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意識の意識化による、戦略ストーリー創出とはどのようなものか?

前回の記事『戦略ストーリーを協働創造するためには、どうすれば良いのか?』では、価値創造プロセスの最後のプロセスである「戦略の創発」について、意識の意識化の観点から掘り下げてお話ししました。戦略について意識の意識化の観点から紐解く内容としては、これまでの記事でお話してきたもので全体となります。ただ、扱う内容が多岐にわたっていますので、戦略の章の最後の記事として、これまでお話ししてきた内容の全体像を俯瞰しておきたいと思います。


章の全体としては、マクロ的な視点からミクロ的な視点にズームインをするような流れでお話ししてきましたが、この記事においては、その逆でミクロ的な視点から段々とマクロ的な視点にズームアウトする流れでお話ししたいと思います。


ミクロな視点:価値創造プロセスとSECIモデル

前回の記事『戦略ストーリーを協働創造するためには、どうすれば良いのか?』でお話しした内容は、戦略の創発をテーマとしていました。SECIモデルをご紹介して、戦略の創発においてはSECIモデルがうまく回るように、意識モードを使い分けていくことが大切であることをお伝えしました。

アル―の解釈

このSECIモデルは、価値創造プロセスの最後のプロセスである「⑥戦略創発」のための自分と周囲の協働プロセスという位置付けでご紹介をしましたが、実は価値創造プロセス全体①〜⑥をSECIモデルに紐づけて捉えることもできます。

プロセス例

前回の記事においては、⑥の戦略の創発においてSECIモデルを回すことが重要であるということをお伝えしていますが、①〜⑤のプロセスについてもSECIモデルの各象限を表していると捉えることができます。


①〜⑤については個人の中の意識プロセスであり、⑥は集団の(あるいは個人と集団の相互作用としての)意識プロセスと見做すことができますが、個人の意識プロセスがあってから集団の協働プロセスがそれに続くというイメージよりは、個人と集団のプロセスは同時並行に進んでいくというイメージに近いです。


これは、SECIモデルにおいて、個人と集団の相互作用によって知識創造されていくことを描写をしていることと整合します。


ここで改めて、価値創造プロセスについての全体像を確認しておきましょう。

価値創造

戦略ストーリーを構成する一つひとつの価値要素を創出するときには、個人と集団の相互作用をしていく上図のような価値創造プロセスを実践していくことが大切になります。


3+1意識モデルを補助線として、価値創造の各プロセスにおいて、どの意識を活性化するかを意識化していくと効果的です。例えば、①の戦略ストーリーの直感においては、直感意識(+メタ意識)を活性化させる。②のエスノグラフィーにおいては、身体意識を活性化させるという具合です。


メソ(ミクロとマクロの間)の視点:戦略ストーリーを創出するストーリー

これまで、ミクロな視点で、戦略ストーリーにおける価値要素を創出するための価値創造プロセスについてお話ししてきましたが、もう一段、マクロ方向に視点を移していきましょう。

ステップ

それは、戦略ストーリーを創出するストーリーとしての、「平野モデル」としてご紹介した5つのステップです。平野モデルの中の5つ目の「価値の創造」ステップを詳細化したものが、先ほどご説明した価値創造プロセスです。


逆に言えば、価値創出プロセスの前段階として、平野モデルにある①〜④のステップがあるということですね。ここは、非常に重要なポイントであると個人的に思っています。というのも、「個人と集団の相互作用によって価値創造をしていく」ということは、戦略ストーリー創出の一歩目ではないからです。


いきなり価値創造しようとしても、うまくいきません。そこには、自分自身の内なるエネルギーと、それに共感してくれる仲間がないからです。具材もないし、食べてくれるお客様もいないのに、美味しい料理をたくさん作ろうとしているようなものです。


ここは、どれほど強調しても強調しすぎることはできないくらいに大切です。戦略を考えるときに、市場環境や競合状況を調査して、戦略立案しようとする場面を見かけることがあります。これも、いきなり価値創造しようとする誤りの1つの典型と思います。


冒頭にお話しした価値創出プロセスは、この観点からすると「全体の一部」にしか過ぎません。


個人が自らの主体的真理に気づき、心を開くことからスタートし、その主体的真理を発信します。そこに惹かれて集まってきた人々のエコシステム的な集団から仲間と顧客が生まれます。そこで、互いの個性化のストーリーをお互い憑依するかのように共有し合うことで、戦略ストーリーが生まれてくる土壌が整っていきます。

多様性

このような土壌があってこそ、戦略ストーリー上の価値要素が、個人と集団の相互作用の中で、価値創出プロセスを経ながら生み出されていくのです。


このような土壌をつくる上で、もっとも大切なことは何でしょうか?


それは、「主体的真理とのつながり」から始めることでした。戦略ストーリーづくりの始まりは、個人の主体的真理です。主体的真理とは、「自分にとって生きがいとなる理想、自分固有の生きる目的」という意味で、私が最も大切にしているキーワードの一つです。

主体性真理

マクロの視点:3つの次元で捉える

これまで、ミクロな視点としての価値創出プロセス、メソ(ミクロとマクロの間)の視点としての平野モデルについてお話ししてきましたが、マクロな視点に移っていきましょう。

世界観

もっともマクロな視点でいえば、戦略ストーリーの創出は3つの次元の間の相互作用として捉えることができます。


一つは価値の次元であり、私たちが通常、戦略を語るときに想定している次元です。もう一つは、エコシステムの次元であり「ヒト全般」のつながりや働きかけを表します。3つ目の次元は、意識の次元です。これは、主体的真理や、世の中の意識の流れなど、まだ価値として具現化されていない、ヒトの意識を記述する次元です。


意識は現象の根源です。ヒトの意識がヒトの言動に影響を与え、ヒトの言動がコトを生み出します。その意味では、意識の次元がもっとも根源的な次元であると言えます。


このマクロな視点と平野モデルの関係は、平野モデルは、このマクロの3つの次元を行き来しながら価値創出をしていくステップを記述していると捉えることができます。

びっくり

経営戦略に関する書籍はたくさんありますが、その多くは、価値の次元の話をしていることが多いと思います。価値の次元の話ももちろん大切ですが、それに閉じてしまうと大切なもの、本質的なものを見落としてしまうリスクがあると思っています。


その典型的な例が、戦略においてはヒトよりもコトが優先されるという誤解や、戦略は市場分析から始まるという誤解ではないでしょうか。


一方で、価値の次元が大切ではないという話でもありません。価値の次元において、顧客価値と、競合との差別化を両立することは、継続的な利益創出、持続的な成長のために不可欠です。


価値の次元において、顧客価値と競合との差別化を両立するために、静止画的な戦略ではなく、動画的なストーリー戦略を描いていくという話がありました。


レベル

レベル1やレベル2だけの競争優位ではなく、レベル3やレベル4の動画的な戦略ストーリーとしての差別化ができると、顧客価値も高まり、競合との差別化も強固になります。


ただし、これらの価値創出や差別化は、あくまでも「結果としてそうなる」ということであり、この結果を追い求めているだけでは、それは実現しないということに注意する必要があります。


このような価値創出や差別化を実現するためにも、平野モデルで表現されているように主体的真理が始まり、周囲の共感を得ていくステップを経て、個人と集団が相互作用する価値創出プロセスを踏んでいくことが大切になります。


戦略ストーリー作りの全体像

これまでお話ししてきた内容を1枚の図にまとめると以下のようになります。これまで、本章でお話ししてきた内容をご理解いただいている皆様であれば、この図が表現している全体感・丸ごと感をお感じいただけるのではないでしょうか。

矛盾回避

この記事で、戦略をテーマとした本章は以上となります。次の記事からは、「改善・イノベーション」をテーマとして意識の意識化の観点からお話ししたいと思います。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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