
――貴社の事業内容を教えてください。
小野 株式会社ラクスは、主にITクラウド事業を展開しています。企業のバックオフィス業務とメール関連業務を効率化するサービスを提供しており、特に「楽楽シリーズ」の「楽楽精算」「楽楽明細」は解約率が低く、長期的に利用いただいています。当社はこれらの製品を中心に、今後も更なる拡大を目指しています。
アルー中川 今ではBtoBの商材として誰もが知っているサービスですよね。
小野 おかげさまで、導入実績の拡大およびテレビCMに伴い市場での認知も広がってきています。私たちとしても、多くのお客様に選んでいただけていることが大きな強みだと考えています。
――小野様が所属する人財開発課について教えてください。
小野 人財開発課は人事部に属し、各事業部で行われるOJTや専門教育に加え、部門横断的な教育による人材育成を担っています。
アルー中川 部署を横断した研修は、等級ごとに実施されているのでしょうか?
小野 はい、 当社ではコンピテンシー評価制度を導入しており、人事部は各等級に求められるコンピテンシーを強化する教育を行っています。
――今回ご支援させていただいたC2コンピテンシー強化プログラムは、どのような位置付けになりますか?
小野 当社の等級制度は、まずTR(トレーニー)から始まり、次にC1(ビジネスの基礎段階)へ昇格します。その上のC2は全体の半数以上を占める主要な層で、現在約1200名ほどが在籍しています。C2は自立して目標を達成し、一人でPDCAを回せるレベルとされています。C2からC3(リーダークラス)に昇格し、その後AM(アシスタントマネージャー、課長補佐)、そしてマネージャークラス、または専門性を発揮するSP(スペシャリスト)へと進みます。C3はC2社員を取りまとめる一部リーダー業務や、より広範囲・より複雑な業務を遂行する役割を担います。
キャリアパスの階層図
コンピテンシー評価(思考力、行動力、人間関係力、組織推進力)に基づいている。
アルー宮越 御社では新卒採用が少ないため、TRとC1の割合は会社全体で見て少ないですね。
小野 はい、おっしゃる通りC2で中途採用する人数が非常に多く、全体の多くを占めています。新卒採用者は現状、ビジネス職と開発職で合わせて20名程度と少ないですが、2025年からはビジネス職の新卒採用を再開しており、今後も継続・拡大をしていく予定です。そして新卒社員は3年後にはC2に昇格することが見込まれています。
当社では、新卒・中途採用者に対して、体系的な教育プログラムを提供しています。個々の課題や経験に応じたコンテンツを用意することにより、C2等級として十分に現場で活躍できるような基盤を築き、継続的なキャリアアップを支援しています。
――C2等級社員を育成する上での課題・背景を教えてください。
小野 アルーさんにC2コンピテンシー強化プログラムを依頼した当初、C2等級社員の課題として「思考力」と「行動力」の2点が挙げられていました。この課題は、当社のコンピテンシー評価で定められている「思考力」「行動力」「人間関係力」「組織推進力」の4つの軸に基づき、マネジメント層や部長クラスへの定期的なヒアリングを通じて特定されたものです。
現場の上長へのヒアリングでは、C2等級社員が問題の本質を捉え、構造的に整理して効果的な解決策を導き出すスキルをさらに向上させる必要があり、体系的な思考プロセスの強化が課題として聞かれました。
部長へのヒアリングでも、問題解決のプロセスにおいて課題が見つかりました。「問題とは何か」という根本的な定義を構造的・体系的に捉えるスキルや習慣について、全体的に引き上げたいということでした。
当社は「業務の仕組み化」と「再現性」を重視しているため、C2も思考力の向上が必要だと考え、研修を企画しました。また、C2等級社員は現場の最前線で活躍するプレイヤーであるため、思考力とそれを実行に移す行動力が不可欠であると考えています。
具体的に言うと、C2等級社員は自分でPDCAサイクルを回せることが求められます。現状ではPDCAを回せている人が多いものの、問題特定が曖昧だったり、改善のスピードや質に課題が見られる場合があります。よりPDCAの粒度を上げてサイクルを回せるようになることが期待されています。

「課題って何だっけ?」が口癖となり、上長から部下まで
課題の本質を問い続ける風習が全社に根付いている。と、小野様。
――具体的な研修内容の部分についてお伺いしたいです。
小野 C2コンピテンシー強化プログラムは、Day0のeラーニングから始まり、Day1とDay2でアルーさんの研修、Day3で内製による職種別社内研修という3段階で実施されました。
アルー中川 アルーの研修に加えて、Day3で内製研修を行っており、外部研修で学んだことをベースに、自社独自の具体的な状況に落とし込んでOJTに繋げているのは、素晴らしい取り組みだと感じました。
小野 私自身も以前別の研修を受けた際に、やりっぱなしの研修で終わってしまうことが多いと感じていました。研修で学んだことを実際の業務に活かせるような、具体的に落とし込む機会が不足していると感じたため、Day3ではこの点を考慮して内製研修を実施しました。自社独自のケースで具体的な実践につなげるこのプロセスは、この研修に限らず他の人材開発プログラムでも活用しています。
この研修には複数の職種の受講者が参加していますが、営業職の場合、アルーさんの研修で学んだ内容を、ラクスの具体的な商材に適用して実践しています。その他の職種については、現状復習用のコンテンツとして、コンピテンシーの理解を深める目的で実施しております。今後は営業職以外の職種についても学習内容を定着させるコンテンツを企画・検討していきたいと考えています。
アルー中川 現在、御社は積極的に採用活動を行っているため、採用した人財を現場で即戦力として活躍させるには、それ相応の気合の入った仕組みが必要ですね。
小野 C2コンピテンシー強化プログラムは、私が当課に異動してきて最初に担当した重要なミッションでした。そのため、必ず成果を出したいという強い思いがあり、すぐにアルーさんに相談して手厚く進めました。ボリュームゾーンへの施策のため、インパクトが大きいという責任感もあったことで、個人的なモチベーションにも繋がっていました。

ラクスは「成長」をキーワードに、人財育成への積極投資を行っている。
――C2コンピテンシー強化プログラムを実施後、どのように評価されたのかを教えてください。
小野 定量的な育成目標がありますが、研修の効果(コンピテンシー評価の向上)が表れるまでには約1年かかるので、それまでの間はKPIとして研修の活用度、NPS(顧客推奨度)で評価しています。アルーさんの研修はこれらの数値が非常に高かったことが、周囲を納得させる根拠となりました。
一般的には、NPSは平均10~20でも良好とされる中で、当時70を超えることもあったため、非常に高い評価を得られたと言えます。60~70という数値が出たことが、研修の価値を示していると言えます。また、活用度も95%以上で具体的実務に役立つという評価でした。
アルー中川 ちょっとお伺いしたのが、事業部門のマネージャーから「この研修は次回も実施されますか?」とか「うちの部下にぜひ受講させたいのですが」といった声が聞かれたとか。
小野 はい、来ています。本当にありがたいことです。
研修を受けてから、上長が担当する案件においても感謝の声が多く聞かれるようになりました。これは、次の研修実施へのモチベーションにもつながりますし、今後の課題感を捉える上でも役立っています。非常に満足された方が多かったのだと思います。
具体的な声としては、「この研修をきっかけに、受講者が思考方法を理解し、アウトプットの質が格段に向上した」とか「実業務に照らして思考する習慣が身についた」という声が聞かれました。また、「思考力と行動力について体系的に学ぶ機会となった」とか「グループワークを通じて他のメンバーと交流を深めることもできた」という、上長からの具体的なフィードバックが得られています。
アルー中川 事業部門とここまで密に連携して研修を構築している人財開発チームはなかなかいません。上長からのコメントをきちんと収集している点が素晴らしいですね。
小野 その点については、KPIを重視する企業文化が後押ししているかもしれません。よいものを作るためならと、事業部門の皆様も非常に協力的で、Day3のコンテンツケースの策定や、一部講師担当までしてくれることにとても感謝していますね。
――C3など上の層の強化も検討していますか?
小野 当社では、事業拡大に伴い社員数が増加しているため、社員のマネジメント層への昇格が課題となっています。現在、C2に比べて上の層が不足しているため、成長したC2等級社員を早期にマネージャーやスペシャリストに育成することが、今後の重要な課題です。
アルー中川 今のところ順調に進んでいるのですか?
小野 現在進んではいますが、まだまだ発展させていきたいです。昨年から今年はAM等級・C3等級向けプログラムの強化に取り組んできましたが、これに留まらず、さらに手厚くしていきたいと考えています。C2からC3に昇格した社員を、いかに上の等級に引き上げるかが特に重要なので、C3向けの新たな取り組み、具体的にはコンピテンシーごとに特化したテーマ別のコンテンツを今年度下期から全社的に実施する予定です。
2022年以降、毎年400~500名程度の採用を続けており、C2等級社員は入社3年以内の層がほとんどです。彼らは評価されればC3に昇格できますが、C3からAM/SPへの昇格の壁は低くはありません。今後3年以内には、C3からAM、AMからマネージャーへと、さらに上位の等級へ引き上げるスピードを速め、全体的な底上げを図ることも課題となってくると思います。
アルー宮越 C3にはその総合力が求められるということでしょうか?
小野 そうですね。チームの一員として、個人の業務だけでなく、組織全体の課題解決に貢献できるような、より高い視座を持つことが求められます。自分の仕事で成果を出すだけでなく、周囲を巻き込み、戦略的な思考力と推進力を発揮することが、評価向上につながります。

データや根拠なしに行動せず、論拠がない場合は
スモールスタートで実証してから本格実行する思考習慣がある。と、小野様。
――C2コンピテンシー強化プログラムは継続して発注いただいていますが、どういうところを重視して選んで、どういうところを評価していただいたのかを教えてください。
小野 アルーさんを選んだ一番の理由は、最初に作成していただいたコンテンツの質の高さです。こちらの要望に応えるだけでなく、当社の状況や真のニーズを深く理解した上でコンテンツを制作してくださったことに大変感謝しています。
この研修は、複数の研修会社様にお声かけをさせていただいたのですが、その中でもアルーさんは要点を的確に捉え、こちらのニーズを深く汲み取ってくれた点が非常に大きく、信頼して任せられると感じたのが最初の決め手でした。
また、実際にプログラムを実施する中で、改善点や追加要望に対して、言わずとも理解して対応してくださるような波長の合う関係性があり、担当の中川様、宮越様には非常にスムーズに進めていただいたことも高く評価しています。
アルー中川 教材開発・登壇と関わらせていただく中で、ラクス様が主要なラーニングポイントごとの活用度や理解度について、詳細なコメントまで含めて丁寧にアンケートを取り、それを元にきっちりと改善を進める姿勢に感銘を受けました。納得感を持って一緒に改善に取り組めたことが楽しかったですね。
御社は研修を単なる実施で終わらせず、受講者が実際に活用し、成果に繋がるよう、本質的な成果にこだわっていると実感しました。
小野 はい、そうですね。研修に参加するために時間を使ってもらっているので、質のよいものである必要がありますし、実際によいものに仕上がったという自負もあり、受講者にはぜひその成果を持ち帰って活用してほしいという気持ちがあります。だからこそ、今後も質の高いものを作っていきたいと考えています。
――小野様にとってアルーはどのような存在でしょうか?
小野 「当社を理解してくれる誠実なパートナー」です。細かな要望にも耳を傾け、無理だと言わずに反映してくれる点は非常にありがたいです。様々な相談に乗ってもらえることにもパートナーとして感謝しています。