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自分の認知の「眼鏡」に気づけているか?

前回の記事『現象をありのままに捉えるためにはどうしたらいいのか?』では、改善・イノベーションの二つ目のプロセスである「メタ意識の活用と現象の観察」をテーマとして、現象をありのままに観察するときに、複数の観察モードを持つことが大切であることをお伝えしました。

今回の記事では、改善・イノベーションの三つ目のプロセス「観察のフィルター調整」についてお話しします。

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どんな「眼鏡」をかけているかに自覚的になる


③観察のフィルター調整
チームメンバー一人ひとりがフィルター(認知と判断の前提)をメタ認知し、調整する場づくりをする


改善・イノベーションプロセスの一つ目のプロセスにおいては、どの範囲において改善・イノベーションをするかについて意図的に選択しました。その選択した範囲における「現実」をありのままに捉えるというのが、二つ目のプロセスでしたが、このプロセスと同時並行的に実践する必要があるのが、観察のフィルター調整という三つ目のプロセスです。

詳しくは後ほどご説明しますが、観察のフィルターと言うのは「眼鏡」のようなものです。 前回の記事『現象をありのままに捉えるためにはどうしたらいいのか?』において、現象をありのままに観察するのはとても難しいということをお話ししましたが、 それは私たちが物事を見るときに何らかの「眼鏡」を通して解釈をしながら見ているということだからです。

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「眼鏡」があることがよくないということではありません。もし、「眼鏡」がなければ、一つひとつの事象を判断するための時間がかかりすぎてしまうことでしょう。りんごをみても「りんご」とすぐには判断することができず、「丸く赤い光がみえている」というところに留まってしまうことでしょう。これでは、普段の生活が成り立ちにくくなってしまいますね。

ただ、「眼鏡」をかけていることに対して無自覚な場合、現象を自分に都合よく解釈してしまったりすることによって、本来の自分の目的やあり方とは反した言動につながってしまうことがあります。家族や友人などの大切な人の言動を誤解してしまい、後悔したことがある人は少なくないのではないでしょうか。

ですから、どんな眼鏡をかけているかについて自覚的になり、さらには、その眼鏡を状況に応じて選択したり調整できたりすることで、本来の自分の目的やあり方に沿ったものにしていくことが望ましいと言えます。



フィルターとは、自分の価値観のこと

ここまで、眼鏡というメタファーによって、フィルターについて説明をしましたが、フィルターとは何かをもう少し詳細に説明したいと思います。

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アメリカの心理セラピストであるアルバート・エリスが提唱した論理行動療法(Rational-Emotive Behavior Therapy: REBT)にABCフレームワークと呼ばれるものがあります。このフレームワークによれば、出来事(Activating Event)に対して感情(Consequence)を抱く時に、出来事と感情が直接的に結びついているのではなく、信念・価値観(Belief)が間に挟まって、出来事と感情を結びつけています。

例えば、仕事のアウトプットについて上司からフィードバックを受けた(A)とします。このときに、フィードバックをもらうことは仕事の質を高めるし、自分の成長にもつながるので良いことだという価値観(B1)を持っていれば、
もらったフィードバックを前向きに捉えることができる(C1)でしょう。

一方で、同じ状況において、フィードバックをもらうことは自分の仕事が不適切であるということなので良くないことだという価値観(B2)を持っていれば、もらったフィードバックを前向きに捉えることができない(C2)かもしれませんね。

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同じ出来事・状況であったとしても、信念・価値観の違いにより、結果として得られる感情や心象が異なります。この信念・価値観(ビリーフ)が、先ほどの話における「眼鏡」であり、フィルターです。


フィルターはどのように形成されるか

さて、このフィルター(ビリーフ)は、どのように形成されるのでしょうか。この形成過程を知っておくことが、自らのフィルターに自覚的になり、自己調整することができるようになるヒントを与えてくれます。

フィルターの形成過程には2種類あります。一つは、個の生存戦略として過去の経験を通じて培われた過程、もう一つは主体的真理や願いなどによって涵養されてきた過程です。

個の生存戦略として過去の経験を通じて培われた過程というのは、過去の経験において繰り返されてきた事象に対して不快感情を少なくし、快感情を多くするための価値観を形成する過程と言えます。

人なら誰しも(動物も恐らく同じでしょう)、不快感情を少なくして、快感情を多くすることを望みます。人や動物は、生存に必要なものには快感情を、生存にマイナスのものやリスクのあるものには不快感情を持ちますから、不快感情を少なくして快感情を多くするということは、個の生存戦略として自然であると言えます。

それを実現するために、繰り返されておこる出来事(A)に対して、最適な価値観(B)を形成することによって、不快感情を少なくし、快感情を多くする(C)ように自己調整していく過程とみなすことができます。

人にとっての不快感情の代表的なものは、周囲との関係性の悪化です。これは、幼少期における家族との関係性や、青年期における友人との関係性の重要性を考えれば明らかです。ですから過去の経験から培われる価値観の中でも、周囲との関係性を良好に保つために形成されてきたものは多くあります。

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それは、幼少期から今に至るまで、家族・友人などの周囲との関係性の中で、自分にとって必要な支援を受けることができたり、自分にとって必要な関係性を結ぶことができるようになるために、意識的・無意識的に形成されてきた価値観です。

もう一つのフィルターの形成過程は、主体的真理や願いによって涵養されるものです。先ほどのこの生存戦略として過去の経験を通じて培われた過程というのも、願いの一つであるという見方もできますが、ここでの主体的真理や願いというのは、生存欲求よりも高次の欲求である自己実現欲求を想定しています。

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平たく言えば、自己のありたい姿に近づくために、自分の価値観を形成していくことと言えます。例えば、一流のプロ野球選手(例:イチロー選手や大谷選手)が、インタビューを受けている場面などを見ると、自分なりの価値観を明確に持っていることに気づくのではないでしょうか。それらの価値観は、彼らが高みを目指す過程において培われてきたものなのではないかと思います。

これら2つの形成過程があることを知ることによって、フィルター調整をするためには、これまでの経験から培われた価値観について自覚的になり、自分の願いに立ち返った上で、その価値観をどのように調整するかを選択していくことが必要なことがわかります。

次回の記事では、どのようにすればフィルター調整をすることができるのかについてお話しします。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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