2023年度キャリア意識レポート
大企業における
従業員のキャリア支援の
あり方を探る

調査レポートの詳細はこちら

2023年12月に実施した、企業が行う従業員へのキャリア支援についての意識調査についての結果を発表いたします。

調査の背景

人生100年時代と呼ばれる現代において、働き続けることの必要性が生じています。また少子高齢化が進む中、企業の生産性向上や組織の活性化が喫緊の課題です。

2016年4月の職業能力開発促進法改正以降、従業員は自ら職業生活設計を行い、自発的に職業能力の開発を行う「キャリア自律」を求められ、企業は従業員に対して職業能力の開発支援を行うことが努力義務として課せられました。

ただし、厚生労働省「労働者の働き方・ニーズに関する調査について(中間報告)」の結果を見る限り、従業員のキャリア自律は進んでいないことがわかっています。

	将来の働き方に関するアンケート調査結果

企業側は異動・配置、働き方、社内公募、キャリア研修などを通じ、キャリア支援を行っていますが、うまくかみ合っていない状況が見受けられます。

そこで今回、企業が行うキャリア支援策や組織としてのあり方が、どのように従業員のキャリア展望に影響しているかを探るべく調査を実施しました。

今回の調査に当たり、 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教羽生琢哉氏にご協力を仰ぎました。

※勤務先における自分のキャリアについて、現在と未来に対しどのように認識しているかを「キャリア展望」と定義。

調査結果の全体・図表・付帯資料についてはレポートをご覧ください。

2023年度キャリア意識調査「大企業における従業員のキャリア支援のあり方を探る」

調査結果の詳細

安定した環境で、プライベートも大事にしながら、マイペースに働きたい

あなたが望む仕事・働き方アンケート調査結果

「あなたが望む仕事・働き方」の問いには「安定した環境」を望む回答が7割以上と高く選ばれ、「仕事とプライベート」のバランスを重視する項目に関しても6割を超えています。

 「自分なりのやり方」を大事にしたい意向も5割半ばと高い傾向にあり、総じて自分のペースを大事にしながらキャリアを築いていきたい様子が読み取れます。

一方で、仕事に「スケールの大きさ」や「新しさ」を求めたり、「高い目標」に挑戦したりといった野心的な様子は低い結果でした。

同じ部署で長く働き、キャリアアップしたいと思いながらも具体的なキャリアプランは描けていない

今後のキャリアプランアンケート調査結果

続く「今後のキャリアプランについて」では、「同じ勤務先の特定の部署で長く働きながらキャリアアップしたい」と回答した人が約3割と最も高い結果になりました。

「キャリアアップしたいと思うが、具体的なキャリアプランのイメージは持っていない」「キャリアアップをしたいと思わない・考えたことがない」も約3割近くが回答しています。

「まずは勤務先勤めをしてキャリアアップしつつ、将来的には独立したい」や「転職をしながら、複数の勤務先や業界をまたがってキャリアアップしたい」「特定の勤務先での勤務を本業としながら、副業・兼業してキャリアアップしたい」と自らのキャリアを勤務先と切り離して描いているのは5~6%と低い傾向となりました。 

総じて、自らのキャリアは同じ勤務先に依存しているとも受け止められます。

組織内でのキャリア形成を望みながらも、勤務先におけるキャリア展望は高くない

キャリア展望

勤務先におけるキャリア展望を5段階でたずねたところ、定的な評価よりも否定的な評価の割合が約1割上回結果になりました。

「この勤務先で働くことは自分のキャリア形成にとって重要な意味がある」という項目のみ、肯定的評価と否定的評価が拮抗しました。

勤務先がキャリア形成を直接的に支援する施策に対しては、期待値も満足度もそれほど高くない

キャリア形成の期待・満足度調査結果

キャリア形成に期待することとその満足度を30項目に分類し2軸図に示しました。30項目のすべてで、期待よりも満足が低い結果となり、満足度は多くの項目で中間の3点を下回りました。

「ワークライフバランス」「勤務地選択」「テレワーク」「定時までの勤務」など、仕事とプライベートの両立支援に対しては期待が高く、満足度は平均を少し下回りました。

「雇用保障」「事業の安定性」「福利厚生」など、安定的な働き方への支援は期待も高く満足度も高い傾向にあります。

自身が従事する仕事に対する「やりがい」「興味・楽しさ」「成長機会」「適性に合う」ことに対しては、期待も満足度も全項目の満足度の平均値を上回りました。

総じて、安定的に働くことを希望する従業員の現状に対し、それを支援する勤務先の支援策に対しては期待値が高く、かつ満足もしており、その環境下で仕事への「やりがい」「興味・楽しさ」「成長機会」 に一定は満足しているようです。

一方で、「キャリア形成を意識した異動・配置」「キャリア面談」「自己主導による異動」「副業」など、直接的なキャリア形成につながる支援に対しては期待も満足度も低く、全項目の平均値を下回っています。

安定的な働き方、仕事とプライベートの両立支援はキャリア展望を高める重要施策にはならない可能性がある

キャリアの展望・形成における満足項目の相関関係図

直接的にキャリアを支援する「異動・配置」はキャリア展望との相関が高いことがわかりました。

特に、自身が従事する仕事に対する認識とキャリア展望は総じて高い相関がみられ、 一方では、安定的な働き方や仕事とプライベートの両立を支援する項目については、キャリア展望との相関は低い結果となりました。

従業員は勤務先の「組織の器」が大きいと感じつつも、組織としての余裕のなさを強く認識している

組織のあり方に対する認識調査結果

「組織のあり方」を考えるにあたり、本調査では「器」という概念を用いました。日本を代表する経営者である稲盛和夫氏は著書『心。』の中で、

組織はそのリーダーの「器」以上のものにはならないものです。なぜなら、その生き方、考え方、また心に抱いている思いがそのまま、組織や集団のあり方を決めていくからです

と述べています。「器」とは入れ物・支えるものであり、管理職や人事部・経営者がつくる「組織の器」によって、そこで働く従業員の心理や行動も規定されると考えられます。

「所属する組織を人に例えると、現在の組織はどのような性格を持っていると捉えていますか?」という設問に「組織の器が小さい」群と「組織の器が大きい」群のどちらにより当てはまるかを6段階で回答してもらいました。

多くの項目で「組織の器が大きい」と認識している比率が高く現れています。一方で、心の余裕や豊かさを示す指標が低位に集中し、特に「余裕がない」は強く認識されています。

「組織の器」が大きいほどキャリア展望が高まる

組織のあり方の認識の違いとキャリア展望調査結果

組織のあり方について、中間の3.5点より高く認識している人達の群を「組織の器が大きいと認識している群」、低く認識している群を「組織の器が小さいと認識している群」に分け、キャリア展望のポイント平均を比較したところ、組織の器が大きい組織ではキャリア展望も高い結果でした。

器が大きい組織では、上司のマネジメント・リーダーシップへの満足度が高い

組織のあり方から見たキャリアに影響する勤務先の満足度調査

キャリアに影響を及ぼす項目のうち、キャリア展望に相関が高い15項目と低い5項目、それぞれの満足度を、「組織の器が大きいと認識している群」・「小さいと認識している群」ごとに平均値を出し、さらに差を確認しました。

組織の器が大きいと認識している群は総じてキャリア形成に影響する項目への満足度が高い結果となりました。

中でも、満足度に大きく差が出た項目は、「役割の明確さ」「上司のマネジメント」「上司のリーダーシップ」となっています。組織の器が大きいと認識している群では、キャリア展望に影響を及ぼす要素として、特に上司のマネジメント・リーダーシップへの満足が高いと言えます。

組織の器を大きくすることで、企業の行う様々な支援がキャリア展望を高めることにつながってく

組織のあり方への認識の違いとキャリア展望・キャリアに影響する項目の相関関係

組織の器が大きいと認識している群と小さいと認識している群ごとに、「キャリア展望」と「キャリア展望に影響を及ぼす項目」満足度の上位15項目・下位5項目との相関係数を出し、さらにその差を確認しました。

「異動・配置」「意義・やりがい」「興味・楽しさ」に関しては、組織の器の大小にかかわらず、キャリア展望を高めると考えられます。

組織の器が大きいと認識している群では、キャリア展望との相関が高い項目において、総じて高い相関がみられました。すなわち、器が大きな組織では、企業が行う直接的なキャリア支援や勤務先への信頼/期待を高める施策が従業員のキャリア展望を高めることにつながると考えられます。

差分が大きかったものについて、「成長の機会」「自己主導で異動できる機会」「ワークライフバランス」「テレワークの推進」「雇用保障」は、組織の器が大きいと認識している群ほど相関も高い結果が示されています。つまり、器が大きな組織であれば、上記に関する施策は従業員のキャリア展望を高める可能性が強くなると考えられます。

一方で、「定時までの時間内で仕事を終える雰囲気」は組織の器が小さいと認識している群のほうが器が大きいと認識している群よりも相関係数が高く、器が小さな組織であればキャリア展望を高める可能性が考えられますが、器が大きな組織であれば 「定時までの時間内で仕事を終える雰囲気」とキャリア展望との関連はほとんどないと考えられます。

 

調査結果の全体・図表・付帯資料についてはレポートをご覧ください。

2023年度キャリア意識調査「大企業における従業員のキャリア支援のあり方を探る」

考察

本調査では、「企業が行うキャリア支援策や組織としてのあり方が、どのように従業員のキャリア展望に影響しているか」というリサーチクエスチョンのもと、従業員の仕事観・勤務先におけるキャリア展望の現状と、企業が行うキャリア支援策や組織としてのあり方と従業員のキャリア展望の関係性を確認しました。

調査結果から見えてきたことは、大手企業の従業員は安定した環境や仕事とプライベートの両立を大事にしながらマイペースに働きつつキャリアアップしたいと思う一方で、その見通しは立っていない現状でした。

企業は従業員のキャリア自律を高めるために様々な施策を打っています。その背景には人事担当者として「キャリア自律してほしいけれど、離職されても困る。キャリア自律が高まると、デキる社員ほど離職していくのではないか・・・」と複雑な心境があるのも事実ではないでしょうか。

本レポートで明らかになったことは、組織としてのあり方が、人としての「器」の概念のように大きなものであれば、そこで働く従業員は上司のマネジメント・リーダーシップに満足しながら、企業の提供する環境・支援策を存分に生かしつつ仕事にやりがい・楽しさを感じている様子でした。

組織としての「器」は必ずしも「今・ここ」の上司のマネジメント・リーダーシップによって規定されるものばかりではないと考えます。企業としての歴史、その中で築き上げてきた仕組み・文化、その中で育った従業員一人ひとりとその関係性、それらが複合的に組織としての器につながっています。経営者・管理職・人事のあり方と同時に、従業員一人ひとりのあり方・関係性にも着目していくことで、従業員の「キャリア展望」は高まり、企業が「キャリア自律」を促す目的の実現にもつながっていくものと思われます。

このほかに調査レポートの付録には

1. 補足資料
 ① 人としての器の研究について
 ② キャリア展望の向上がもたらす状態

2. 世代別のキャリア観の違いについて

を掲載していますのでダウンロードしてご覧ください。

  • では、どうすれば「組織の器」を大きくできるのか?
  • 施策の優先順位は?

といった課題解決に関心がございましたら、ぜひ1度ご相談ください。
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調査概要

 

実施期間 2023年12月1~3日
調査方法 Web調査
有効回答数 208(性・年代を均等割付)
スクリーニング条件 従業員規模1000名以上、正社員、最終学歴大卒以上

有効回答数の内訳等詳細につきましてはレポートをご覧ください。

2023年度キャリア意識調査レポート

2023年度キャリア意識レポート
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