
1on1ミーティングの進め方5ステップ|部下タイプ別スクリプトと形骸化を防ぐ運用設計
「1on1ミーティングを導入したものの、雑談で終わってしまう」「話すテーマが尽きて2回目以降が持たない」——1on1ミーティングの進め方に悩む人事担当者やマネジャーは少なくありません。形だけ続けているだけでは、部下の成長にも組織の成果にもつながらないのが現実です。
本記事では、1on1の基本ステップに加え、時系列×部下タイプ別の会話スクリプト、面談シート・アジェンダテンプレート、形骸化を防ぐKPI設計まで、明日から使える運用ノウハウを解説します。
この記事でわかること
- 1on1の基本的な進め方5ステップ
- 部下との関係性・成長フェーズ別の会話スクリプト
- 面談シート・アジェンダテンプレートの型
- 上司がやってはいけない7つのNG行動
- 1on1のKPI設計と効果測定の方法
- 評価面談・目標管理との切り分け方
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この記事の監修者

アルー株式会社
代表取締役社長
落合文四郎
1977年、大阪府生まれ。 2001年、東京大学大学院理学系研究科修了後、株式会社ボストン コンサルティング グループ入社。 2003年10月、株式会社エデュ・ファクトリーを設立し、代表取締役社長に就任。 2006年4月、アルー株式会社に社名変更。京都大学博士(経営科学)。
1on1ミーティングとは
1on1は、上司と部下が1対1で定期的に対話する時間です。ただの業務報告ではなく、部下の成長支援と関係構築を目的にした「部下のための時間」として設計します。
「上司が話す時間」ではなく「部下が話す時間」であることが最大の特徴です。会話比率の目安は上司2〜3:部下7〜8とされ、上司の役割は指示ではなく傾聴と問いかけに置かれます。
1on1について詳しくは以下の記事をご参照ください。
1on1ミーティングの進め方5ステップ
1on1は「準備→チェックイン→対話→合意形成→フォロー」の5ステップで進めると、雑談で終わらず成長対話に転換できます。各ステップを一つずつ解説します。
ステップ1:準備(部下・上司それぞれの事前準備)
部下・上司が事前に準備することで、対話の密度を高めます。準備を省くと、1on1は「今日は何を話しますか?」から始まる雑談になりがちです。上司と部下がそれぞれ事前に準備するかどうかで、対話の中身が大きく変わります。
部下の事前準備(面談前日までに提出)
- 話したいテーマ(3つまで)
- 前回のアクションアイテムの進捗
- 現在困っていること・迷っていること
- 上司に相談したいキャリア・成長のテーマ
上司の事前準備(面談当日の朝までに)
- 部下が提出したテーマの確認
- 前回の記録の読み返し
- 部下の最近の業務状況(成果・トラブル)の把握
「部下側の準備が薄いまま始めてしまい、結局上司が話し過ぎる」というパターンは多くの現場で起きています。事前提出をルール化するだけで、対話の質は大きく変わります。
ステップ2:チェックイン(関係性のウォームアップ)
チェックインとは、本題に入る前の5分間で心理的安全性を作る時間です。いきなり業務の話に入ると、部下は身構えてしまい本音を話しにくくなります。
チェックインで使える問いの例:
- 「最近、仕事以外で楽しかったことはありますか?」
- 「今日、この時間に来る前はどんな気持ちでしたか?」
- 「今週、体調やコンディションはいかがですか?」
チェックインの目的は雑談を楽しむことではなく、「今日、この場で何を話しても大丈夫」という空気を作ることです。3〜5分で切り上げ、本題に移ります。
ステップ3:対話(テーマ別質問と傾聴)
対話のフェーズでは、部下が提出したテーマに沿って、上司が問いかけと傾聴で内省を引き出します。テーマは大きく「相互理解」「業務」「キャリア」「健康・関係性」の4カテゴリに分類できます。
テーマ別質問例(一部抜粋)
カテゴリ | 質問例 |
|---|---|
キャリア | 「3年後、どんな仕事をしていたいですか?」「今の役割で足りていないと感じるスキルは?」 |
健康・関係性 | 「最近、睡眠は取れていますか?」「チーム内で相談しにくい相手はいますか?」 |
質問の目的は「答えを引き出す」ことではなく「部下自身が考える機会を作る」ことです。上司が話す割合は2〜3割程度に抑え、沈黙を恐れずに待つ姿勢が求められます。
ステップ4:合意形成(次のアクションの言語化)
対話で見えてきた気づきや課題を、次回までのアクションとして言語化します。ここを省くと「良い話ができた」と満足するだけで終わり、行動変化につながりません。
合意形成で使うテンプレート
- 部下のアクション:何を、いつまでに、どのレベルで
- 上司のサポート:何を、いつまでに提供するか
- 次回1on1で振り返る指標:何をもって進捗を確認するか
「アクションが抽象的すぎて、毎回同じ話をしている」という状況を防ぐには、必ず「動詞+期限+具体的状態」で書き残すことです。
ステップ5:フォロー(次回までの伴走と記録)
1on1は「実施すること」ではなく「行動変化を起こすこと」がゴールです。次回までの間、上司は部下のアクション進捗を軽くサポートし、記録を残しておきます。
フォローで大切なのは、次の3点です。
- チャットで短い声かけ(「先週話したあの件、どうなっていますか?」)
- 部下がアクションで詰まった時に相談できる余白
- 上司自身も自分のアクション(サポート)を実行する
記録は共有ドキュメントに残し、部下も上司もいつでも見返せる状態にします。属人化した紙のメモは避け、次の上司に引き継げる形にしておくことも重要です。
【部下との関係性別】1on1の進め方
同じ5ステップで進めても、部下との関係性や成長フェーズによって話し方は大きく変わります。ここでは「時系列×部下タイプ」の3つの代表パターンで、スクリプトを紹介します。
初回×新入社員:関係構築フェーズの会話設計
初回の1on1では、業務の深い話に入る前に「1on1とは何か」の目的合意と、部下の人となりを知る関係構築を優先します。
初回1on1のスクリプト例(新入社員配属直後)
上司「今日は初めての1on1だから、まず1on1がどんな時間かを一緒に確認したいと思います。この時間は評価の場ではなく、〇〇さんが仕事で困っていることや、キャリアで考えていることを自由に話してもらう時間です。私は答えを持っていないので、一緒に考える立場で聞きます。何か話しにくいなと思うことがあれば、その時に教えてください。」
部下「はい、ありがとうございます。」
上司「まず、〇〇さんが学生時代に一番熱中していたことを教えてもらえますか?仕事の話ではなく、〇〇さんという人を知りたくて。」
目的合意と関係構築だけで30分を使い切る覚悟が必要です。
3回目×中堅社員:業務深掘りフェーズの会話設計
3回目以降は関係性が安定してくるので、業務課題の深掘りとキャリアの中期的な視点に踏み込めます。中堅社員に対しては、「答えを教える」ではなく「気づきを引き出す」問いが特に有効です。
3回目1on1のスクリプト例(中堅社員・プロジェクトをリード中)
上司「前回、新規プロジェクトのメンバー間の連携がうまくいっていないという話がありましたね。あれからどうなりましたか?」
部下「実は、まだ改善していなくて…。私が指示を出しても、みんな動きが遅い感じで。」
上司「なるほど。指示を出しても動きが遅い、と感じているのですね。その時、〇〇さんはどんな気持ちになりますか?」
部下「イライラします。なんで自分だけ焦ってるんだろう、って。」
上司「その『自分だけ焦っている』という感覚、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?チームのメンバーは、〇〇さんと同じ情報を持っている状態でしょうか?」
「なぜ動かないのか」を上司が推測して答えを与えるのではなく、部下自身が「情報の非対称性」に気づくよう問いを重ねます。
半年後×元気がない部下:内省を引き出すリカバリーのための会話設計
半年経過し、明らかに部下のエネルギーが落ちている場合は、業務の話よりも先に「今、何が起きているか」の把握が優先です。
半年後1on1のスクリプト例(部下の様子に変化を感じた時)
上司「最近、少し疲れているように見えます。私の見立てが違っていたら教えてほしいのですが、何かありましたか?」
部下「…特に何もないですけど。」
上司「そうですか。ただ、私は〇〇さんの表情や声のトーンから、何かあるのかもしれないと感じました。今日話したくなければ話さなくて大丈夫ですが、もし話せることがあれば聞かせてください。」
(沈黙10秒〜30秒)
部下「…実は、今の業務が自分に合っていない気がしていて。」
沈黙を恐れないことが最大のポイントです。上司が沈黙に耐えられずに話し始めると、部下は本音を話す機会を失います。
上司がつまずく3大課題への対策
上司側が1on1でつまずく典型的な3つの課題と、それぞれの対策を示します。
つまずき | 症状 | 処方箋 |
|---|---|---|
話し過ぎ | 上司の話が7割以上を占め、部下が受け身になる | 「今日は自分は聞き役」と面談前に3回唱える/タイマーで自分の発話時間を計測 |
沈黙が怖い | 部下が考えている沈黙に耐えられず、上司が質問を重ねる | 沈黙は「部下が考えている時間」と定義/10秒数えてから次の言葉を発する |
引き出せない | 部下が「特にないです」で終わり、対話が深まらない | 「Yes/Noで答えられない問い」を事前に5つ用意/「もう少し詳しく」と一言添える |
これらは「知っている」だけでは変わらず、練習が必要です。ロールプレイやピア勉強会で繰り返し体験することで、少しずつ習慣化されます。
傾聴力について詳しくは以下の記事をご参照ください。
🔗おすすめ資料:傾聴力とは?聞く力が高い人の特徴やトレーニング方法をプロが解説
形骸化させない運用設計
1on1を「やっただけ」で終わらないためには、面談シートやKPIなど、組織的な運用の型が必要です。個々のマネジャーのセンスに任せず、仕組みで支える設計を紹介します。
面談シート・アジェンダテンプレート・振り返りテンプレート
コピペで使える3つのテンプレートを紹介します。すべて共有ドキュメントで運用し、部下と上司が同じ画面を見ながら記入する形が理想です。
アジェンダテンプレート(部下が事前記入)
項目 | 記入内容 |
|---|---|
上司に聞きたいこと | |
相談したいキャリアの話 | ★★★☆☆ |
今週のコンディション(5段階) |
面談シート(当日、対話の中で記入)
項目 | 記入内容 |
|---|---|
部下の気づき | |
上司からのフィードバック | |
次回までのアクション(部下) | 動詞+期限+具体的状態 |
次回までのサポート(上司) | 動詞+期限+具体的状態 |
振り返りテンプレート(1on1後、部下が単独で記入)
- 今日の1on1で一番印象に残ったこと
- 明日から変えたい行動
- 次回話したいテーマ
KPI設計(実施率・満足度・行動変化)の3層アプローチ
手法 | 指標 | 測定方法 | 目標水準 |
|---|---|---|---|
行動変化 | アクションアイテムの実行率/行動変化スコア | 部下の自己評価+上司評価 | 実行率70%以上 |
3層のうちどれか一つでも極端に低い場合、運用設計に問題があります。実施率が高くても満足度が低ければ「やっつけ1on1」、満足度が高くても行動変化がなければ「気持ちよく終わる雑談」になっています。
やってはいけない7つのNG行動と代替行動
上司が無意識にやってしまう7つのNG行動と、それぞれの代替行動を対比します。
NG行動 | 代替行動 |
|---|---|
部下の話を途中で遮って結論を出す | 話し終わるまで待ち、要約して返す |
評価や査定の話を持ち込む | 「これは評価の場ではない」と最初に伝える |
「大丈夫?」「頑張って」で終わらせる | 「具体的にどこが大変?」「何があれば楽になる?」と踏み込む |
スマホやPCを見ながら聞く | デバイスを閉じ、部下に体を向ける |
「次回までにこれをやっておいて」と一方的に指示 | 「次回までに何ができそうですか?」と部下に決めてもらう |
上司自身が第三者から自分の1on1をフィードバックしてもらう仕組みがあると、行動変化に繋がりやすいでしょう。
アルーは1on1に必要な傾聴・コーチングスキルを体系的に鍛える「管理職研修」を提供しています。詳しくは以下のページをご覧ください。
🔗おすすめ資料:管理職研修
1on1を組織に定着させた事例
情報通信業の管理職層100名超に対する「1on1定着プロジェクト」において、単なる研修受講で終わらせず、面談シート整備とKPIによる可視化を組み合わせることで、実施率と行動変化の両立を実現した事例を紹介します。
情報通信業における1on1定着プロジェクト
規模・対象者
アルーが支援した情報通信業では、管理職層100名超を対象に、1on1の導入と定着プロジェクトを実施しました。
課題
1on1導入から半年が経過していましたが、マネジャーごとに実施頻度・内容にばらつきが大きく、「実施しているマネジャー」と「形骸化しているマネジャー」の二極化が起きていました。部下側からは「上司が話し過ぎる」「毎回同じ業務進捗の確認で終わる」「何のためにやっているのかわからない」という声が上がっていました。
実施した施策
1on1の目的の再定義とマネジャー間の目線合わせから着手しました。管理職向けに1日の集合研修を実施し、傾聴・問いかけ・沈黙の扱いをロールプレイで練習しました。あわせて、面談シート・アジェンダテンプレート・振り返りテンプレートを共通化し、全マネジャーが同じ型で運用できる状態を作りました。研修だけではなく、実践期間を設けて、3ヶ月後に実施した結果の振り返りを提出してもらうとともに、今後の1on1実施に向けての自己効力感を測定する内容にしました。
成果
受講者からは「実務での1on1で難しい場面を取り上げてロールプレイを繰り返したことによって、実際の1on1での困った場面で活用できるイメージをもてた」「年上部下との1on1に困っていたが、人として尊重する姿勢をもちながら、フラットに対話するという感覚を掴むことができた」という声が挙がりました。1on1を実施するときの心理的ハードルとなる難所への対応のイメージがつき、今後の1on1実施に向けての自己効力感が高まっていることを確認できました。
設計のポイント
最も効果的だった設計は「マネジャー個人のセンスに依存しない仕組みづくり」でした。テンプレートとKPIで型を作り、四半期ごとの振り返りで運用改善のサイクルを回すことで、二極化を解消できました。研修は入り口として重要ですが、その後の運用設計がなければ形骸化することを、この事例は示しています。
🔗おすすめ資料:部下との面談で使える質問集
まとめ
1on1を機能させるには、5ステップの型を押さえたうえで、部下の成長フェーズ・状態に合わせて会話設計を変える柔軟さが必要です。同時に、面談シート・KPI・NG行動リストなど「マネジャー個人のセンスに依存しない仕組み」で組織的に支えることが、形骸化を防ぐ最大のポイントです。
1on1が成果につながっているかどうかは、実施率や満足度ではなく、部下の行動変化で測ります。来週の1on1から、まず1つのテンプレートを試してもらうこと、そしてマネジャー側の話す時間を減らすことから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q | 1on1の適切な頻度と時間はどのくらいですか? |
|---|---|
A | 週1回〜隔週1回、30〜60分が標準的な運用です。頻度を下げすぎると関係構築が進まず、上げすぎると負荷になります。まずは隔週30分から始め、部下との関係性やテーマの深さに応じて調整することをおすすめします。 |
Q | 部下が「話すことがない」と言う場合、どうすればよいですか? |
|---|---|
A | 「話すことがない」の背景は3つに分かれます。①事前準備の型がない、②上司への心理的安全性が低い、③1on1の目的が共有されていない、のいずれかです。アジェンダテンプレートの事前提出をルール化する、初回にチェックインで関係性を作る、目的を最初に再確認する、の3点で改善できます。 |
Q | リモート環境での1on1で気をつけるべきことは何ですか? |
|---|---|
A | 対面と比べて表情や熱量が読み取りにくいため、①カメラONを推奨(強制はしない)、②沈黙を10秒以上待つ姿勢、③チャットで補足コメントを併用する、の3点が有効です。また、リモートでは雑談が減るため、チェックインを対面時より長めに取ることも効果的です。 |
Q | 1on1と評価面談を同じ上司が担当する場合、部下が本音を話さないのでは? |
|---|---|
A | 実際に起きやすい課題です。対策は、①1on1の目的を「評価ではなく成長支援」と最初に明言する、②1on1の記録を評価データに転用しないルールを組織で決める、③評価時期に1on1の内容を持ち出さないことをマネジャー間で徹底する、の3点です。1on1と評価面談の役割分離を仕組みで守ることが、部下の心理的安全性を担保します。 |


