていない」という課題認識も広がっていました。個人と組織、双方の要因が絡み合っていることを踏まえた対処が必要な状態でした。
実施した施策
本研修では、シニア本人が自らのキャリアと強みを棚卸しし、これからの組織への貢献の在り方を再定義するプロセスを設計しました。単なる「モチベーション向上研修」ではなく、①これまでの経験の意味づけ ②現在の組織の課題との接続 ③今後の役割仮説の言語化——という3段階で本人の内省を促す構成にしています。加えて、上司側にも年上部下との対話の設計を学ぶ機会を設け、研修後の1on1で本人の役割仮説を実際の業務にどう落とし込むかを継続的に対話できる状態を作りました。
成果
受講者からは「キャリア資産を棚卸することで、自分が積み上げてきたものを言語化することができた」「あまり意識できていなかった、自分の強みや資産に気づくことができた」「期待されることを理解することで、自分が貢献できる領域もたくさんあることに気づいた」という声が挙がりました。キャリア資産の棚卸をして、周囲からの期待を紐づけることによって、活躍できる領域があることに気づき、効力感が高まっていることを確認できました。
設計のポイント
最も効果的だった設計は、本人の内省と上司の対話設計をセットで用意した点にあります。シニア本人だけを研修に送っても、戻る現場で対話の受け皿がなければ内省は行動に繋がりません。「本人を変える」ではなく「本人と上司の対話の質を変える」ことを核に据えたことが、行動変容の起点となりました。
アルーはシニア社員向けの「50代キャリアデザイン研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗アルーのサービス:50代キャリアデザイン研修
まとめ
「シニア社員はいらない」という感情は、多くの場合、シニア個人の問題ではなく、役割設計・評価制度・処遇のミスマッチという組織側の構造要因から生まれています。感情論のまま放置すれば、若手離職・管理職疲弊という形で組織全体が対価を払うことになります。
意思決定の出発点は、活躍できていないと感じる原因を4類型で見立てることです。そのうえで、活用/配置転換/処遇変更/雇用契約の終了の4選択肢を、法的リスクとセットで並列に検討します。どの選択肢にもコストがあり、どれか一つが正解というものではありません。だからこそ、自社の組織文化・制度・シニア個人の状況を踏まえて、設計思想を持って選び取る必要があります。
現場管理職には、年上部下との1on1設計とパフォーマンス可視化という、今日から動ける手段があります。同時に、人事部門は制度改定と研修設計という中長期の打ち手を並行して進めることが求められます。個人・現場・制度の三層で動くことが、シニア社員活躍の本質的な実現に繋がります。
よくある質問(FAQ)
Q | シニア社員を解雇することは可能ですか? |
|---|---|
A | 日本の労働法では、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められ、パフォーマンスが低いという理由だけでの解雇は通常困難です。実務上は「退職勧奨」というアプローチが取られますが、これも強要にわたらないよう厳格な手順が必要です。必ず社内法務・顧問弁護士と連携してください。 |
Q | 役職定年後の給与を下げるのは同一労働同一賃金に違反しますか? |
|---|---|
A | 役職定年後の職務内容や責任範囲が正社員時代と大きく変わらないにもかかわらず、賃金だけが大幅に下がっている場合、法的な争点となる可能性があります。処遇変更を検討する際は、「役割の変化」と「処遇の変化」を対応させる制度設計が重要で、就業規則や労働契約書で論理的な整合性を明示できる状態が望ましいと言えます。 |
Q | 年上部下との1on1で、何を話せばいいかわかりません。 |
|---|---|
A | ポイントは「評価する立場ではなく、対等な対話者として臨む」ことです。テーマは業務進捗だけでなく「本人が組織に貢献できていると感じる領域」「モヤモヤしていること」を扱い、管理職側が話しすぎず7:3で本人に話してもらう時間配分にします。本人の経験と知見を引き出す姿勢が、関係性の質を大きく左右します。 |
Q | シニア社員の問題は、結局どこから手を付ければいいですか? |
|---|---|
A | 「感情論」から「構造」へと問いを転換することから始めます。具体的には、①該当するシニア社員を4類型で見立てる ②パフォーマンスを4観点(成果・行動・貢献・意欲)で可視化する ③4対処法の中から第1選択を検討する、という順序です。並行して、制度側の課題(役職定年後の役割設計・評価制度・キャリア支援)にも着手することで、個別対応と組織対応が噛み合った状態を作ることができます。 |


