"問いを持ち続ける"リーダーへ

対話と内省で挑んだ基幹部門長・部長職の研修改革

株式会社ヤマハコーポレートサービス 導入事例

ヤマハ集合写真
左からアルー吉岡、井手様、伊藤様、高原様

株式会社ヤマハコーポレートサービスは、ヤマハグループのシェアード業務を担っている企業です。今般、ヤマハ人事部と一緒に検討した結果、経営の軸足を価値創造へシフトさせる一環として、これまで基幹部門長・部長職向け研修スタイルは選抜型のみ実施していましたが、経営状況の変化に応じ、部長職以上の登用時には必ず受講する研修スタイルを新しく立ち上げました。スキルのインプットから脱却し、対話と内省を通じて自らのビジョンと志を磨く研修プログラムについて伺いました。

【株式会社ヤマハコーポレートサービス】
HR事業部 人材マネジメント部 採用教育グループ マネジャー 井手様

HR事業部 人材マネジメント部 採用教育グループ  伊藤様
【ヤマハ株式会社】

人事部 人事戦略企画グループ 主幹 高原様


  • 課題解決型経営からの転換により、自ら価値を創造できるリーダーの育成が急務となった

  • 全社戦略を着実に実行する強みのある文化がある一方で、次代を担う部長層が自ら問いを立て、変革を促す力が求められた
  • 従来のインプット型研修では個人の潜在力が活かされず、成長実感も乏しいというジレンマがあった

 [ 研修対象者 ]

新任基幹部門長・新任部長

[ 研修テーマ ]

対話を通じた
内面的なビジョンの醸成

[ 研修内容 ]

①エフェクチュエーション
(現有リソースからの発想転換)
②クレヨンワーク
(絵を用いた自己開示と対話)
③30年後想像ワーク
(30年後を想像して語り合う)


  • 上司が答えを教えるのではなく良質な問いを投げかけるスタンスが組織全体に少しずつ浸透してきた
  • 受講した基幹部門長が「自分の組織でも対話の場を持つべき」と自発的に行動変容する動きが生まれた
  • 今後の中期経営計画やビジョン策定において、より長期的な視点で考える共通意識が形成されつつある
文内、敬称略

-皆さまの所属部署と役割を教えてください


井手 株式会社ヤマハコーポレートサービスは、ヤマハおよびヤマハグループ各社に対してさまざまなシェアード業務を担当している会社です。

私はその中の採用教育グループで、採用と教育の両方を担当しております。研修の企画はヤマハ株式会社の人事部と一緒に進めつつ、実際の運営実務を私たちが担っています。

伊藤 私は株式会社ヤマハコーポレートサービスとして、研修の運営・企画を担当しています。もともとエンジニア出身で、約35年間にわたって半導体開発に携わってきたのですが、役職定年のタイミングで人事部門に異動しました。人事歴は6年ほどになります。組織開発にも以前から関心があったこともあり、研修を通じて組織をよくしていけないかという思いを持ちながら取り組んでいます。

高原 ヤマハ株式会社の人事部、人事戦略企画グループに所属し、人材開発、その中でも教育を主に担当し、最近ではラーニングマネジメントシステムの導入などにも携わっています。実際の研修企画は伊藤‧井手が率先して進めているので、私は全体的な方向性の観点から側面的に関わっています。

課題・背景
価値創造の時代へ向かう経営変革が生んだリーダー育成

-今回の研修を実施するにあたっての課題や背景を教えてください


伊藤 2020年頃、この研修を企画した背景として、事業課題そのものが変化してきたというところが大きいと思っています。以前は事業部ごとに生産部門‧営業部門が分かれていて、その非効率さを解消することが優先課題でした。機能ごとに効率を上げ、コストを削減して利益を高めるという方向性は「何をやるべきか」がはっきりしていたので、強いトップダウンのリーダーシップで進めることができ、収益性もかなり高まりました。

しかし、利益は上がっていても、売上はあまり変わっていませんでした。次のフェーズとして、売上を伸ばすためには「価値を創造する」ことが不可欠で、そのためには「何が正解か」を自ら探っていかなければなりません。ところが、トップダウンで物事を進めてきた組織では、上からの指示を実行することには長けていても、自分の意見を発信したり、新しい問いを立てたりすることが少ない部門長や部長職も出てきていて、それが課題になりつつありました。

ちょうどその頃、前社長から「対話をベースにした組織活性化」というキーワードが出てきました。そういった経営側の意向も受けながら、研修の軸を「価値を創り出すこと」と「良質な対話を経験すること」に重点を置く研修スタイルにしました。

そして、まずは基幹部門長と部長というトップに近い役職から「対話をベースにした組織活性化」とは何たるかを浸透させていくのが、組織開発の目線からも効率的だと考えました。


-この研修はこれまでの研修とどのような点が異なりますか?


井手 以前は、MBA*的なインプット型のカリキュラムが多い研修体系が中心でした。ケーススタディやグループディスカッションで最適解を探す訓練は、課題解決型の時代には合っていると思います。ただ、関わってくださっていた先生方から「ヤマハにはこれだけのポテンシャルがあるのに活かされていない」「30年振り返って全然成長していない」という指摘をずっと受けていて、ジレンマを感じていました。

それと比較すると今回の研修は、今までにない全く新しいタイプのリーダー研修だと感じます。対話型セッションでは、緩やかに時間が流れていて、受講者がそれぞれ内省するのを待つという、とても濃密な時間だと感じました。このような時間が「次こういうことをやりたい」につながり、志を新たに、次世代のヤマハを考えていく一歩になるのだと思いました。

*MBA…経営学修士。過去の成功事例(ケーススタディ)を分析し、論理的な正解や効率的な解決策を導き出す教育スタイルの象徴として用いています。

ヤマハ_雑談写真4

楽器の弦を用いた一輪挿しのアートや
楽器にちなんだ展示物を眺め語り合う様

実行施策
クレヨンで"モヤモヤ"を描き、自分のビジョンを引き出す研修設計

-この研修はどのような手法で設計されましたか?


高原 今回の研修は、外からスキルや知識を与えるのではなく、自分の内側にあるビジョンや志を引き出すことに主眼を置いています。「課題があって、それをどう解決するか」のディスカッションではなく、「そもそも自分は何をやりたかったのか」「自分のこれまでの価値観はどんなものか」というところに遡る作業です。社長になってから初めて会社全体のビジョンを考えるのでは遅いので、部長職の段階からそういった思考を巡らせる体験が必要だと感じています。

研修の中ではエフェクチュエーションの考え方も取り入れています。大きなビジョンを描いた後に、「では今自分たちが持っているものの中で、できることは何か」という問いに収束させていくことで、拡散したまま終わらず、現実のアクションにつながる学びになっています。


-具体的にどのようなワークを実施しましたか?


伊藤 特徴的なのが「クレヨンワーク」です。鉛筆やボールペンではなく、あえてクレヨンを使って、モヤモヤしたものを殴り書きのように描いてもらいます。それを見ながら「なぜここが緑なのか」「なぜ端っこにこれが書いてあるのか」と他者から問いかけられることで、自分一人では気づかなかった意味や思いを発見するプロセスが生まれます。

「クレヨンワーク」での対話を通して、モヤモヤを言語化することで自分の価値観や思いが見えてきます。リーダーは言葉で伝えることを求められるので、自分のモヤモヤを発信できる言葉にしていくことが、このワークの目的です。

また、「30年後のヤマハを想像する未来インタビュー」というワークも行っています。5年後や10年後ではなく、30年後という自分が現役でいる期間を超えた未来を考えることで、次世代へバトンを渡すという視点が生まれ、より大きなビジョンを語れるようになります。

これまでは成果を上げた社員に対する社外インタビューという設定で実施していましたが、社史編幕のためのインタビューへと設定を変更し、変革をもたらし次世代に繋げるインタビューへと方向転換しました。「引退後、30年前のあなたの行動があったからヤマハが今こうなっていますね」というインタビューシナリオを設定することで、自分のアクションが未来につながっているというイメージを持ってもらうようにしています。


-基幹部門長・部長職に対して研修を実施するにあたっての懸念点はありましたか?

井手 忙しい基幹部門長・部長職の方々だからこそ、あえてじっくりと対話する場に価値があると感じています。普段は会議や業務に追われていて、未来のことをゆっくり考える時間が取れないような方々が集まって1日対話するというのは、それ自体が貴重な体験になっています。


高原 最初は「今日のゴールは何なんだ」と戸惑っている様子の受講者も、「クレヨンワーク」でメッセージ化しにくいものを言語化しようとすると、個性が見えてきて、自己開示が進みます。時間が経つにつれてだんだんと自己開示が進んでいく、その変化を目の当たりにして、対話の場の価値を改めて実感しました。

ヤマハ_雑談写真1

クレヨンで心のモヤモヤを抽象的に描き
詳細に描けない特性を活かしたワークの様子を思い返

成果
対話が組織に根づく「支援的な関わり方」への意識変化

-研修後、現場でどのような変化が見られましたか?

伊藤 研修の効果を直接測定するのは難しいのですが、会社全体として「支援的な関わり方」が浸透してきているという感覚はあります。キャリア面談が導入された当初は「何を話せばよいのか」「何のためにやるのか」という段階から始まっていたのが、今では対話的なコミュニケーションを大切にする雰囲気になってきています。上司が答えを持っていてそれを部下に教えるのではなく、良質な問いを投げかけるというスタンスが少しずつ浸透してきているなと感じています。どの研修がどれだけ貢献しているかは正直わかりませんが、こういった意識が高まってきているのは確かです。


アルー吉岡 研修を受講した基幹部門長の方から、「こういう対話の場は自分の組織でも持った方がよいと思った」という趣旨の発言がありましたね。研修で体験した対話の価値を、自分の職場にも持ち帰ろうとしてくれているのは大きな成果だと思っています。

井手 すぐに目に見える変化というよりは、ジワジワと変化していくものだと思っています。ただ、こういう研修を受けた方々が、次に中期経営計画やビジョンを考える時に、少し先の未来まで見て考えるようになってくれれば、それが共通意識になって組織が変わっていくのかなと期待しています。


ヤマハ_雑談写真3

この研修を通じて部長層から対話の重要性を浸透させ
他施策も相まって全社へ波及しつつある、と話す

AI 時代でも変わらない問いの力を組織全体に広げていく

-今後、アルーとともにどのような取り組みを進めていきたいとお考えですか?


高原 中期経営計画のキーワードは「価値創造」です。音・音楽による社会課題解決を通じた新価値創造、音・音楽の愉しみ方を広げる体験価値の提供、技術×感性で磨く製品の本質的価値の提供。いずれも「価値」がキーワードになっています。そのためには、課題解決ではなく「私たちが市場に提供できる価値は何か」という問いを常に立て続けていかなければなりません。ニーズも手段も刻々と変わっていく時代に、変わらず必要なのは「問いを持ち続ける力」だと思います。AI がどれだけ進化しても、適切な問いを立てる能力はますます重要になる。研修でスキルではなく「問い」を大切にしているのはそういう理由からです。

伊藤 ヤマハは商品力が高く、楽器業界での確固たるポジションを持っています。ただ、独りよがりな価値創造にならないよう、もう少し市場‧マーケット寄りの視点を持つことが必要だと感じています。部長職の研修にもそういったマーケット視点を取り入れながら、ブラッシュアップし続けていきたいと思っています。定期的に対話の場を設け、価値創造について語り合う文化を組織に根付かせていくことが、これからの目標です。

-最後に、アルーは皆さまにとってどのような存在でしょうか?


伊藤 アルーとお付き合いしていて感じるのは、こちらが答えにくいことを問いかけてくださるということです。今日のインタビューもそうなのですが、その都度自分の中でいろいろと考えさせられる。それが結果的に面白い、知的な刺激をいただいているという感覚です。お付き合いする中で、そういった刺激をいただけることをとても大切にしています。

井手 AI が最適解を出せる時代になっても、「ヤマハの存在理由は何か」という問いは AI には考えられません。そのために自分の思いを昇華させ、言葉にしていくことが必要だと思います。アルーは「問いを立てる」「自分の思いを言語化する」という分野に長けているパートナーとして、これからも一緒に取り組んでいきたいですね。

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株式会社ヤマハコーポレートサービス

従業員数 : 600名(2025年3月現在)
事業内容 :シェアードサービス事業

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