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目に見えない課題に向き合うには、どうすればよいのか?

前回の記事『見えている課題は「氷山の一角」にすぎない』では、ビジネス上や組織運営上の課題について、見えるものだけに囚われることなく、多次元的に捉えていくためのモノの見方をするためには、どのようにすればよいかについてお話ししました。


今回の記事では、改善・イノベーションの実践プロセスについて、お話します。

改善・イノベーションの実践プロセス


メタ認知

改善・イノベーションについても、ビジョン策定や戦略ストーリー創出のプロセスと同様に、3+1意識モデル上の全ての意識を駆使した高度な知識創造プロセスです。上図の3+1意識モデル上に記載されている番号は、該当するプロセスにおいて、番号のついている意識を活性化させていくことを示しています。


前回の記事で、多次元的なモノの見方についてお話ししました。この6つのプロセスを、多次元的なモノの見方に沿って表現すると以下の図のようになります。(この図の縦軸について詳しく知りたい方は前回の記事『見えている課題は「氷山の一角」にすぎない』をお読みください)


目的・進め方

見えている課題は「氷山の一部」であり、見えているものだけではなく、見えていないものの全体を捉えていくことの重要性を示すとともに、6つの改善・イノベーションプロセスを、氷山を深堀していくメタファーとして表現しています。


この全体像をご覧いただくとわかる通り、改善・イノベーションプロセスは、②〜④の現象を的確に認識していく所に重きがあります。⑤〜⑥の改善策を立案して実践していくところももちろん大事なのですが、こちらについてはビジョン策定や戦略ストーリー創出に近い面もあります。


そのような全体像になっている背景としては、人は見えているものに、囚われやすいということであり、改善・イノベーションを本来の目的に沿って実践していくためには、見えていないことがあるかもしれないという自覚を常に持ちながら、多次元的に現象を捉えていくことが重要であることを示しています。


改善・イノベーションの範囲を意図的に決める

それでは、改善・イノベーションのプロセスを一つずつ見ていきましょう。




①目的・進め方の直感と決断
目的・進め方(ストーリー)を直感した上で、現実の制約を踏まえた目的と効果的・効率的な進め方を決断する


最初のプロセスは、そもそも目的に立ち戻った上で、どの範囲の改善やイノベーションを意図するかを決めるということです。


みなさんが、今課題に思われていることはどのようなことになりますか?

人

アサインされた仕事の進捗、四半期目標の達成状況、職場内の人間関係やコミュニケーション、会社全体の業績、業界の構造、国のあり方、地球全体の健全性について、などいろいろなレベルの課題があり得ます。


どの課題であればいいとか、どの課題だとダメという話ではありません。どのような課題であっても、本人にとって解決したいという願いをもつものですから、どの課題も大切なものになります。


自分が課題だなと感じていることの前提として、意識的に、あるいは、無意識的に課題設定する範囲を決めていることに注意する必要があります。


例えば、自分の仕事の進捗がよくないことを課題として感じるという前提には、「自分の仕事」という課題設定の範囲を決めています。そのときに、「国のあり方」という範囲の課題設定はしていないことが多いでしょう。


繰返しになりますが、それがいい・悪いという話ではありません。それが、本来の目的やありたい姿に対して、意図的に設定されていることが大切と思います。


ですから、改善・イノベーションを実践するにあたっては、「どの範囲において」ということを自覚的に問い、選択することが必要になります。


改善・イノベーションの違いは、どこまで深堀するかの違い

そして「どの範囲において」の選択には、「深さ」の選択と、「領域」の選択の2つがあります。


まずは、「深さ」の選択についてお話します。以前の記事で、改善とイノベーションは、「意図した変化を起こしていくこと」という観点では同じであり、「どのレベルまで深堀りして、変化を起こしていくか」が違うだけであるということをお伝えしました。


その内容を示したのが次の図です。

氷山

目に見えている現象の次元を主として、原因分析をして課題解決していくような、いわゆる問題解決を「分析的問題解決」と呼んでいます。普段の仕事においても、よく使われている思考プロセスと思います。この分析的問題解決においても、原因分析においては目に見えない要因を扱うことになりますが、システム的問題解決と異なり、「複雑なものを分けていくことによって解決する」という前提を持っています。


構造・背景の次元を主として、システム的な問題解決をしていくことを「システム的問題解決」と呼んでいます。問題を生み出す要因を洗い出しながらも、その個々の要因というよりは、全体の構造に注目をすることで、問題を生み出す構造に自覚的になり、その構造を変えていくことを意図します。システム的問題解決においても、その構造を生み出すメンタルモデルまで言及することもありますが、多くの場合は構造そのものに注目することが多いように思います。

会議

メンタルモデルの次元を主として、変えていくことを「変革」と名付けました。メンタルモデルというのは、自分を含めた人々が当たり前のこととして捉えている常識や慣習のようなものが含まれますから、この次元で変化が起こることは、「変革」というレベルのものになることが多いと思います。


使命や主体的真理の次元を主として、変えていくことを「イノベーション」と名付けました。イノベーションというのは、「多くの人の常識や慣習を覆すような新規性とインパクトをもつ変化」と言えると思います。このように多くの人の常識や慣習を覆すような変化の原動力となるのは、使命や主体的真理レベルのものと思います。使命や主体的真理からくる内なるエネルギーがあるからこそ、多くの人の常識を自分の常識とせず、その考え方の違いからくる摩擦に負けることなく、イノベーションを起こすことができるのだと思います。


この4つの「意図的に変えていくこと」のうち、図の上側に近いものを「改善」と呼び、下側に近いものを「イノベーション」と呼ぶことができると思います。


このように捉えることで、改善とイノベーションは、「意図した変化を起こしていくこと」という観点では同じであり、「どのレベルまで深堀りして、変化を起こしていくか」が違うだけである、ということをご理解いただけたのではないでしょうか。

びっくり

どの領域の課題を扱うか

次に「領域」についての選択のお話をします。一言で領域といっても、関わる人の多さの軸、時間軸、課題の種類の軸があります。


関わる人の多さの軸というのは、自分だけの課題か、上司や部下との関係における課題か、自分が所属するチームにおける課題かという具合に、関わる人をどの範囲に設定するかという話です。自分→特定の周囲の人(上司や部下)→チーム→部署→事業部→会社→業界→国→世界、という具合に、関わる人の範囲を広げていくことも、逆に、狭めていくことも可能です。


時間軸というのは、どのくらいの時間の長さを想定した課題を設定するかという話です。例えば、10年という単位の時間を設定すると、明日締め切りの仕事についての課題をとりあげることはなくなるでしょう。逆に数ヶ月という時間設定で、業界に関わる課題を解決するというのは至難の業かもしれません。


課題の種類というのは、次の図にあるようなジブン・コト・ヒトに関する様々な矛盾の全体を俯瞰した上で、どの範囲に注目するかという話になります。

人

人の関わりの多さ、時間、課題の種類という話を個別にしましたが、これらの軸はお互いに独立しているのではなく、深く関わっていることが多いです。例えば、業界レベルの課題を扱うときには、時間軸は必然と長くならざるを得ないでしょう。


また、これらの領域を選択するという話と、一つ目にお話しした「深さ」を選択するという話も独立している話ではなく、お互いに深く関わっています。例えば、コト領域の課題を扱おうとしたときに、その課題を深堀していくと、ジブン領域のメンタルモデルの課題を扱う必要がでてくるという具合です。


改善・イノベーションプロセスの最初のプロセスにおいては、これらの相互の関わりについて詳細に分析しようとする必要はありません。ただ、このような関連についても直感的に捉えながら、改善・イノベーションをしていく範囲を決定していくことが必要となります。


望遠鏡

今回の記事では、改善・イノベーションのプロセスの全体像をお伝えするとともに、その最初のプロセスとなる「①目的・進め方の直感と決断」についてお話ししました。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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