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「面白い」発想を、顧客価値につなげるためにはどうすればよいのか?①

前回の記事『戦略における「面白い」要素をどのように着想すればよいのか?』では、価値創造プロセスの三つ目となる「戦略ストーリー要素の導出」についてお話ししました。今回は、四つ目のプロセスとなる「連結化・ストーリー化」についてお話しします。


価値創造プロセスの全体像はこちらとなります。

価値創造

新しい価値を、戦略ストーリー全体と連結する


④連結化・ストーリー化:
戦略ストーリー要素同士の価値の連鎖を連結し、発展ストーリーを描く


新しい価値が発想できたら、それまでの戦略ストーリー全体と連結させます。ここでは、コンセプトに対する一貫性の確認、交互効果のデザイン、顧客価値・競合優位の明確化を行います。


ストーリー

まずは、新しく発想した価値が、コンセプトにつながっているかどうかを改めて確認します。


それは、コンセプトを体現するものか?

「コンセプトにつながるような価値を考えているのだから、改めて確認するまでもないのでは?」

考える

という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。おっしゃる通り、コンセプトとのつながりが全くないということは殆どないと思います。それでも、新しく発想した価値そのもの、あるいは、その影響によって、コンセプトが弱まってしまったり、矛盾してしまったりすることはないかを確認することは大切と思います。


例えば、スターバックスでは2008年頃、それまでの成長に陰りが見えていました。その当時、売上拡大と効率化を重視するあまり、バリスタの教育が十分になされないままに店舗に配属されたり、サイドディッシュの品数を増やす中で、サイドディッシュの香りが店内のコーヒーの香りを毀損してしまう状況があったということを、ハワード・シュルツ氏が「スターバックス再生物語」の中で述べています。


このように、コンセプトにつながりながら取り組んでいるつもりであっても、売上や利益の最大化、株価の極大化など、コンセプトとは別のアジェンダが入り込んだときに、元々のコンセプトを弱めてしまったり、矛盾してしまったりすることがあります。


売上・利益・株価を高めていく取り組みが悪いという話ではありません。それも大切です。ただし、それによってコンセプトが弱まってしまうと、お客様やパートナーや社員など、身近なステークホルダーの心が離れていき、その結果として、中長期的な売上・利益・株価の成長を実現することはできなくなります。

シーソー

コンセプトとのつながりを確認したら、次は、新しい価値と既存の価値をなるべくつなげて、たくさんの交互効果をデザインします。


価値単体を生み出すのは一合目に過ぎない

交互効果とは、要素となる価値同士のつながりの強さ、組み合わせの数の多さのことを指します。新しい価値を生み出すだけではなく、既存の価値とのつながりを強くしたり、たくさんの組み合わせをデザインして、具現化することが大切になります。


このプロセスの重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。新しい価値を生み出すということは、山登りで例えれば、まだ一合目にいる段階です。この新しい価値を既存の価値と繋げて、馴染ませることによって、顧客価値として実現するまで、長い道のりがあることが通常です。

登山

「新しい価値を考えたら、既存の価値と組み合わせればいいだけでしょう?」


こんな疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。おっしゃる通り、概念的には組み合わせればいいだけなのですが、これを顧客が価値として実感するまで具現化していくには、いくつかクリアするべきハードルがあります。


一つ目のハードルは、顧客あるいは既存事業の社員の多くは、新しい価値をまだ知らないということです。社員は既存事業の仕事で忙しく、顧客はこれまでの商品・サービスを前提として、新しい価値があることなど知る由もない状況です。そのような状況の中で、新しい価値を社員や顧客に認知してもらい、そこに時間を割いてもらうということは簡単なことではありません。


二つ目のハードルは、ビジネスプロセスや業務フローが未整備であることです。既存の価値提供のためのビジネスプロセスは整っていますが、新しい価値を含めたビジネスプロセスや業務フローはまだ整っていない状況です。これが十分に整わない状況で、新しい価値を商品やサービスとしてローンチすると、フローが未整備であるが故に、一部の人の負荷が高まったり、トラブルやクレームが発生してしまうことにつながります。


このようなハードルをクリアしていくために、有効な手法となるのが、プロトタイピングによる具現化です。プロトタイピングとは、想定している価値の実現に向けて、完全なサービス・商品ではなく、(不完全な)試作品を創り、試行錯誤することで、価値の具現化(と既存価値との繋がりの実現)のスピードと確実性を高めることを指します。


プロトタイピングによって、新しい価値の具現化を試行錯誤するだけではなく、既存の価値との繋がりを検証したり、ビジネスプロセスや業務フローを作っていったり、関係する社員や顧客に、新しい価値を啓蒙していくことを一石三鳥・四鳥の発想でデザインします。

太った男の子

交互効果のデザインとプロトタイピングによる具現化を進めていくことができたら、最後のステップとして顧客価値・競合優位性・積み上がる資産の明確化を行います。


顧客価値や競合優位性は既に具現化しているという感覚

顧客価値とは、顧客がその会社やその商品を選ぶ理由として実感している価値のことを指します。スターバックスの例でいえば、コーヒーの美味しさや、店舗の居心地の良さが、顧客価値にあたります。一方で、スターバックスの価値の一つである「直営方式」というのは、顧客が実感する価値ではないので、顧客価値とは呼びません。


新しい価値が生み出されて、既存の価値との交互効果が実現した結果として、どんな新しい顧客価値が具現化したのか、あるいは、顧客価値にどのような変化があるのかを明確にします。


同様に、新しい価値が生み出されることによって、どのような競合優位性が生まれたのか、あるいは、変化したのかを明確にします。


大切なことは、顧客価値や競合優位性を、ここで考えて捻り出すというイメージではなく、すでに具現化しているものを言語化するというイメージであるということです。顧客価値や競合優位性は、これまでのプロセスによって自然と生み出されているのです。


顧客価値や競合優位性が自然と生み出されているというのはどういうことでしょうか?

はてな

これまで考えてきたことを思い返してみれば、顧客価値や競合優位性は、価値要素単体で生み出されるものというよりは、コンセプトと戦略ストーリーの全体によって実現されるものでしたね。


以前の記事で、コンセプトには「意識の偏在の解消」が含まれるという話をしました。新しい顧客価値は、意識の偏在の解消する価値として担保されます。スターバックスでいえば、第三の場所というコンセプトによって、第一の場所と第二の場所に囚われた生活に顧客価値が生み出されます。


競合優位性についても、「意識の偏在の解消」という要素から、ほぼ自動的に担保されます。競合のサービスや商品は、既存の意識構造において構想されたものが多いからです。その偏在を解消するという要素が含まれるコンセプトが具現化されれば、自然と競合との差別化ができている状態になります。スターバックスは、他のコーヒーショップとは違うということは皆さんも感じられているのではないでしょうか。

驚く

新しい価値が加わると、新たな資産が蓄積したり、資産の蓄積スピードが高まったりします。このような積み上がる資産を明確にしておくことも大切です。さらに次なる新しい価値を着想するときに、積み上がった資産があることで有利に働くからです。


ここまで、「連結化・ストーリー化」について、3つのポイント(一貫性の確認、交互効果のデザイン、顧客価値・競合優位・積み上がる資産の明確化)をお話ししてきました。次回は、この「連結化・ストーリー化」について、具体事例を用いながら咀嚼していきたいと思います。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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