
エレベータートークとは?作り方、例文、練習法まで完全解説
「30秒で今の提案の要点を説明してください」と上司に言われて、すらすら話せる自信はあるでしょうか。エレベータートークとは、限られた短時間で相手の関心を引き、次のアクションにつなげる話し方の技術です。
「PREP法で結論から話しましょう」「30秒でまとめましょう」といった指導はよく見受けられます。ただ、「うまい説明とどう違うのか」「テンプレ通りに話すと棒読みになってしまわないか」「オンライン主流の現代でも使えるのか」といった懸念や疑問を抱く場面も多いのではないでしょうか。
この記事では、論理のピラミッド構造から逆算してトークを組み立てる4ステップ、シーンと時間軸で使い分ける例文、NG例から改善例へのビフォーアフター、録音による自己採点シートまで、「わかる」で終わらせず「できる」まで到達させる内容を紹介します。
この記事でわかること
- エレベータートークの定義と、ピッチ、ブリーフィング、スピーチとの違い
- 論理のピラミッド構造から逆算してトークを組み立てる4ステップ
- シーンと時間軸で使い分ける例文パターン
- NG例から改善例のビフォーアフターと具体策
- 場面拡張型で「わかる」から「できる」に引き上げる練習ロードマップ
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この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
エレベータートークとは
エレベータートークの定義
エレベータートークとは、30秒〜1分程度の短時間で、自分の仕事や企画、提案の要点を相手に伝え、次のアクションにつなげる話し方の技術です。
単なる説明との違いは「次のアクションを引き出す設計」がある点にあります。情報を伝えるだけで終わらせず、「もう少し詳しく聞かせてほしい」「今度時間をとってほしい」といった反応を引き出すことをゴールに置きます。
つまりエレベータートークは「短く話すスキル」ではなく、「短い時間で聞き手の意思決定を動かすスキル」だと理解するとよいでしょう。
エレベータートークの起源
エレベータートークの起源は、1990年代のシリコンバレーにあると言われています。ベンチャー起業家が投資家と偶然エレベーターに乗り合わせた際、目的階に着くまでの短時間で自社の事業を売り込み、追加のミーティング機会を獲得したエピソードから広まりました。
背景にあるのは「多忙な意思決定者は説明を最後まで聞いてくれない」という現実です。だからこそ、最初の15〜30秒で聞き手の関心をつかむ設計が必要になります。
いま改めて注目される背景
現代のビジネスシーンでは、エレベーターに乗り合わせる場面は減っても、短時間で関心を引く必要性はむしろ高まっています。
オンライン会議冒頭の要点共有、社内チャットでの提案、上司への隙間時間の口頭報告——いずれも相手が離脱する前に要点を伝える必要があります。そのため「対面のエレベーターで会った30秒」というシチュエーションは古くなっても、短時間で伝える技術としてのエレベータートークは、意思決定者が多忙でオンラインでしか会えないことも多い今の時代にこそ価値が増していると言えます。
エレベータートーク、ピッチ、ブリーフィング、スピーチとの違い
似た言葉として「エレベーターピッチ」「ブリーフィング」「スピーチ」がありますが、目的と時間軸が異なります。用語を整理しておきましょう。
用語 | 主な目的 | 時間軸 | 想定シーン |
|---|---|---|---|
エレベータートークとエレベーターピッチはしばしば混同されますが、ピッチはより「クロージング(受注や投資決定)」に近く、トークは「関心を引き、次の対話につなげる」入口という違いがあります。
社内提案の場面で「ピッチしてほしい」と言われたら数分の説得材料が求められている、「エレベータートークで簡単に説明して」と言われたら30秒で要点だけ、というふうに使い分けます。
エレベータートークが必要になるビジネスシーン
対面シーンでの活用場面
エレベータートークが力を発揮する対面シーンは以下のとおりです。
- 上司への隙間時間の報告:エレベーターや廊下で会ったときの30秒報告
- 会議での発言:議論の途中で意見を求められたときの短時間発言
- プレゼン冒頭のサマリー:本編の前に「今日お伝えしたいことの結論」を1分で示す
- 社内提案の入口:上司との立ち話で新企画に興味を持ってもらう場面
- 社外の初対面:名刺交換後の30秒自己紹介、展示会ブースでの立ち話
非対面シーンでの活用場面
非対面シーンでの応用こそ、現代のエレベータートークの真価が問われる領域です。
オンライン会議冒頭:議題への入り方として15〜30秒でその日の要点を提示
社内チャット:他部署への協業相談の1メッセージ目
メールの冒頭数行:相手が読み進めるかを判断する最初の一段落
社内SNSの投稿:自分の担当プロジェクトへの関心喚起
非対面では、対面以上に「最初の一文で関心を引けなければ読み飛ばされる」という制約が強くなります。文字で書く場合も、話す時と同じ構成要素で組み立てるとブレません。
非対面でのコミュニケーションのコツについては以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:テレワークでのコミュニケーションの課題5つと活性化のための工夫
エレベータートークのメリット
エレベータートークは、話し手、聞き手、組織のすべてにメリットがあります。
話し手側のメリット
自分の仕事や提案を短時間で説明できるようになることは、話し手自身の思考整理につながります。なぜなら、30秒で説明するには「何を捨てるか」を決めなければならず、そのプロセス自体が自分の主張の本質を言語化する訓練になるからです。
たとえば「今期の営業戦略を見直したい」という漠然とした提案も、エレベータートークを組み立てる過程で「大企業向け販売攻勢と中堅企業向けテレアポの2軸に絞り、日次の行動管理を徹底したい」というふうに具体化されます。この言語化ができると、上司への報告や社内提案の質も一段上がります。
聞き手側のメリット
聞き手にとってのメリットは「時間を奪われない」「判断がしやすい」の2点です。
聞き手は多忙な意思決定者であることが多く、長い説明を最後まで聞く余裕がありません。短時間で要点が整理されて伝わることは、聞き手の理解する負担を減らす配慮そのものです。
組織にとってのメリット
組織全体でエレベータートークが定着すると、会議や報告、提案の効率が上がります。「結論から話す」「30秒で要点を伝える」文化が根付くと、無駄な説明の往復が減り、意思決定のスピードが上がります。
エレベータートークの構成要素
エレベータートークは5つの構成要素で組み立てます。
要素 | 役割 | 秒数目安 (30秒トークの場合) | 秒数目安(60秒トークの場合) |
|---|---|---|---|
基本は、結論+理由・根拠という構成です。理由・根拠は通常2〜3個となりますが、重要な一つだけピックアップするやり方もあります。また、少し時間の余裕があるエレベータートークでは具体例を1つ入れることが、記憶定着のカギになります。
聞き手心理と構成要素の対応
なぜこの順序なのかは、聞き手の心理から説明できます。
- 結論:聞き手は「聞くべきか、聞き流すか」を判断する
- ベネフィット:「自分に関係あるか」を判断する
- 理由:「信頼できるか」を判断する
- 具体例:相手の記憶に残りやすくする
- クロージング:次のアクションのハードルを下げる
つまり構成要素は、聞き手の意思決定プロセスに沿って設計されているのです。
エレベータートークの作り方
エレベータートークの構造を安定して作れるようになるには、感覚に頼らず「論理のピラミッド構造」を土台にする方法が有効です。ここでは以下の4ステップで組み立てます。
- 目的を明確にする(誰にどうしてほしいのかを決める)
- 論理のピラミッド構造を作る
- ピラミッドのどの部分をどの順番で伝えるかを決める
- ネクストステップを明確にして伝える
ステップ1:目的を明確にする
最初にやることは、「誰に、どうしてほしいのか」を一文で決めることです。目的が曖昧なままだと、どれだけ話し方を磨いても相手を動かせません。
たとえば同じ「業務改善プロジェクトの立ち上げ」というテーマでも、目的は以下のように分岐します。
相手 | 相手にしてほしいこと(目的) |
|---|---|
目的を決めると、話に入れるべき情報と省いてよい情報が自動的に絞り込まれます。「部長にプロジェクトを承認してほしい」なら、効果や工数、リスクなど判断材料に直結する要素だけを残し、細かい調査手順は捨てる、といった具合です。
ステップ2:論理のピラミッド構造を作る
次に、伝えたい結論を頂点に置き、その下に理由・根拠の塊を配置するピラミッド構造を作ります。ピラミッドの原則は、上位のメッセージが下位の情報の要約になっていることです。
たとえば「受注業務のデジタル化を優先的に進めるべき」という結論は、以下のように3つの根拠でまとめられます。
階層 | 内容 |
|---|---|
この構造を作るコツは、雑多な情報を似たもの同士でグルーピングし、そのグループを「一言で要約すると何になるか」を考えることです。グルーピングの粒度がバラバラだと、理由がたくさんあってわかりにくいトークになります。
ステップ3:ピラミッドのどの部分をどの順番で伝えるか決める
ピラミッドは意思決定の全体像であり、そのまま全てを口頭で読み上げるわけではありません。時間と相手に合わせて、どの階層を、どの順番で伝えるかを設計します。
基本形は「頂点(結論)→中位(根拠を絞って2〜3個)→クロージング」の順です。時間軸ごとの目安は以下のとおりです。
時間軸 | 伝える範囲 |
|---|---|
「根拠を全部話したい」という誘惑に負けないことがポイントです。ピラミッドの中位は3個程度に絞り、下位の詳細は聞かれたら答える情報として残します。
ステップ4:ネクストステップを明確にして伝える
最後に、聞き手に取ってほしい次のアクションを明確に伝えます。ここが曖昧だと「なるほど、で、私は何をすればいい?」と聞き手に負担が残ります。
ネクストステップの型は以下のようにシンプルです。
判断を求める型:「来週水曜までに、この方向で進めてよいかご判断いただけないでしょうか」
時間を確保する型:「来週の企画会議で20分、詳細をご説明する時間をいただけないでしょうか」
情報を渡す型:「本日中に判断材料の詳細をメールでお送りしますので、目を通していただけないでしょうか」
ネクストステップまで組み込んで初めて、エレベータートークは「情報伝達」から「相手を動かす技術」に変わります。
弊社アルーは「わかる」から「できる」への行動変容を重視した「コミュニケーション研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗研修サービス詳細:コミュニケーション研修
シーンと時間軸で使い分ける例文パターン
同じピラミッド構造でも、時間軸とシーンによって圧縮・展開のしかたが変わります。ここでは代表的な4シーンに、15秒/30秒/60秒の圧縮・展開を組み合わせた例文を紹介します。
上司への隙間時間の報告(業務改善プロジェクトの立ち上げ提案)
15秒版:「部長、次期の業務改善プロジェクトの件ですが、受注業務のデジタル化を最優先で進めるべきだと考えています。理由は、削減できる工数に対して投資額が最も小さいためです。詳細を今週中に共有してよろしいでしょうか。」
30秒版:「部長、次期の業務改善プロジェクトの件ですが、受注業務のデジタル化を最優先で進めるべきだと考えています。理由は3つありまして、費用対効果が最も高いこと、導入リスクが十分低いこと、そして現場の負担軽減効果が大きいことです。詳細な検討資料を今週金曜までにお送りしますので、来週初めに30分だけご判断のお時間をいただけないでしょうか。」
60秒版:「部長、次期の業務改善プロジェクトの件ですが、受注業務のデジタル化を最優先で進めるべきだと考えています。理由は3つありまして、費用対効果が最も高いこと、導入リスクが十分低いこと、そして現場の負担軽減効果が大きいことです。特に費用対効果の面では、他の候補と比較して、投資額に対する年間の工数削減効果が2倍以上になる試算です。詳細な検討資料を今週金曜までにお送りしますので、来週初めに30分だけご判断のお時間をいただけないでしょうか。」
会議での発言(営業戦略見直しの意見)
15秒版:「営業戦略の見直しについて、私は企業規模別に打ち手を変える方向を推したいです。同じ工数でも大企業と個人商店で成果が大きく変わるためです。」
30秒版:「営業戦略の見直しについて、私は企業規模別に打ち手を変える方向を推したいです。理由は2つで、同じ工数でも大企業と個人商店で成果が大きく変わること、そして現行の一律アプローチだと現場工数が分散しやすいことです。具体的には大企業には販売攻勢、中堅企業にはテレアポ、中小企業にはメール中心、と切り分けたいです。次回までにたたき台を作成してお持ちしてもよろしいでしょうか。」
60秒版:「営業戦略の見直しについて、私は企業規模別に打ち手を変える方向を推したいです。理由は2つで、同じ工数でも大企業と個人商店で成果が大きく変わること、そして現行の一律アプローチだと現場工数が分散しやすいことです。具体的には大企業には積極的な販売攻勢、中堅企業にはテレアポによる展開、中小企業にはメール中心のアプローチ、個人商店にはチラシ配布と、企業規模ごとに打ち手を切り分けたいと考えています。今の一律アプローチだと、成約率の高い大企業に投下すべき工数が個人商店対応で削られている状態なので、切り分けによって全体の受注効率も上がると見込んでいます。次回までにたたき台を作成してお持ちしてもよろしいでしょうか。」
プレゼン冒頭のサマリー(社内提案の入り口)
15秒版:「本日は営業体制の再設計についてご提案します。結論は、企業規模別のアプローチ切り分けと目標管理の徹底の2軸で組み立てるべきという内容です。以降15分でこの2軸の中身を順にご説明します。」
30秒版:「本日は営業体制の再設計についてご提案します。結論として、企業規模別のアプローチ切り分けと、年次や週次、日次の目標管理徹底の2軸で組み立てることをお勧めします。理由は、この2軸を組み合わせた他部署では成果が大きく改善しているためです。以降15分でこの2軸の中身を順にご説明し、最後に導入スケジュール案までお示しします。」
60秒版:「本日は営業体制の再設計についてご提案します。結論として、企業規模別のアプローチ切り分けと、年次や週次、日次の目標管理徹底の2軸で組み立てることをお勧めします。理由は、この2軸を組み合わせた他部署では成果が大きく改善しているためです。特に企業規模別の切り分けでは、大企業への販売攻勢と中堅企業へのテレアポを分けたことで、営業一人あたりの受注件数が改善しました。目標管理の面では、年次だけでなく週次や日次の行動管理を組み込むことで、進捗の遅れが早期に発見できるようになっています。以降15分でこの2軸の中身を順にご説明し、最後に導入スケジュール案までお示しします。」
社外の初対面(パートナー候補への初回コンタクト)
15秒版:「本日はお時間をいただきありがとうございます。当社は製造業の企画部門向けに、論理的思考力や問題解決力を反復練習で身につける研修を提供しています。まずは御社の若手や中堅の育成課題を、30分ほどお伺いさせていただけないでしょうか。」
30秒版:「本日はお時間をいただきありがとうございます。当社は製造業の企画部門向けに、論理的思考力や問題解決力を反復練習で身につける研修を提供しています。本研修の特徴は、知識を教える講義形式ではなく、ピラミッド構造を作る演習を100本単位で繰り返す設計にあります。御社の若手や中堅の育成課題を、まず30分ほどお伺いさせていただけないでしょうか。」
60秒版:「本日はお時間をいただきありがとうございます。当社は製造業の企画部門向けに、論理的思考力や問題解決力を反復練習で身につける研修を提供しています。本研修の特徴は、知識を教える講義形式ではなく、ピラミッド構造を作る演習を100本単位で繰り返す設計にあります。たとえば大手通信会社では、若手社員が上司への報告や会議での発言など日常の場面で構造化して伝えられるようになるまでを、3年間の育成体系の中でわかるからできるまで引き上げることが可能です。御社の若手や中堅の育成課題を、まず30分ほどお伺いさせていただけないでしょうか。」
NG例と改善例から学ぶ伝わる直し方
作ったトークを改善するには「NG例と改善例を対比する」のが最も効率的です。ここでは実際によくある5つのNGパターンと改善例を紹介します。
NGパターン | NG例 | 改善例 | 直し方の ポイント |
|---|---|---|---|
直し方の共通原則
NG例を改善例に直すときの共通原則は3つです。
- 一文目に結論を置く(前置きや経緯、背景説明は後回し、または捨てる)
- 1トーク=1論点=1結論に絞る(複数論点あるなら別トークに分ける)
- 数値、具体例、依頼のいずれかを必ず1つ入れる(抽象論で終わらせない)
この3原則で、多くのNGトークは改善できます。
練習ロードマップ【場面拡張型・自己採点シート付き】
エレベータートークは「作った」だけでは身につきません。数多くの演習を通じて反復し、さらに使う場面を段階的に広げていくことで、はじめて実戦で使えるレベルになります。
自己採点シート
まず1本のトークを磨くための採点軸を用意します。録音→文字起こし→自己採点の順で、1本ずつクセを可視化します。
評価軸 | 判定基準 | スコア (1〜5) |
|---|---|---|
各軸5点満点、合計25点で採点します。20点以上を安定して取れれば、実戦投入OKの目安です。
場面拡張型4ステップ
1週間で仕上げるような日付ベースの練習は、本質的ではありません。効果的なのは、使う場面を段階的に拡張していく練習法です。
段階 | 練習の場面 | 何をするか |
|---|---|---|
いきなりStep 4を狙わないことがポイントです。Step 1の自己完結で「自分の中で構造化できる」状態を作らないと、Step 2以降で相手を前にした瞬間に構造が崩れます。
「作った」で終わらせず、場面を段階的に広げていくことが「わかる」から「できる」への近道です。
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エレベータートークを組織のコミュニケーション力に変えた導入事例
エレベータートーク単体の研修は少なく、実際には論理的思考力やコミュニケーション力を伸ばす一環として設計されることが多くあります。ここでは、若手の早期戦力化を目的に3年間の育成体系の中でエレベータートークを繰り返し練習し、「わかる」から「できる」まで引き上げた事例を紹介します。
大手情報通信会社での3年間の若手育成体系事例
規模・対象者
弊社が支援した大手通信会社では、「若手社員の早期戦力化」を経営課題と位置づけ、入社1年目から3年目までの一貫した育成体系を再設計しました。参加者は新卒入社の若手社員で、階層ごとに数百名規模の受講となる年間プログラムです。
課題
これまでの若手育成はOJT主体で、現場任せになりがちでした。その結果、上司や同僚とのコミュニケーションで「結論が伝わらない」「話が長い」「何をしてほしいのかわからない」といった声が現場から多く上がっており、若手が組織の中で早期に活躍しにくい状態が続いていました。人事側は、この状況を抜本的に見直し、3年間で「自分から考えて、動ける若手」を育てる育成体系を構築したいという要望を持っていました。
実施した施策
これまでの若手育成を抜本的に見直し、3年間の育成体系を再構築しました。1年目の研修では、「仕事の基礎動作、コミュニケーションの基礎習得」をテーマとして、エレベータートークを扱いました。2年目には復習としてのエレベータートークを含む「論理的思考力」や「問題解決力」を学び、「チームレベルでの問題解決」に取り組む実践的課題を組み込みました。3年目にはリーダーシップと、自ら課題を発見して解決する「設定型の問題解決」を習得して実践した上で、3年目の最後にはキャリアオーナーシップを醸成する内容としました。
体系全体の中でも、論理的思考力の研修が最大の土台になっています。その研修の中でエレベータートークを繰り返し練習することによって、伝えたいことを簡潔に伝えるコミュニケーション力を磨きました。
成果
受講者からは以下のような声が上がりました。
- 「これまで上司への報告の際に、わかりにくいと言われていた根本的な理由がわかった」
- 「ピラミッド構造を作ることで、端的にわかりやすく表現できるようになった」
- 「上司への報告や会議での発言など、いろいろな場面で活用していきたい」
シンプルな原則であるピラミッド構造を活用することによって、いろいろな場面でエレベータートークを活用できるイメージを受講者自身が持てていることを確認できました。
設計のポイント
効いたのは、知識やフレームワークを大量にインプットさせるのではなく、論理のピラミッド構造をしっかりと作れるようになることに絞り込み、繰り返し練習をすることによって「わかる」の段階でとどまらず「できる」の段階まで引き上げた点です。3年の育成体系という長い時間軸の中で、2年目の論理的思考力を土台に据え、以降のリーダーシップやキャリアの学びに接続する構造にしたことも、単発研修では得られない定着を生んでいます。
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まとめ
エレベータートークは「短く話すスキル」ではなく、「短時間で聞き手の意思決定を動かすスキル」です。構成論だけを理解しても、実戦で使えるレベルには到達できません。
この記事では以下の3つを提示しました。
- 論理のピラミッド構造から逆算する4ステップ:目的明確化 → ピラミッド構造構築 → 伝える順番の設計 → ネクストステップ提示
- シーン×時間軸で使い分ける例文パターン:上司報告、会議発言、プレゼン冒頭サマリー、社外初対面を15秒/30秒/60秒で圧縮・展開する
- 場面拡張型の反復ドリル:5軸25点の自己採点シートと、自己完結→1対1→社内会議→社外会議へと使う場面を段階的に広げる練習
「テンプレ通りに作っているのに実際の場面で棒読みになってしまう」「シーンが変わると同じ話し方になる」といった悩みは、この3つの方法で解消できます。まずは今日、身近な報告書の要約か1日の振り返りから、ピラミッド構造を作る練習を始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q | エレベータートークとエレベーターピッチの違いは何ですか? |
|---|---|
A | エレベータートークは「関心を引き、次の対話につなげる入口」を目的にしており、時間軸は15秒〜1分が中心です。一方エレベーターピッチは「投資決定や受注などのクロージング」を目的にしており、2〜3分と若干長めで、より説得材料が求められます。社内では「トーク」と「ピッチ」を厳密に使い分けていない企業も多いため、依頼された際は「時間の目安」と「求められるゴール」を確認するとよいでしょう。 |
Q | オンライン会議やチャットでもエレベータートークは使えますか? |
|---|---|
A | むしろオンラインやチャットでこそ価値が高まります。非対面では聞き手(読み手)が離脱するハードルが低く、最初の一文で関心を引けなければ読み飛ばされます。構成要素(結論→根拠→具体例→ネクストステップ)は対面と同じで、話す代わりに書く形になるだけです。オンライン会議の冒頭では30秒版、チャットでは15秒版を文字にする、と使い分けるとよいでしょう。 |
Q | テンプレ通りに作ったのに、実際の場面で棒読みになってしまいます。 |
|---|---|
A | 原因は「作った」で終わっていて、録音による反復練習と場面拡張をしていないケースがほとんどです。文字で完成したトークをそのまま話すと、話し言葉のリズムに合わずに棒読みになります。録音→文字起こしで実際に話した内容を確認し、話し言葉として自然な表現に修正するプロセスを繰り返した上で、自己完結の場面から1対1、社内会議へと段階的に場面を広げていくと、自然な話し方に落ち着きます。 |
Q | 練習の成果はどのくらいの期間で出ますか? |
|---|---|
A | 「わかる」の状態までは短期間で到達できますが、「できる」に引き上げるには、日数ではなく使う場面の広がりで捉えるほうが本質的です。まず報告書の要約や1日の振り返りといった自己完結の場面で構造化ができるようになり、次に上司や同僚との1対1、社内会議、そして社外会議と場面を広げていく過程で、実戦での再現性が育っていきます。組織として定着させるには、単発研修ではなく反復ドリルと場面拡張を組み込んだプログラム設計が有効です。 |


