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戦略ストーリー構築において、直感をどのように使えばよいのか?

前回の記事『戦略ストーリーはどのように進化するのか?』では、価値創造プロセスの全体像と、その始まりのプロセスとなる「直感活用」についてお話ししました。



①戦略ストーリーの直感:
ヴィジョンの実現に向けた戦略ストーリーに繋がるひらめきをメタ意識/直感意識で捉える


価値創造プロセスの全体像は、こちらです。


価値創造

戦略ストーリー構想には直感活用が大切

これらの6つのプロセスについてご理解いただくために、各プロセスの概要をご説明するだけではなく、具体事例をご紹介するようにしたいと思います。

クえっション

「戦略ストーリーの直感」の具体事例としては、5年ほど前の当社における大企業向け研修事業の戦略を取り上げたいと思います。当社は、従業員1,000人以上の大企業を中心にサービス提供をしています。大企業からのサービス要求水準は高いものの、その要求水準を満たすことができれば、企業あたりの取引金額は高く、リピート率も高いためビジネスとして成立しやすいという特徴があります。


5年ほど前までは、対面型の社員育成サービスを前提としていましたが、育成成果にこだわるというコンセプトに立ち戻ると、対面型のサービスだけでは不十分と感じることがあり、新しい価値要素の創出を検討していました。


結果的には、2019年にetudesというeラーニングのプラットフォーム(LMS=Learning Management System)を事業譲受したことによって、その道が大きく開かれることになりました。対面型の育成サービスを提供するだけではなく、eラーニングあるいはLMSでのサービス提供を組み合わせることができるようになり、「点から線へ」サービス提供形態を変えることができました。


このような新しい価値創出は、etudesの事業譲受があったからできたという面もありますが、実はその話が持ち上がる以前から、戦略ストーリー上の新しい価値要素として「情報システムを用いた継続的な学びの場」が必要であると考えていました。


価値創造プロセスの一つ目となる「戦略ストーリーの直感」についてご理解いただくために、この事例を用いながら具体的にお話ししていきたいと思います。

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直感を活用するためには適切な「問い」をもつことが大切

前回の記事『戦略ストーリーはどのように進化するのか?』で、直感活用をするためには「問い」をもつことが大切であるということをお伝えしました。

直感

当時は、次のような業界レベルの変化を感じていました。(俯瞰的に業界全体・社会全体の意識レベルの流れを捉える)



業界全体の意識レベルの流れ
・機械学習などの技術進化によって、個別最適化された教育の可能性に目が向き始めている(集合的・画一的な学びから、個別最適化された学びへ)
・人生100年時代と言われ、継続的な学び、学び直しの重要性が認識され始めている(一時的な学びから、継続的な学びへ)


当社の戦略ストーリーのコンセプトは「育成成果にこだわる」ということです。教育は、無形商材であるということと、その成果が見えにくいという特徴があります。教育の効果は短期的なものもあれば、中長期的なものもあります。行動や結果などの目に見えやすいものもあれば、態度の変化など目に見えにくいものもあります。


そのような特徴はあるものの、育成の成果をいくつかの観点から明らかにして、その成果にこだわることはできるというのが当社の立場であり、コンセプトです。業界全体としては、育成の成果を可視化することの重要性は認識されてはいますが、具体的な取り組みとしては数十年前からほとんど進化していない状況です。


ここに「意識の偏在」があると考えています。本当は、育成の成果をなるべく可視化して、その成果を高めて行くための試行錯誤をする方が良いと多くの人が思っているにも関わらず、「育成の成果は見えにくいものだ」という固定観念に囚われて、具体的な取り組みはほとんど進んでいません。


当社の「育成成果にこだわる」というコンセプトは、業界レベルの「意識の偏在」を解消することにつながっています。


業界レベルの流れを捉え、自社のコンセプトを明確化すれば、戦略ストーリー上の新しい価値を生み出すための、次のような問いを立てることができます。



5年前の当社の大手企業向け研修事業における、戦略ストーリー上の価値創出のための問い
▼「集合的・画一的な学びから、個別最適化された学び」「一時的な学びから、継続的な学び」という業界全体レベルの流れにおいて、
▼「育成成果にこだわる」というコンセプトの実現・進化のために、
▼ 自分たちはどうありたいか?(世の中は自分たちにどのようにさせたいか?)


このような問いを持ちながら過ごしていると、ふとした時に自分の中でアイディアが降りてくることあります。あるいは、社内会議の場面などで、「あ、そのアイディアいいね」という具合に、誰かの発言がヒントになることもあります。

男の子

「問い」が明確になることによって、自分たちの意識が自然と向きやすくなる、あるいは、いろいろな情報が自分たちのアンテナにひっかかりやすくなるということではないでしょうか。


当社の事例においては、このような問いを持つことによって、次のようなアイディアが生まれてきてました。



直感されたアイディア
・受講生が自己分析すると共に、育成成果を明確にするためのサーベイの開発
・研修後のアクションプランをフォローアップするための仕組み・システム
・自分の成長を継続的に振り返るための仕組み・システム
・eラーニングプラットフォームとeラーニング開発
・やればやるほど個別最適化される英語学習システム
・日々の振り返りをもとに、フィードバックが個別化されていく海外派遣研修


最後に「問い」とは何かについて、お話ししたいと思います。問いとは、「自分のありたい姿や主体的真理とつながりながら、意識をあてることで明らかにしたいこと」になります。ポイントは「自分のありたい姿や主体的真理とつながっている」ということであり、その意味で「論点」とは異なります。


論点とは、「答えをだすべきこと」であり、客観的に物事を捉える世界観を持ちます。価値創造において直感活用するためには、「論点」ではなく「問い」を持つことをお勧めします。

見つめる

「問い」として捉えると「自分達のコンセプトの実現のために、自分達はどうしたいか?」というニュアンスになります。一方で「論点」として捉えると「市場や競合を分析した結果をもとに、自分達はどうするべきか?」というニュアンスの客観的視点での「べき論」が導かれやすくなります。


前者の「問い」の方が直感意識が活性化しやすく、新しいアイディア、斬新なアイディアが導かれやすいです。後者の「論点」は思考意識が活性化しやすく、緻密な分析や検証をすることはできますが、アイディアの創出には不向きです。


今回の記事では、戦略ストーリー上の価値創造プロセスの第一歩である「直感の活用」について、具体例を用いながらお話しました。次回は、「エスノグラフィー」についてお話しします。

落合文四郎
落合文四郎
アルー株式会社代表取締役社長

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