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研修の目的設定に必要な4つのステップ


目次[非表示]

  1. 1.研修の目的を設定できていますか?
  2. 2.目的設定に必要な4つの検討プロセス
    1. 2.1.プロセス1:現状の課題を特定し、解決すべき事柄かどうかを判断する
    2. 2.2.プロセス2:解決すべき事柄を発生させている原因を洗い出す
    3. 2.3.プロセス3:原因除去に研修(教育)が効力があるのかを吟味する
    4. 2.4.プロセス4:研修(教育)で何を教えるのか(何を身に付けさせるのか)を明確にする


研修の目的を設定できていますか?

筆者の本業は、研修所(大手メーカーの事業子会社)での集合研修の設計開発や改訂業務である。

副業としてNPO運営、研修会社の技術顧問などを行っている。副業活動の主たるものは、公開講座のセミナーや個々の団体からの依頼で実施する集合研修の講師、また「研修開発・発注等々の業務工程の再構築」や「人材育成スタッフの専門性強化」の支援も行う。


筆者の専門領域は研修設計、教育効果測定のため、依頼テーマは概ね「研修の設計技法」や「教育効果の測定方法」に関するもので、中でも「当部門が実施する研修の効果測定を手伝って欲しい」という依頼は比較的多く頂戴する。

効果測定支援の依頼には「今回の研修のゴールは何ですか?」とクライアントに筆者から質問させていただく。残念ながら、明確な答えが戻ることは少ない。多くの組織では、年中行事のように漫然と研修が実施されているようだ。これは、何に効くかわからない苦い飲み物を「体にいい」という風評を信じ飲み続けているのと同じである。解決したい課題や欲する期待値が不明な状態では、施策選択の適切ささえ判断がつかない。「実施回数」「利用者数」「使用時間」「コスト」等々の量的な判断は可能だが、「課題解決への寄与」「期待効果の実現」「組織への影響具合」といった質的な効果は見極めようがない。この度の新型コロナウイルス感染の影響で、多くの組織が教育手段や教育自体の見直しを余儀なくされているはずだ。そのような時機を踏まえ、今回のコラムは、研修見直しに必要な「4つの検討プロセス」をご紹介しよう。

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目的設定に必要な4つの検討プロセス

プロセス1:現状の課題を特定し、解決すべき事柄かどうかを判断する

研修等の企業内教育は、企業内の人に関わる課題解決の一手段であり、その活動は企業にとって副次的活動でしかない。そう考えると最初に整理すべき事項は、組織内ではどのような課題が発生しており、それは解決すべき事柄かどうかを正しく見極めることが鍵となる。時間が解決するならそのまま放置するのが賢明であろう。解決すべき課題が不明のまま、研修を開催するのは時間と資源の無駄でしかない。


プロセス2:解決すべき事柄を発生させている原因を洗い出す

組織内で発生している課題を把握し、その課題は看過できないと判断したなら次に検討すべき事項は、課題を発生させている原因の特定である。発生原因と考えられる事柄は一つではないはずだ。複数存在する問題点の中から、最も影響力の大きな問題(原因)を特定することである。


プロセス3:原因除去に研修(教育)が効力があるのかを吟味する

 影響力の大きな原因を特定できたなら、次に検討すべき事項は、研修(教育)がその原因除去に効果があるのかを検討することである。仮に次のような状況を想定してみよう。新商品の販売不振という課題が発生している。その主原因が、市場へのブランド浸透不足で他社商品との認知差に大きく水を空けられている状態(原因)だとしよう。この場合、営業パーソンや販売員にセールススキル強化研修を施すことで新商品の販売不振を解決できるだろうか。プロモーションの見直しや広告媒体の変更の方が、ブランド浸透策として有効性が高いといえるだろう。研修(教育)の主たる機能は知識やスキルの付与あるいは強化であり、その効用は限定的である。いくら効果的な研修でも、間違った用い方では効果を得られないことは自明である。


プロセス4:研修(教育)で何を教えるのか(何を身に付けさせるのか)を明確にする

 組織課題の発生原因を把握し、それが研修(教育)という手段で除去可能と合理的判断がついたなら、次の検討事項は「研修で何を教えるのか」である。言い換えれば、「学習者に何を身に付けさせ、どんな状態にするのか」を決めることになる。条件は、研修に与えられた時間内でということになる。学習時間は、インプットする情報量と比例する。2時間の研修と3日間あるいは、1年間では、「情報量」も「練習量」も大きく異なる。同じテーマであっても、それぞれに期待される効果が異なって当然である。


上記の4プロセスに沿って研修の必要性を見直せば、「継続すべきもの」と「そうでないもの」に判別できる。その上、継続研修に期待される効果が一層鮮明になるだろう。ゴールが明確な研修は、当然ながら効果検証も容易となる。


新型コロナウイルス感染の影響で、多くの組織が従来型教育手段をオンライン型に急ごしらえで対処せざる得ない状況である。提供内容や効果に不安を覚える方々は、4プロセスに沿って見直し、無駄のない教育活動へとレベルアップしていただければ幸いである。

堤 宇一氏
堤 宇一氏
所属:NPO法人学習分析学会副理事長 アルー株式会社 HRソリューション部 テクニカルアドバイザー 熊本大学大学院社会文化科学研究科教授システム学専攻修了。 「教育効果測定」を2000年より専門テーマとして研究を開始。教育効果測定での米国の第一人者であるJack Phillips博士が主催するROI Network(後にASTDとの事業提携によりASTD ROI Networkに名称改名)にて、アドバイザリーコミッティボードを2期(2001~2004年)務める。(株)豊田自動織機で行なった「SQC問題解決コースの教育効果測定プロジェクト(2002)」は、アジア初の事例としてIn Action ,Implementing Training Scorecards (ASTD)に掲載される。 2005年にNPO法人人材育成マネジメント研究会を設立、2015年5月に学習分析学会へ改組し、現職。 現在、産業人教育の品質向上を目指し「教育効果測定」「インストラクショナルデザイン」「人材育成」に関するコンサルタントとしてコンサルテーション、講演、執筆等幅広く活動。

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