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「面白い」発想を、顧客価値につなげるためにはどうすればよいのか?②

前回の記事『「面白い」発想を、顧客価値につなげるためにはどうすればよいのか?』では、価値創造プロセスの四つ目となる「連結化・ストーリー化」についてお話しました。今回は、引き続きこのテーマについて具体事例を用いて咀嚼していきたいと思います。


価値創造プロセスの全体像はこちらとなります。

価値創造

それはコンセプトにつながるか?

「連結化・ストーリー化」の事例として、以前の記事でもご紹介しましたが、5年ほど前の当社における大企業向け研修事業の戦略を取り上げたいと思います。


5年ほど前までは、対面型の社員育成サービスを前提としていましたが、育成成果にこだわるというコンセプトに立ち戻ると、対面型のサービスだけでは不十分と感じることがあり、新しい価値要素の創出を検討していました。


結果的には、2019年にetudesというeラーニングのプラットフォーム(LMS=Learning Management System)を事業譲受したことによって、その道が大きく開かれることになりました。対面型の育成サービスを提供するだけではなく、eラーニングあるいはLMSでのサービス提供を組み合わせることができるようになり、「点から線へ」サービス提供形態を変えることができました。


その当時の戦略ストーリーは以下のようなものでした。

コンセプト

自社開発のコンテンツをベースとして、お客様ごとにカスタマイズをして提供する体制を整えることで、お客様ごとのニーズに合致したカスタマイズされた内容を、大規模オペレーション(1日10クラス開催など)でも安定的に提供できることが顧客価値となっていました。


そのような状況の中、etudesというeラーニングのプラットフォームについて事業譲受できる可能性があるという情報が入ってきます。実は、私の中学・高校時代の友人のOくんが、大変ありがたいことに私に知らせてくれたことがきっかけでした。


このときに一番考えたことは、「eラーニングのプラットフォームは、当社の成果にこだわるというコンセプトにつながるか?」ということでした。

子ども

一般的には、事業譲受などの案件においては、その事業の収益性や財務状況などを考えます。その事業の価値とシナジーによる価値が、取得価格を上回れば良いという考え方です。


もちろん、このような検討も最終的には行いました。しかし、一番大切なこととして考えたことは「それはコンセプトにつながるか?」ということだったのです。


コンセプトにつながりがあれば、顧客価値にもつながりますし、競合優位性にも自然とつながります。一方で、コンセプトにつながりがなければ、顧客価値にも競合優位性にもつながりにくく、当社で事業運営する意義は薄いと言えます。


その検討の結果は、「YES」でした。


一番本質的な部分でいえば、「点のサービスから、線のサービスを提供することで、育成成果にさらにこだわることができる」ということです。それまでは、対面型の育成サービスしかありませんでしたので、提供するソリューションとして1日・2日の研修を提供することが殆どでした。


しかし、eラーニングのプラットフォームを自社でもつことによって、1日・2日の研修だけではなく、その前後においてeラーニングを提供することができます。eラーニングとして知識付与するだけではなく、研修内容を実践したレポートを提出してもらうことによって、学んだことと実践を結びつけるようなことも可能です。


このようにして考えた、新しい戦略ストーリーは次のようなものです。

新ストーリー

etudesの事業譲受によって、赤字で記載している部分が追加されて、戦略ストーリーの中に連結されています。


一方で、このような戦略ストーリーをデザインすることと、これが実際の顧客価値として提供されることには、ギャップがあります。上図に新しく加わった価値要素と既存の価値要素のつながりを強固にしたり、そのビジネスプロセスや業務フローを整備したり、お客様や社員に新しい価値についての理解と実感をもっていただくようにしたりと、やるべきことはたくさんあります。


その意味では、etudesの事業譲受を受けた時点では、新しい価値要素が単体として加わっただけであり、上記の戦略ストーリー全体からみれば、一合目に過ぎません。そこから、新しい価値を既存の価値と繋げて、馴染ませていく長いプロセスを踏んでいくことになりますが、当社も現時点でまだ四合目・五合目にいるという感覚を持っています。


顧客価値のかけ算とターゲット顧客の広がりを常に考える

ここまで、「連結化・ストーリー化」について、事例を用いながらお話ししてきましたが、このプロセスで重要になるもう一つのポイントについてお話します。


それは、新しい顧客価値が加わったときに、ターゲット顧客の広がりを考えてみるということです。

ターゲット

新しい顧客価値が加わると、ターゲットとする顧客が広がる可能性があります。これまでは、Aさんをペルソナとする顧客セグメントに対して、価値Xと価値Yという組み合わせでサービス提供をしていたとします。このときに、価値Zが加わると、Bさんをペルソナとする新しい顧客セグメントにサービス提供できる可能性があるということです。


新しい顧客セグメントを見つけることは、自社や自事業のコンセプトをさらに広めていく取り組みになりますし、ビジネス的にも新たな成長機会を得ることにつながります。

楽しむ

先ほどご紹介した当社の事例においても、新たなる顧客価値によって、新しい顧客セグメントを見出せるようになりました。それは、中堅中小企業です。


中堅中小企業にとっては、当社の大規模オペレーションができるという価値は、あまり重要ではありません。一方で、点から線の成果にこだわるサービスというのは、育成を真剣に考えている中堅中小企業にとっては価値と感じていただくことができます。


また、eラーニングのようなサービスは、集合研修のように20人が一斉に集まらなければいけないというような制約がないことも、中堅中小企業に受け入れられやすいポイントの一つになります。


これまでのターゲット:大企業
▼価値X:大型納品のオペレーションの安定性・拡張性
▼価値Y:文脈・状況に合致した育成ソリューション
▼(新しい価値Z):点から線の成果にこだわるサービス



新しいターゲット候補:中堅中小企業
▼(新しい価値Z):点から線の成果にこだわるサービス
▼価値Y:文脈・状況に合致した育成ソリューション
▼価値W:・・・



それでも、当社がすぐにでも中堅中小企業をターゲットできるかと言えば、そうではないと考えています。それは、上記の価値Zや価値Yは中堅中小企業にとっての価値になるということは、これまでのプロトタイピングから確信を得ているところになりますが、まだ足りない価値があるかもしれないからです。



「中堅中小企業に対して、育成成果にこだわるサービスを提供するために、必要な価値要素は何か?」


これが、次なる戦略ストーリー進化における「戦略ストーリーの直感(価値創出プロセス①)」を得るための問いになりますね。

びっくり

このように、新しい顧客価値が生み出されたときは、新しいターゲットの広がりはないかを考えると共に、そのターゲットに必要十分な価値として足りないものは何かを考え、新たなる戦略ストーリー進化につなげるイメージをもって頂ければと思います。


今回は、価値創造プロセスの四つ目となる「連結化・ストーリー化」について事例を交えながらお話ししました。次回は、価値創造プロセスの最後となる「戦略の創発」についてお話ししたいと思います。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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