
-23年度当初、この研修の新設にあたり、どのような課題や背景がありましたか?
田中 New部署長研修を新設した背景には、「部署長を担う人財の不足」という課題がありました。当時、部署長へ昇進する人財に対して、必要とされる能力やスキルを体系的に教育・育成する機会が十分に整備されていなかったためです。
従来は「優秀な課長」がそのまま部署長に昇格するケースが多く見られました。しかし、そうした人財の多くは、組織全体を視座高くマネジメントする視点や、会社全体の成長を見据えて構想する視点が十分に身に付いていないという問題点がありました。
目の前の業務成果を追求する「優秀な課長」の延長ではなく、部署長には組織の中長期的な成長を導く視座が不可欠です。こうした視点を持つ人財を意識的に育成しなければ、「大課長」を増やしてしまうという危機感を抱いていました。
-23年度は「部署長の7つの役割」を網羅的に扱い、その役割を深く理解することを目的とした内容でしたが、どのような意図で設計をされましたか?
山下 7つの役割とは、「リスクマネジメント」「経営戦略の浸透」「職場の環境づくりの支援」「中長期的な人財育成」「部署全体の管理」「他部署や社外との交渉・調整」「事業やプロセスの変革」を指します。
押尾 部署長のあるべき姿を「7つの役割を果たしている状態」と定義したものの、優秀な課長と部署長に求められる姿との間には明確なギャップが存在していました。
そのため、まずは部署長に求められる7つの役割を正しく認識してもらい、自身のマネジメントスタイルを振り返って再設計することを研修の狙いとしました。7つの役割を網羅的に提示することで、受講者が「部署長としての目的地」と「自身の現在地」の両方を客観的に把握できるように意図しました。
-23年度の実施後、どのような成果があり、どのような課題が残りましたか?
押尾 23年度の成果は、部署長として目指すべき「目的地」と現在の立ち位置である「現在地」の両方を認識できた点です。部署長が役割について共通認識を持ち、自分自身の課題を捉えられたことは大きな一歩でした。
田中 研修を通じて、受講者間のスキルや認識の差も浮き彫りになりました。これにより、人事としても幹部人財に不足している能力や、今後必要な育成施策を明確に捉えられるようになりました。
押尾 その一方で、7つの役割をすべて網羅しようとした結果、進行が駆け足となり、受講者同士の議論や対話の時間が不足する課題も生じました。全国から同じような課題を抱える部署長が集う機会だからこそ、共通の悩みや成功事例を情報交換する時間を増やしてほしいという声もありました。単なる知識の理解にとどまらず、確実な行動変容へつなげるためには、対話や内省の時間が必要だという課題も明らかになりました。

-23年度の実施後、どのような課題が見えてきましたか?
田中 研修中の様子や研修終了後に人事が受講者に対して実施したアンケート、講師からのフィードバックなどを踏まえると、理解しやすいテーマと十分に行き届いていないテーマがあることがわかりました。そのため、翌年度は7つの役割を網羅的に扱うのではなく、すでに一定の理解が得られているテーマを外し、課題のある領域や重要度の高い領域に焦点を当てることにしました。
押尾 全役割の網羅よりも、特に重要なテーマを深掘りし、実際の行動へ落とし込むことを優先しました。さらに、同じ立場の受講者同士でのディスカッションや意見交換の場を増やしたいというニーズも強かったため、4つの役割に絞り込み、対話と内省を中心としたプログラムへ再構築しました。
山下 厳選した4つの役割は、「リスクマネジメント」「経営戦略の浸透」「職場の環境づくりの支援」「中長期的な人財育成」です。これらは部署長としての業務全般に関わる中でも、特に「ヒト」や「組織」に直結する領域です。一方で、部署全体の管理、他部署や社外との調整、事業やプロセスの変革といった事業主体のテーマは、日常業務を通じて実感やイメージを持ちやすいため、研修の中で講義として扱うことは見送る形としました。
部署長が重要視している点、抱えている不安や課題感を総合的に考慮し、組織と人財に軸足を置いた4つのテーマを優先的に選定しています。
-4つの役割への厳選により、受講者に何を掴み取ってほしいと考えましたか?
田中 第一に掲げたのは「中長期的な人財育成」です。目の前の目標達成に追われるあまり、メンバーの将来的な成長像にまで思いを巡らせづらいケースが見受けられました。だからこそ部署長には、組織の未来像を描き、そこから逆算してどのような人財が必要かを検討してほしいと考えています。
もう一つ欠かせないのが「経営戦略の浸透」です。部署長には、全社や部署の方針をメンバーが納得し行動に移せるレベルにまで落とし込んで伝える責務があります。経営層の言葉をそのまま流すのではなく、自身で深く咀嚼し、現場の事業に即した自身の言葉として語ることが求められます。
押尾 部署長には、組織の目指すべき姿を明確にし、それを実現するために求められる人財像を捉えることが不可欠です。「組織のあるべき姿」と「現状」のギャップをどう埋めていくのか、組織の将来像から逆算して人財育成を捉え直すことが重要です。
実際の研修では、思考プロセスを細かくステップ化し、ワークシートにも工夫を凝らすことで、受講者がスムーズに思考を深められるよう手厚くサポートしました。
アルー松本 これまでは「目の前のメンバーをいかに育てるか」という視点が中心でした。そのため、唐突に組織の未来像や必要とされる人財像の提示を求められても、ハードルが高く感じられてしまいます。そこで受講者の思考プロセスに沿う形式で問いを整理し、着実にステップを踏んで考えをまとめられるプログラム設計としました。
-25年度に新設された「社長講話」の導入により、受講者や経営層にはどのような行動の変化が見られましたか?
田中 社長講話は受講者から非常に好評でした。普段、社長と部署長が直接対話する機会は多くありません。そのため、今後の事業の方向性を社長自身の言葉で聞けたことは、受講者にとって非常に価値のある体験となりました。
さらに、社長自身の部署長時代の経験や、変革を起こすために行動してきたことを聞き、「社長であっても試行錯誤があったのだ」「自分自身も変化を乗り越えていかなければならない」という気づきも得られました。
押尾 フランクで親密感のある対話の場となり、受講者からの質問に答える形で会社からの期待を伝えていただけたことがよかったと思います。また、講話のメッセージがその後の講義や実践ワークへとシームレスに接続され、学びを腹落ちさせやすい構成となっていたと感じます。
アルー松本 事前に募集した受講者からの質問に社長が答える形を採用したことで、一方的な講話にとどまらず、受講者からの質問を起点にした双方向のコミュニケーションを設計できた点が印象的でした。

-25年度の実施を通じて、受講者にはどのような変化がありましたか?
押尾 受講者からは「部署長としての役割が明確になった」「人財育成の重要性を改めて認識した」という声が数多く寄せられました。
具体的な変化として、まず「経営戦略の浸透」に関するワークを通じて、「会社から降りてきた方針を、そのまま伝えていた」「自分の言葉で伝えていなかった」という気付きがありました。自身の言葉で戦略やビジョンを語り、メンバーの納得感と行動を引き出す重要性を受講者自身が実感できたことに手応えを感じています。
次に、「中長期的な人財育成」に対する意識の変化も見られました。「組織に必要な人財はどのような人か」「その人財を育てるために、誰にどのような育成が必要か」と、組織のあるべき姿から逆算して育成を考える重要性を捉えられるようになりました。
また、コミュニケーション面でも進展がありました。大京およびその子会社では月1回の頻度で1on1を行うという方針を定めていますが、部署長と課長間の対話が十分ではなかったという声もありました。研修を通じて、心理的安全性の高い組織を築くには、まず部署長自身が課長との間にそのような環境を作る必要があるという認識が深まりました。
さらに、他部署の部署長と悩みや成功事例を共有し合えたことで、自分一人では得られない新たな視野を獲得できたことも重要な成果です。
-25年度の研修実施を経て、人事部門や経営陣にはどのような変化が見られましたか?
田中 New部署長研修の継続的な取り組みにより、各子会社において人財育成の重要性が浸透してきたと感じています。現在では、サクセッションに関しても、5年後を見据えた将来のポストや必要な人財像を考え、具体的な施策にまで踏み込む子会社が現れ始めました。研修を受けた部署長が自社で人財育成の重要性を伝えていることも、組織全体における意識の浸透につながっていると思います。

-人財育成施策全体において、New部署長研修はどのように位置づけていきたいですか?
押尾 New部署長研修は、大京およびその子会社の管理職育成における中核施策と位置付けています。部署長が成長し、次世代育成やサクセッションに関わることが、ミドルマネジメント層や新任管理職の育成にもつながります。部署長の「幹」が太くなれば、現場レベルの人財育成にも考え方が浸透していきます。今後は、組織のあるべき姿を描き、その実現に向けて「経営戦略の浸透」と「中長期的な人財育成」をさらに磨いていきたいと考えています。
田中 組織の成熟度は、上司の資質やレベルに大きく左右されると感じています。部署長は、組織全体のレベルを引き上げる重要な立場です。まず部署長が成長しなければ、会社全体のレベルも上がりません。
-中長期的には、どのような組織を目指していきたいとお考えですか?
田中 前提として、企業としての成長と社会貢献の継続があります。そのうえで、新たに入社した社員が将来にわたって安心して働き続け、自ら会社を成長させたいと思えるような環境を作りたいと考えています。大京およびその子会社にとって、人財は最も重要な経営基盤です。人を育て、社員が「この会社で働き続けたい」と思える環境を整えていくことが、人事の重要な役割です。人を育てることで組織が育ち、組織が育つことでさらに人が成長する。そうした循環を、長期的に実現していきたいと考えています。
-最後に、アルーは皆さまにとってどのような存在でしょうか?
押尾 アルーは単なる研修ベンダーにとどまらず、当社の人財育成体系そのものを共に考えてくれる心強いパートナーです。当社の抱える課題や実情に寄り添い、既存プログラムで適したものがなければ、教材の新規制作まで含めて柔軟に対応していただけます。ニーズに合わせて新たな選択肢を提示してくださる姿勢に、大きな安心感を抱いています。
田中 充実した教材や資料が丁寧に作られている点が、アルーの強みだと感じています。また、当社のニーズに応じて内容を柔軟にカスタマイズできる引き出しの豊富さも非常に魅力的です。単に研修を提供するだけでなく、人財育成戦略を共に描くパートナーとして、次世代リーダーの育成やサクセッションを見据えた今後の提案と伴走にも期待しています。
山下 発注者と研修会社という枠組みを超え、一つのチームとして共に研修を作り上げている感覚があります。営業担当、教材作成担当、講師の間で情報共有が徹底されており、施策の目的や意図が一貫して共有されています。今後も共に研修を作り上げていくパートナーとして、継続的にお付き合いさせていただきたいです。
アルー松本 人財育成とは、お客さまと一緒に作っていくものだと考えています。大京の皆さまが現場の課題や率直なご要望を共有してくださるからこそ、教材や研修プログラムの精度をより高めることができています。今後も深い対話を重ねながら、受講者の皆さまにとってより質の高い学びの場を共に創出していきたいと考えております。
アルー中内 大京の皆さまは、人財育成や研修をどのように作り上げたいのかについて、非常に熱い思いをお持ちです。その思いに全力でお応えしながら、アルーも思考を重ね、よりよい研修をお届けしたいと考えております。これからも「一つのチーム」として、人と組織の成長につながる人財育成施策をご一緒できれば幸いです。