
――貴社の事業内容と部署の役割を教えてください。 
 
 大野 当社はNTTのグループ会社で、NTTの研究成果を世の中に出すことを第一のミッションとしてビジネスを行っています。
例えば、IOWN ®* というネットワーク技術や、RPAという自動化ソフトのWinActor ® など、NTTの研究成果を世の中に出すと同時に、世の中の技術に広く目配りをして、市中技術と組み合わせてお客様の課題解決に役立つようなソリューションを提供しています。
EX戦略室は、総務部と人事部が一緒になっている部署です。
働き方改革やリモートワーク、新型コロナウイルスなどを契機に、もっと総務と人事が一体となって社員のことを第一に考えて仕事をしようと、24年の7月に組織整備をし、EX戦略室ができました。社員ファーストで、社員が仕事をしやすい環境、あるいは成長できる環境を整えていくことをミッションにしています。
その中で、私たちは「社員一人ひとりの成長」が「会社の成長」へ繋がることを願い、社員が入社してから退職するまでの人財育成・人財開発・キャリア開発を行っています。
灘谷 私は研修の中でも階層別研修を担当しています。社員それぞれの入社や昇格などのタイミングに合った研修の企画・開発・運営などを行っています。
太田 私は成長を望む社員に対し、「外部研修の受講支援」や「資格の取得支援」など スキルアップ支援制度の企画立案・運営をメインで行っています。
古川 私は社内のキャリア開発研修やeラーニング教材作りなど、キャリア開発支援をメインで行っています。当社はセルフキャリアドックの一環として、2017年から社内キャリアコンサルティング制度を導入しており、私自身も社内のキャリアコンサルタントとして活動しています。
――今回の異文化コミュニケーション研修の受講者について教えてください。 
 
 太田 新卒で4月に同時入社した日本人社員34名(当社グループ会社社員7名含む)と韓国からの外国籍社員3名、計37名が、入社してすぐにこの研修を受けました。
灘谷 外国籍社員の中には日本語が堪能な方もいましたが、日本語が不慣れな希望者には入社前の3か月間に日本語研修を受けてもらい、その結果、日本語力を向上させた状態でこの研修に参加してもらうことができました。
――外国籍社員の受け入れはいつから行っていますか? 
 
 太田 当社では2020年からインド国籍、ミャンマー国籍の社員採用を行っており、受け入れ態勢が整った2022年から来日頂き、業務に従事頂いています。 
――外国籍社員の特徴を教えてください。 
 
 太田 外国籍社員は強い覚悟を持って日本で就職しているので、入社時には「チームリーダーになりたい」というような明確なビジョンを持っている方が日本人社員よりも多いように感じます。また、日本人社員はキャリアと聞くと「仕事」をイメージする傾向が強いかと思いますが、外国籍社員は仕事だけではなくプライベートなども含めてキャリアであると認識しているように見えました。 
研修中のグループワークの様子を見ていると、外国籍社員は「自分だったらどう解決するか。自分はこう思うが他によい方法はないか」と物事を自分事として捉え、さらに講師ではなく他の受講者を自然に巻き込んでディスカッションをしていました。このような光景は日本人社員同士ではあまり見られないため、職場でもこのよさを活かしてイノベーションを起こしてほしいと思います。
――その一方で、課題として感じていることはありますか? 
 
 大野 外国籍社員からすると日本のビジネス習慣は理解しづらいところがあるようです。例えば「報連相」ですね。外国籍社員は期限までに成果を出すという考え方が多いように感じていますが、日本の会社では途中経過報告も求めますよね。
このように、お互いの理解が進まないと、適切な行動ができない場面がでてきますので、日本のビジネスの進め方を理解してもらうことが必要だと思います。
また日本人社員を含めたトータルの課題として、文化の違い、バックグラウンドの違いによってコミュニケーションがうまくいかないことがあります。外国籍社員が本来持っている価値観や文化的な背景を壊さずに、日本人社員と外国籍社員がお互い理解し協力し合うことで、より生産的に業務を進められるのではないか、という課題意識を持っています。
また日本人社員にとっても、外国籍社員に対する理解、日本とのビジネスカルチャーの違いを理解することで、将来、海外のビジネスパートナーと仕事をする際の戸惑いを減らすことができるのではないか、と考えています。
――課題を踏まえて、どのような研修を設計されたのでしょうか?
 太田 入国制限が解除された2022年度から外国籍社員を迎え入れることができ、今では日本人社員と外国籍社員が一緒に仕事をするのが当たり前な職場も増えてきました。これまで、日本と海外では卒業時期が異なることもあり、今まで入社時の導入研修は、日本人社員と外国籍社員では実施タイミングが異なっていました。 
2024年度までは外国籍社員に対してのみ、日本の文化やビジネス習慣について理解してもらうための研修を実施していましたが、今回の新入社員は日本人社員と外国籍社員が4月同時入社でしたので、入社してすぐに同期同士で「多様性を認め合える場を作る」という意識づけを行うにはよいタイミングだと思いました。 
――今回の異文化コミュニケーション研修のゴールを教えてください。
 灘谷 まずは多様性の理解ですね。単に理解するだけではなく、理解した上で「共に」多様性を活かして行動できる状態になることですね。
「共創」、共に創ることをこの研修のゴールとしています。
――研修の設計において、どのような工夫をされましたか?
 大野 単に日本人社員向け、外国籍社員向けとして、分けて研修を設計するのであれば考えやすいですが、今回は日本人社員と外国籍社員が一緒になって研修を行うため「どうすればよいのかな」と悩む部分がありました。そんなときにアルー営業の今村さんに「日本語が話せる外国籍社員であれば、一緒に研修を受講することでより効果が高まります」と言っていただいたので、私たちも勇気づけられました。
結果的には、日本人社員と外国籍社員が一緒に研修を受講し、グループワークも一緒に行ったことで、異文化理解が深まったと思いますし、相談してよかったと思っています。
――グループワークではどのような様子が見られましたか?
太田 日本人社員も外国籍社員も皆、グループワークでは大変活発にディスカッションしていました。別々に受けていれば、異文化に関する知識だけに留まっていたかもしれません。日本人社員にとっては当たり前だと思っていたことが日本独特な文化であることに気づかされた場面もあったと思います。そこで得た気づきがディスカッションの際に相手を理解しようとし、さらに自らも意見を開示しようとしていたように感じます。研修全体を通してとても積極的で前向きな様子でした。
灘谷 研修中に、お互いに「こうして欲しい」と伝え合う機会がありました。言われなければ気づけない部分なので、非常によい機会だったなと思いました。
――具体的にはどのような要望が出ていましたか?
 今村 外国籍社員側が「やさしい日本語で話しかけてほしい」「日本語を間違っていたら教えてほしい」とおっしゃっていましたね。
灘谷 日本人は相手の間違いに対して積極的な行動は得意でないと感じます。ですので、外国籍社員にはっきりと「教えて」と言われて気づかされた日本人社員もいたと思います。
太田 生まれも育ちも国籍さえも違う仲間が同期として集い、互いに偏見を持たず、一人ひとりを尊重して接するという、共通の認識が生まれたことで、相互理解が深まり、スムーズな対話や議論ができるようになったと感じました。 日本人社員側が「私に聞いてほしい/教えてあげたい」と窓口を開けて待っている感じだったこともよいことだったかなと思いますね。
灘谷 お互いが理解し合うことが大事ですね。理解していなかったがために損してしまうのはもったいないので、入社してすぐに相互理解を深める機会を持ててよかったです。
今村 大前提として「君たちは変わってほしくない」「日本人になってほしいわけではない」と外国籍社員に伝えているところが私は軸が通っていてとてもよいところだと考えています。その前提が揺るがないので、こういった施策ができるのだと感じています。
大野 外国籍社員を採用しているのは、将来世界で活躍してほしいという思いもありますし、彼らがいることで新しいイノベーションを起こしていきたいという願いもあります。したがって、外国籍社員が日本人に同化してしまったらそういうイノベーションも起こせなくなってしまうだろうなというのが根底にありますね。
会社のダイバーシティ全体としてそういった考え方を持っています。個人を尊重するところはしっかり尊重した上で、社員の力を結集して会社としてイノベーションを起こしていきたいです。
――異文化コミュニケーション研修を実施した所感を教えてください。
 太田 異文化コミュニケーション研修を最初に行ったことで、日本人社員と外国籍社員の関係性もよくなり、相互に認め合うこともできました。それを新入社員として入社してすぐのタイミングでできたというのはよかったですね。
――当初想定していたゴールには達成していますか?
太田 達成しています。この研修の後も新入社員としての研修は約2か月間続き、その間も研修中に学んだことを繰り返し実践していました。お互いを理解し、協力し合うことが当たり前になっていたと感じます。
灘谷 日本人社員と外国籍社員とで区別がなく、同期として1つになり、とてもよい関係性が築けたと思います。韓国と日本という国籍の違いもありますが、同じ日本でも育った環境はそれぞれ異なるため、日本人社員同士での理解にも効果的だったと思います。
――異文化コミュニケーション研修を実施してみて想定外の効果はありましたか?
 灘谷 この研修だけでなく、その後続いた他の研修にもよい影響をもたらし十分な成果が出たことが予想外のよい効果でした。 
――もし、この研修をやらなかったら?という話をお聞かせください。
 大野 正直言うと、日本人は日本人、韓国人は韓国人とで固まるだろうなと思っていました。実際には、休み時間とか自由席で受ける研修でも固まらず、国籍の違い、文化の違いではなく、人として付き合えるようになりつつあるのかなと思いました。
やはり日本語が堪能だとは言え、日本人と比べると言葉がわからないところはあります。しかし、外国籍社員が「これってどういう意味?」と日本人社員に自然に聞いているところを見ると、この研修によって心理的なハードルを下げることができた効果かな、と思っています。
灘谷 自然にできていましたね。配属後は年代の異なる社員とも関わることになりますが、そこでもこの研修で学んだことを活かしてほしいです。自分と違う部分があるとつい相手を区別してしまいがちですが、まずは「受け止めてみる」という姿勢を大切に、この研修で学んだことを職場でも実践してほしいです。
――今後、EX戦略室としてどのような施策を行っていきたいですか?
大野 社員が成長を実感できるような施策を行っていきたいと思っています。研修を実施することに満足するのではなくて、社員にとって役に立っているか、研修後の仕事に活かせているかに目を向けていきたいなと思っています。
古川 外国籍社員にキャリア開発研修を実施したときに、「自分がどうありたいか」を明確に言語化できるところがすごいなと思いました。日本人社員はキャリアを言葉にする機会が少なくて、「自分自身がどうありたいか」より「役割」とか「やるべきこと」を問われるシーンが多かったと思いましたので、社員が成長を実感できるように仕事だけではなく、仕事を含めた「人生そのもの」という視点で、キャリア開発を考えて支援していきたいと思います。
――研修会社を選定する上で重視した点を教えてください。
灘谷 まずはテキストの分かりやすさ、内容のわかりやすさを重視しています。研修のときに分かっただけで終わらず、研修後もテキストを開いて、自分だけのオリジナルの教科書として活用してほしいと思っています。
それから外国籍社員の人材育成について、多くの提案をいただきました。事例やデータに基づいた提案をしてくださるので、こちらも理解した上で納得し検討を進めることができました。この研修の検討も手探り状態から始まりましたが、何度も打ち合わせを重ね、一緒に研修を形にしていったことで自信を持つことができたと思います。
――アルーからの提案の中で印象に残っていることはありますか?
 灘谷 「何をやったらよいのだろう」というところから一緒に何度も打ち合わせや提案、研修内容のブラッシュアップをしてくださいました。本当に親身になって考えて作ってくださったことがとても印象に残っています。初めは不安でしたが、研修が形になっていくにつれて、この研修内容で進めてよいのだという勇気をいただきました。
――皆さまにとってアルーはどのような存在ですか?
大野 まだまだ手探りで行っている部分がたくさんありますし、私たちにとって研修は1回1回が本番なので、他社の情報を踏まえたアドバイスをしてくれる重要なパートナーだと思っていますね。
古川 アルーは私たちの思いをしっかり聞いてくれて、こちらの要望だけでなくて、その中で本当に要るもの、要らないものを考えてくれます。また、「私たちが本当にしたいことは何か」を常に問いかけてくれて、研修を企画しながら私たちも勉強させてもらっています。そこの部分はこれからも変わらずに一緒に考えていってくださると心強いなと思っています。
アルーはまさに、一緒に「共創」していく存在ですね。
*IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)
スマートな世界を実現する最先端の光関連技術および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤
※IOWNは、NTT株式会社の登録商標です。
※WinActorは、NTTアドバンステクノロジ株式会社の登録商標です。