――貴社の事業内容と会社から期待されている部署の役割を教えてください。
植田 当社は1906年に創業し、来年4月1日に120年を迎えるスポーツ用品の製造、販売、卸売、直接販売を行う企業です。
その中で私たちは、グローバル人事総務部の人財開発課として、人財開発を担っています。
私たちは「フェアプレー、フレンドシップ、ファイティングスピリット」という3つのFを経営方針のバリューとして掲げ、社員共通の価値観としています。これは「利益よりも道理を重んじる」という精神に基づいています。第二次世界大戦を含む120年間、様々な困難を乗り越えながらも、常に道理から外れることなく事業を継続してきました。
「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」というパーパスのもと、私たちのミッションは、そのパーパスを実現する人財を育成することです。具体的には、研修、教育、新卒・中途採用、エンゲージメント向上など、人的資本開発に関するあらゆる取り組みを行っています。
――アルーに依頼した研修の内容と導入に至った課題・背景について教えてください。
武蔵 今回、依頼したのは、C4等級昇格者研修です。C4は、ミズノの人事制度における一般職のCコース(ジェネラリストを目指すコース)の5段階ある等級のうちの1つです。
C4に昇格した社員を対象としたこの研修では、組織の課題を発見・解決し、リーダーシップを育成することを目指しています。C3までは個人課題の解決が中心でしたが、C4ではチーム課題の解決が求められるため、その点を研修テーマとしています。
C4は必ずしも役職が付くポジションではありませんが、課長一歩手前の課長補佐となる社員もいます。年齢層は20代後半から30歳前後、一部40代の社員もいます。
植田 この研修は、以前からマインドセットとスキル向上のために行われていましたが、一時中断され、2023年に再開されました。
――この研修を導入することによって達成したいゴールを教えてください。
植田 C4等級の社員には、周囲に目を向け、視野を広げ、視座を高く持って組織の課題を捉えてもらいたいです。また、それを解決するためのリーダーシップを役割に関わらず発揮してもらうことが研修のゴールです。
この5 カ月 間の研修は、自部門の課題をテーマにするため、机上の空論ではなく実務に役立ちます。受講者が研修で得たことを実務で活用できることを期待しています。研修後も、理論と実践を行き来し、何度も思い出しながら、継続して学んでほしいと考えています。
学びは継続だと思う。学んだことを繰り返し使うことで身に付いていく。
継続できるように働きかける仕掛けができたらいいと感じる。と、植田様。
――C4等級昇格者研修で、カスタマイズしたところはありますか?
植田 2023年度の研修実施にあたり、成果発表会を導入しようという提案がありました。成果発表会をどのように運営し、何をすべきか不明瞭だったところから、話し合いを通じて課題を言語化していただいたことで、安心して企画を進めることができました。
また、 2023年度の研修後、成果発表会までの5 カ月 間という実践期間の中で、取り組み内容をより良いものにするため、講師からの指摘を受け実践内容をブラッシュアップできるよう、2024年度には中間発表を導入するなど、研修内容をバージョンアップしました。その際も、アルーには手厚くサポートをしていただきました。
研修スケジュール
2日間の対面研修の後、5カ月間の実践期間があり、中間発表会を経て成果発表会を行う。
――なぜ、成果発表会を導入しようと思いましたか?
植田 研修が「受けっぱなし」で終わるのは非常にもったいないと感じています。せっかく貴重な時間を割いて、中には出張で参加するメンバーもいるため、受けっぱなしで終わらせてしまうのは避けたいと思いました。なので、受講者が研修で得た学びを実務に活かし、次に繋げられるように、成果発表会という仕組みを導入することにしました。
成果発表会は、昇格者全員が全国から大阪本社に集まって対面で実施しました。中間発表はオンラインでしたが、成果発表は対面で行うことで、受講者が達成感や「やり切った」という気持ちを持てる場にしたいと考えました。
――アルーから提案を受けて、印象に残っていることはありますか?
植田 C4等級昇格者研修は、成果発表会や中間発表会だけでなく、上司を巻き込むことに力を入れています。特に、C4等級の組織課題の解決においては、受講者単独での解決は困難であるため、上司向けの資料を緻密に作成し、上司のサポートを促しました。その結果、成果発表会では上司からの熱い賞賛コメントが多く寄せられ、上司と受講者が一体となって研修をやり遂げたことが感じられました。
視野を広げ、視座を高くするという研修のキーワードを実現するためには、上司のサポートが不可欠であると感じています。
――研修を実施してみてのざっくりとした所感を教えてください。
武蔵 すごく良かったというのがまず大きな感想としてあります。上司を巻き込んだ施策を行ったことで、受講者だけでなく上司の方々からも良い感想が多く寄せられ、人事担当者としても満足しています。
また、研修で学んだことを実践する場としての成果発表会は、とても有意義だったと感じています。
――想定していたゴールの達成には近づきましたか。
武蔵 はい、ゴールの達成に近づいたと感じています。リーダーシップへの理解も深まりましたし、研修で学んだことが現場で活かされていると認識しています。
また、この研修によって、受講者に変化が見られました。研修のテーマであった課題発見・解決能力の向上を感じています。組織の課題に自ら取り組むというリーダーシップへの自覚が増し、視野を広げ、視座を高くすることも習得できたと考えています。
――想定外の効果や変化はありましたか?
武蔵 成果発表会では、直属の課長だけでなく、部長や次長など、部門長クラスの方々も参加され、受講者に激励の言葉を贈ってくださいました。これは想定外の効果の一つであり、大変ありがたく感じています。
また、自身の部下だけでなく、他部署の部下にもコメントを送ってくださる場面も見受けられ、受講者にとって大きな励みとなったのではないかと思います。
植田 私が成果発表で見ていた部屋には、グループ会社の社長まで来られました。コメントを誰が言うかということも重要だと感じました。見ていてくれたということが、受講者にとって非常にうれしいことだったと思います。
他にも、来場できなかった別のグループ会社の社長からも事前にコメントが寄せられ、代読される場面もありました。
研修の場では意識が高まっても日常業務に戻ると忘れがち。
C4等級昇格者研修のように次に繋がる機会があれば意識が高まると思う。と、武蔵様。
――C4等級昇格者の育成において、今後さらにどのようなことを実現していきたいでしょうか?
植田 C4等級昇格者研修は現在も進化を続けていますが、今後さらに新たな課題が見つかれば、それに対応して内容を進化させていきたいと考えています。そのために重要となるのは、研修をどう評価していくのかということです。
研修のゴールが本当に達成できたのかを検証することは一般的にも難しいと言われますが、上司に報告する際に「何ができたのか」を具体的に説明できるようにするためにも、担当者として関心を持って取り組んでいます。
最終的には、経営に繋がる研修であることが重要だと考えています。そこも見据えて、どういう研修を行っていくのか、より長いスパンで見て、研修を設計していきたいと考えています。
――今後の人財育成において、どのようなことを実現していきたいとお考えでしょうか?
植田 私たちの役割は人財育成であり、会社の戦略方針に沿って継続的に社員の成長を支援していきたいと考えています。今年度からはキャリア開発支援も強化し、社員一人ひとりが自律的にキャリアを築けるようサポートしていきたいです。
現在の会社の状況は変化しており、会社が永続するという保証はないと感じています。社員自身が自らの成長を考え、キャリアを形成していくことが、会社の成長にも繋がると考えています。そのため、部門として、社員のキャリア形成を支援する体制や受け皿を構築していきたいです。
25年度の中間発表では講師が受講者に与える問いの難易度について、
より難易度の高い問いを与えたほうがよいかもしれないと検討している。
――研修会社の選定において重視している部分を教えていただけますか。
植田 研修後に受講者にどうなってほしいかというゴールから、どのようなプログラムが提供できるかという提案内容を重視していました。
あとは、私たちの悩みに対してどのように対応するかや、プログラムのカスタマイズなどを見ていました。
――アルーは皆さまにとって、どのような存在でしょうか?
植田 アルーは私たちにとって、とても大事なパートナーであり、仲間だと感じています。C4等級昇格者研修以外のことも含め、様々な課題に対して多くの知識や解決策を持っているので、とても頼りになる存在です。私たちと一緒に成長してくれるパートナーだと思っています。
特に、営業担当者の方が素晴らしいですね。私たちの漠然とした悩みを整理し、言語化してくださる点は非常に頼もしいです。もし他社の方にアルーをお勧めするなら、この点を伝えたいです。
武蔵 アルーは本当に多くの知見を提供してくれるので、非常に頼りになります。今回の研修でも様々な提案をしてくれましたし、次に向けた改善についても真摯に一緒に考えてくれています。まずは相談してみたら良いよ、と言えるような相手で、良い雰囲気と関係性を築いてくれます。
左から植田様、武蔵様