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部門長・事業部長が育たない本当の理由と、意思決定力を実地で鍛える育成の進め方

次世代を担う部門長・事業部長候補の育成を体系的に進めようとすると、必ずぶつかるのが「研修だけでは意思決定力は育たない」という壁ではないでしょうか。MBA的な知識をインプットしても、新規事業立案の発表会を派手に盛り上げても、プログラム終了後に受講者の熱が急速に冷めていく――こうした悩みは、多くの人事・育成担当者に共通します。

本記事では、当社が実施してきた様々な事例をもとに、意思決定力の核心を「情報の量と質」と「決断軸」の2つに分解し、それを実地で鍛える育成の進め方をお伝えします。業種は違っても「部門長・事業部長クラスに、どう意思決定者としてのパラダイムシフトを起こすか」という課題は全業種に共通します。この記事を読むと、以下のことがわかります。

この記事でわかること

  • 部門長・事業部長クラスが研修だけでは育たない構造的な理由
  • 意思決定力の核心である「情報の量と質」と「決断軸」の磨き方
  • 研修と現場実践・対話を往復させる育成プログラムの設計
  • 育成でつまずきやすい5つのパターンと、試行錯誤から生まれた対処法
  • 自社で取り組み始める際の具体的な第一歩

この記事の監修者

落合 文四郎

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎

1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。

部門長・事業部長が研修だけでは育たない構造的理由

部門長・事業部長クラスの育成は、若手や課長層の育成とは根本的に異なる難しさを持ちます。まずはなぜ研修中心のアプローチだけでは成果につながりにくいのか、その構造を3つの側面から見ていきます。

求められるのは「実務の実行者」から「意思決定者」への転換

部門長・事業部長への昇格は、単に「担当範囲が広がる」ことではなく、「実務の実行者」から「意思決定者」へのパラダイムシフトが求められる節目です。これまで成果を出してきたやり方――担当業務の細部を把握し、自らプレイヤーとして判断する動き方――が、このレイヤーではむしろ機能しなくなります。

なぜ難しいかというと、経営とは本質的に「意思決定」であり、意思決定できる人を育てるには、高い視座で判断する経験を積ませ、その経験を通して視野を拡大し、決断の軸を作っていくしかないからです。座学で「戦略立案」や「意思決定」を知識として学んでも、自分の視座が低いままでは、判断の材料も判断の基準も持てません。

たとえば「戦略立案」というテーマひとつを取っても、担当業務レベルなら計画表を作れれば足りますが、部門長レベルでは「複数の事業戦略の中で自部門の位置づけをどう定義するか」「経営陣にどう納得してもらうか」まで求められます。だからこそ、視座の転換に必要な経験は、研修という限られた時間の中では完結せず、現場での実地経験と対話の場を組み合わせる必要があります。

経営判断には矛盾の両立が求められる

部門長・事業部長のもう一つの特徴は、「経営が本質的に抱える矛盾」を両立させながら判断する必要があることです。売上向上とコスト削減、安定と変革、深化と探索、短期と中長期、経済価値と社会価値――経営とはそもそも矛盾に満ちた活動です。

課長クラスまでは、矛盾する要素のどれかに集中すれば成果が出ることが多いのですが、職位が上がれば上がるほど、様々な矛盾を両立していく思考が重要になります。12万人を超える管理職・経営幹部の意思決定スタイルを分析した調査でも、階層が上がるにつれ、成功している経営幹部ほど複数の選択肢を視野に入れた意思決定スタイルを用いる傾向が示されています(Brousseau, K. R., Driver, M. J., Hourihan, G., & Larsson, R. (2006))。

この「両立思考」は、二者択一で答えを出す訓練を積んできた実務の実行者ほど身につけにくく、講義で学ぶだけでは腹落ちしません。実際の意思決定場面で、矛盾する要素の間に立って葛藤する経験を経て、初めて自分のものになります。

抽象的な要件語では現場の育成に接続できない

3つ目の理由は、そもそもリーダー要件が抽象的な言葉のまま定義されているケースが多いことです。「リーダーシップ」「変革力」「戦略思考」といった要件が並んでいても、これらは評価者によって解釈がぶれ、育成担当者にとっても「何をどう教えれば身につくのか」がわかりません。
要件が抽象的なままだと、研修設計もアサインメント設計も「なんとなくリーダーっぽい経験を積ませる」という運用になりがちです。結果として、育成投資に対する成果指標も「本人の意識が変わった気がする」といった定性的な感想にとどまってしまいます。この状態を抜け出すには、要件を「何を通じて何を鍛えるのか」というレベルまで具体化することが出発点になります。
リーダーに求められる資質と身につけるべきスキルについて詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗関連記事:リーダーに求められる10の資質を紹介!身につけるべきスキルと育成方法

経営判断力の核心は「情報の量と質」と「決断軸」の2つ

構造的な難しさを踏まえた上で、次に整えたいのが「何を鍛えるのか」の言語化です。ここでは、経営判断力の核心を「情報の量と質」と「決断軸」の2つに分解し、それぞれの磨き方を整理します。

高い視座での経験と対話が「情報の量と質」を広げる

質のよい意思決定に必要なのは、まず「情報の量と質」です。ここでいう情報は、単にデータを集めることではなく、「高い視座で物事を見た時に見えてくる景色」を指します。

情報の量と質を広げる方法は大きく2つあります。1つは高い視座で考える経験そのもの――自部門を超えた全社視点、経営視点で物事を捉え直す経験です。もう1つは、その考えを他者にぶつけて対話することです。

なぜ対話が効くかというと、判断は通常「今、見えている範囲」だけに支えられており、それだけに頼ると適切な判断ができない危険性があるからです。高い視座で考えたことを他者にぶつけて対話することが、自分がまだ知らない、見えていない情報にアクセスするルートになります。だからこそ、経営リーダー育成プログラムでは「一人で考え抜く」だけでなく、社内外の多様な立場との対話の場を意図的に組み込むことが重要です。

「決断軸」はジブン軸と会社軸を重ね合わせて磨く

もう一つの核心が「決断軸(判断軸)」です。決断軸とは、複雑な状況下で「会社と自身の双方にとって正しい意思決定」を自律的に行うための、確固たる判断基準を指します。

決断軸は、次の2つの軸を重ね合わせることで磨かれます。

内容

ジブン軸(インサイドアウト)

リーダー自身の価値観、あり方、内発的動機に基づく意思決定の軸

会社軸(理念・DNAの体現)

明文化されている理念に留まらず自社の歴史・過去の意思決定の積み重ねで組織に息づくDNAに基づく意思決定の軸

どちらか片方だけでは十分ではありません。ジブン軸だけでは会社の一貫性から外れ、会社軸だけでは他人の言葉を借りた判断になり、修羅場でぶれます。この2つを重ね合わせて初めて、「実務の実行者」から「自社の理念と自身のリーダーシップを重ね合わせた意思決定者」へのパラダイムシフトが起こります。

部門長・事業部長クラス固有の期待役割の見立て方

部門長・事業部長クラスの要件を書く際に特に重要なのは、「担当業務や自部門のことだけを見ていた視座」から「全社戦略との整合の中で自部門を位置づけ、矛盾を両立させながら意思決定する視座」への転換を、期待役割として明示することです。

具体的には、「全社戦略と自事業部戦略の整合を取りながら、両立思考で複数の選択肢を統合した意思決定を下せる」「自身の価値観と自社の理念・DNAを重ね合わせ、自分の言葉で語れる」といった役割期待を、育成の到達地点として言語化します。この到達地点があって初めて、後述する経験設計が「点」ではなく「線」としてつながります。

意思決定力を実地で鍛える育成プログラムの進め方

何を鍛えるかが定まったら、次はその力を実地で獲得させるための経験設計です。ここでは、複合事業体の次世代経営リーダー育成プログラムで採用されている考え方をベースに、設計原則を整理します。

コンフォートゾーンの外に「変革の旗」を立てる経験を設計する

意思決定力を実地で鍛える経験設計の第一の原則は、受講者に「自組織のコンフォートゾーンの外に変革の旗を立てる」経験を積ませることです。ここでいう「変革の旗」とは、自社・自事業のアイデンティティとコアバリューの変化をビジョンに落とし込んだものを指します。

新規事業立案のような「打ち上げ花火」型のテーマではなく、「自社・自事業のビジョンと変革シナリオ」を、自身のインサイドアウトと会社の理念・DNAをつなげて構築させる――このプロセスが、視座の転換と決断軸の磨き上げを同時に起こします。

実際の育成プログラムでは、次のような要素を組み合わせて経験を設計します。

経験設計の観点

検討すべき項目

何を考えさせるか

社長・事業部長としての視座で自社・自事業の未来を描き、変革シナリオまで落とし込む

誰と対話させるか

上司との対話、受講者相互のフィードバック、投資家視点でのフィードバックなど、多様な視点を意図的に組み込む

どんなインプットと

組み合わせるか

ESGと投資家/人的資源管理論/PEST分析/ビジネスモデル/事業戦略/インテグラル理論など、視座を上げるための知識を段階的に投入

どう内省させるか

個人史・社史の振り返り、メンタルモデルの内省、適応課題との対峙

研修と現場実践・対話を往復させる中長期構造

次に効くのが、「研修と現場実践・対話を往復させる中長期構造」です。一定期間の集中研修で完結させるのではなく、複数回の研修DAYを月次程度のペースで配置し、その間の期間で「関係者との対話」と「ビジョン実現に向けた取組み」を行わせる構造にします。

この構造の意図は、研修で得た視座と学びを、現場での対話と実践で試し、そこで見えた課題や葛藤を次の研修DAYで再び深めるという「往復」を起こすことにあります。集中研修で一気に詰め込むと、知識としては入っても意思決定者としての振る舞いには変換されません。1年程度の期間を通して、研修と現場を行き来させることで、視座の転換と決断軸の磨き上げが定着します。

この中長期構造でとくに重要なのが、半年程度のプログラムの中で「最終発表会を1回で終わらせない」設計です。たとえば1回目はビジョンを語りフィードバックを受ける場、2回目はビジョンに向けて組織をどう変革していくかという変革シナリオを語り質疑応答を受ける場、そして最後はプログラム全体を通した自身の成長、今後の抱負を語る場というような形です。このような形式にすることで、「発表の場が埋まるスライドができたら検討が止まる」という現象を回避できます。

1年集中型と2〜3年中長期型の選び方

育成プログラムの全体設計には、大きく2つの型があります。どちらを選ぶかは、対象者の状況と経営課題の緊急度で決めます。

特徴

適した状況

1年集中型

月次〜隔月ペースで研修DAYを配置し、1年間で集中的に育成

部門長・事業部長候補を早期に立ち上げたい / 選抜対象が明確

2〜3年中長期型

ジブン軸・会社軸から両立思考までを学び試行錯誤する年→自部門での変革の実践、と実践期間を含める

次世代リーダー層全体を計画的に育成 / 中長期での定着も含めて設計したい

いずれの型でも共通するのは、研修と現場実践・対話を往復させる構造を持たせ、「知っている」から「意思決定者として振る舞える」まで引き上げることです。
弊社アルーは、次世代リーダーの育成に活用いただける「リーダーシップ研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗研修サービス詳細:リーダーシップ研修

育成でつまずきやすいポイントと対処法

ここまでの考え方を実装する過程で、多くの人事・育成担当者が同じようなポイントでつまずきます。ここでは、当社が様々な事例を実施する中で直面してきた5つのつまずきと、その対処法を整理します。

#

よくあるつまずき

対処法

1

最終発表(新規事業立案等)が「打ち上げ花火」で終わり、プログラム後に受講者の熱が続かない

テーマを「自社・自事業のビジョンと変革シナリオ」に変更し、インサイドアウトと会社の理念・DNAをつなげて「リーダーとしての旗」を言語化するプロセスに再設計する

2

グループワークでフリーライダーが発生する

個人ワークに切り替え、相互フィードバックを頻繁に組み込む。結果として助け合いも生まれ、絆の醸成も担保できる

3

発表時間が埋まる「見栄えのするスライド」ができた時点で検討が止まる

発表会を複数回に分ける(例:1回目(中間)=ビジョン/ 2回目(終盤)=ビジョンに向けた変革シナリオ成長/ 3回目(最終)=リーダーとしての自身の成長)ことで、検討を最後まで深めさせる

4

MBA的知識の習得(技術的課題)には気づけても、自身のリーダーとしての成長課題(適応課題)に気づけない

メンタルモデルを内省し、自身の適応課題と対峙するワークを、様々なチャレンジを経験した後のプログラム後半に組み込む

5

個別フィードバックの質と量を予算・日程制約の中で両立できない

講師による1on1・受講者同士のFB・全体での公開1on1など複数形式を試し、講師の観点と全体での学びの共有を両立できる形式を選ぶ

特に1番目の「打ち上げ花火問題」は、選抜リーダー育成の設計を大きく左右する論点です。単発の新規事業立案では、「発表会で盛り上がるが、翌週から現場に戻ると熱が急速に冷める」という現象が起こりがちです。テーマを「自社・自事業のビジョンと変革シナリオ」に変え、上司との対話をMUSTとしつつ「合意形成は不要」とすることで、変革の旗を各人が自分ごととして立て続けられるようになります。

Before/After: 育成設計の考え方の転換

観点

Before(旧来型)

After(意思決定者育成型)

テーマ

新規事業立案など「学びにはなるが打ち上げ花火」型

自社・自事業のビジョンと変革シナリオ(インサイドアウト×会社軸)

演習形式

グループワーク中心(フリーライダー発生)

個人ワーク+頻繁な相互フィードバック

研修構造

単発の集合研修で知識をインプット

月次DAY×研修と現場対話の往復(1年〜複数年)

発表会

1回

2回に分割(ビジョン発表+リーダーとしての旗・成長報告)

育成の焦点

技術的課題(MBA知識・スキル)中心

技術的課題と適応課題(メンタルモデルの変容)の両輪

部門長候補育成の事例

ここまで抽象的に説明してきた打ち手を、具体の事例で裏付けます。以下は、複合事業をグループ内にもつ大手企業で、複数年の試行錯誤を経て運用されている次世代経営リーダー育成プログラムです。

複合事業体における次世代経営リーダー育成プログラム

複数業種をグループ内にもつ大手企業において、次世代の経営を担う部門長・事業部長候補層を対象に実施しています。経営人材育成プログラムの中核プログラムとして位置づけました。

複合事業体経営で事業テーマが「選択と集中」から「多様性の追求」へと転換する中、調整型のリーダーが多く、変革型のリーダーを育成する必要がありました。加えて、従来の新規事業立案型プログラムでは「打ち上げ花火」で終わり、プログラム後に受講者の熱が持続しない課題がありました。

経営判断力の核心を「情報の量と質」と「決断軸(ジブン軸×会社軸)」の2つに分解して育成テーマを再設計しています。期間は1年間、その中に複数の研修DAYを月次で配置し、DAYとDAYの間の期間で関係者との対話と現場実践を組み込む往復構造としています。研修DAYの流れは、大きく次の4フェーズで構成されます。

フェーズ

意図

① 自分のインサイドアウトと向き合う(前半)

インサイドアウトと両立思考のリーダーシップを理解し、個人史・社史の振り返りを通してジブン軸を言語化する

② 外部環境の視点(アウトサイドイン)を取り入れる(中盤前半)

ESG・投資家視点・人的資源管理論・ビジネスモデル・事業戦略を学び、アウトサイドインの視点で自社・自事業を捉え直す

③ 中間発表会

インサイドアウトとアウトサイドインの視点を踏まえて自社・自事業のビジョンを語り、フィードバックを受ける

④ 変革シナリオを描く(中盤後半)

組織の変革課題を分析し、自社・自事業のビジョンと変革シナリオを構築。メンタルモデルを内省し適応課題に向き合う

⑤ 最終発表会(後半)

2回に分けて実施。1回目はビジョンと変革シナリオ、2回目はリーダーとして掲げる旗と自身の成長を語る

この構造の意図は、序盤で「ジブン軸」を掘り下げてから中盤で「会社軸・アウトサイドインの情報」を注ぎ込み、後半でその両者を重ね合わせて「変革シナリオ」に統合する順序にあります。加えて最終テーマを過去は新規事業立案としていたところから「自社・自事業のビジョンと変革シナリオ」に刷新しました。上司との対話はMUST・合意形成は不要とし、演習はグループワークではなく個人ワーク+頻繁な相互フィードバック形式を採用しています。

結果として、受講者が自身のインサイドアウトと会社の理念・DNAを重ね合わせた「リーダーとして掲げる旗」を自分の言葉で語れる状態となり、プログラム終了後も変革の一歩目に取り組み続けている受講者の取り組みが報告されています。

設計のポイントは次の4点です。①意思決定力を「情報の量と質」と「決断軸」に分解し、それぞれに対応する経験と対話を設計したこと、②ジブン軸(インサイドアウト)と会社軸(理念・DNA)を重ね合わせて意思決定者へのパラダイムシフトを起こす構造にしたこと、③技術的課題(MBA的知識)だけでなく適応課題(メンタルモデルの変容)まで扱ったこと、④発表の機会を複数回に分けて検討の深まりを担保したこと。複数年の試行錯誤を経て、アルーが顧客企業とともに練り上げた設計となっています。

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自社で取り組む際の第一歩

事例の全体像を掴んだところで、自社で取り組み始める際の具体的な第一歩を紹介します。

現状の要件・アサイン・振り返りの3点を棚卸しする

第一歩にやるべきは、自社の現状を「要件定義」「アサインメント」「振り返り」の3点で棚卸しすることです。以下の観点で現状を確認します。

  • 要件定義: 部門長・事業部長の要件は、実行者から意思決定者、両立思考への移行の観点で書けているか。抽象語(リーダーシップ・変革力等)止まりになっていないか。
  • アサインメント: 育成対象者に、コンフォートゾーンの外で「変革の旗」を立てる経験を積ませられているか。それとも「難しそうな仕事を任せる」場当たり的な運用になっているか。
  • 振り返り: 研修や実務経験のあとに、技術的課題だけでなく適応課題(メンタルモデルの変容)まで内省させる仕組みがあるか。アンケート満足度で終わっていないか。

この3点のどこが最も弱いかを特定するだけで、次に手を打つべきポイントが明確になります。

いきなり全体の育成体系を作り替えようとせず、まずはできるところから見直しを始めてみるのはいかがでしょうか。

まとめ

本記事では、部門長・事業部長クラスが育たない構造的理由と、経営判断を実地で鍛える育成の進め方を、事例をもとに解説してきました。要点を整理します。

  • 部門長・事業部長は「実務の実行者」から「意思決定者」へのパラダイムシフトが求められ、加えて経営の矛盾を両立させる思考が必要になるため、研修だけでは獲得しづらい
  • 意思決定力の核心は「情報の量と質」と「決断軸」の2つ。前者は高い視座での経験と対話で、後者はジブン軸(インサイドアウト)と会社軸(理念・DNA)を重ね合わせて磨く
  • 経験設計はコンフォートゾーンの外に「変革の旗」を立てさせる構造で、研修と現場対話を往復させ、発表会を複数回に分けて検討の深まりを担保する
  • 育成の焦点は技術的課題(MBA知識)だけでなく、適応課題(メンタルモデルの変容)まで扱う必要がある
  • 自社で検討をする際は、現状を「要件定義/アサインメント/振り返り」の3点で棚卸しするところから始めてみる

部門長・事業部長の育成に唯一の正解はありません。組織の規模・業種・経営課題の緊急度によって最適な設計は異なります。だからこそ、自社の状況に合わせた設計を組み立てるうえで、この記事を出発点にしていただけたら幸いです。より具体的な設計についてご相談されたい方は、以下から無料相談をご活用ください。

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よくある質問(FAQ)

Q

部門長・事業部長の育成は、何名規模の企業から体系化が必要ですか?

A

規模の絶対値よりも「次世代リーダー層を計画的に育成する必要性が経営課題として顕在化しているか」で判断します。目安として、部門長・事業部長候補が5名以上いる/後継者育成が経営上のリスクとして議論されている、といった状況になれば体系化に着手する価値があります。

Q

「情報の量と質」と「決断軸」の2つのうち、どちらから鍛えるべきですか?

A

順番というより、両方を同じプログラムの中で並行して扱うのが有効です。実際の育成プログラムでも、序盤で決断軸につながる自身のインサイドアウトや会社のDNAを掘り下げつつ、中盤で事業環境分析や投資家視点(情報の量と質)を学び、後半で両者を重ね合わせて自社の変革シナリオを描く、という流れが取られています。決断軸だけを先に磨いても実行力にならず、情報の量と質だけを鍛えても他人の言葉での判断になります。両立で磨いて初めて修羅場でぶれない意思決定力が醸成されます。

Q

「打ち上げ花火」型の発表会にならないためには、テーマ設定以外に何が効きますか?

A

テーマを「自社・自事業のビジョンと変革シナリオ」に変えることに加えて、次の2点が効きます。1点目は発表会を複数回に分けること(1回目=ビジョン / 2回目=変革シナリオ / 3回目=リーダーとして掲げる旗と自身の成長)。複数回あることで、「最終発表のスライドが埋まる情報が集まったら検討終了」を防げます。2点目は、プログラム後半に適応課題(メンタルモデルの変容)と対峙するワークを組み込むこと。技術的課題(知識・スキルの習得)だけで終わらせず、リーダーとしての自身の成長課題に気づく機会を作ることで、プログラム後も変革の一歩目に取り組み続ける受講者が増えます。

Q

育成成果を経営層に説明する際、何を可視化すれば納得してもらえますか?

A

360度などの定量指標だけを追いかけると、育成の中核である視座の転換や決断軸の磨き上げが捉えきれません。研修DAYごとのアウトプット(ビジョン・変革シナリオ・リーダーとして掲げる旗)と、中間期間での現場実践の進捗、および適応課題への向き合い方の変化を組み合わせて示すのが有効です。経営層への説明では、「受講者が自社の理念・DNAと自身のリーダーシップを重ね合わせて語れるようになった」といった質的変化と、「変革の一歩目としての現場での動き」を併せて提示すると納得を得やすくなります。

アルー株式会社
アルー株式会社
20年以上、企業向けに人材育成コンサルティングや研修を提供してきた。新入社員・管理職といった階層別研修や、海外駐在員やグローバルリーダーなどのグローバル人材育成、DX人材育成に強みを持つ。その実績は取引企業総数1400社以上、海外現地法人取引社数400社以上に及ぶ。京都大学経営管理大学院との産学連携など、独自の研究活動も精力的に行っている。

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